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#2 羽目を外す、ゆるキャラ®【さるぼぼ@高山】
翌朝、ガサガサの唇を撫でながら「おはよう」と言えたのに
無茶をしなくなったな、と思う。
歳とともに体力が落ちてきたのもあるけれど、こだわりが強くなったからかもしれない。
たとえば、気になる異性と食事に行って、なんとなく帰りたくない雰囲気になって。
そのまま彼の部屋や、その他泊れる場所になだれ込んで。
下着も洋服も変えず、化粧も落とさず、朝を迎える。
・
・
・
なんてこと、今の私にできやしない。
伴侶がいるから。ということよりも、その前に。
わいてくるのがこのセリフ。
化粧をしたまま寝るなんて、肌に悪い。
でも、メイク落としひとつ取ったって、愛用の化粧品じゃなきゃ、もっと肌に悪い。
え?そなえつけのシャンプー?? これ、ノンシリコンじゃないでしょ。
いやいやいや、0時過ぎに寝るとか、翌日どうするの。屍で使い物にならないでしょ。日々の積み重ねが、well-beingをつくるのですもの。
翌朝の顔なんて、見せられたものじゃない。
幻滅されるリスクを負うくらいなら、おとなしく帰って美しいイメージのままでいたいの……。
いかん。
こんなんじゃ、人生は動かない。
クオリティはキープできるが、激震は起きない。
昔の私は、なだれ込んで無茶苦茶になって寝た翌朝、ガサガサの唇を気にしつつも「おはよう」を言えたのに。無茶できる女だったはずなのに。
くうう。
先日、取引先の新入社員さんとおしゃべりした。
私が愛知出身だというと、「僕、学生時代に“モーニングを食べるためだけ”のために、広島から愛知まで友達と行きました!」とニカニカ顔で教えてくれた。
「夜中に出て、朝ついて、モーニングして、観光もせず、そのまま帰ってきました!」
片道7時間くらいのドライブを、愛知のモーニングのためだけに。
だよね、楽しいんだよ、そういうのがさ!
学生時代は、「どれだけ馬鹿なことをやったか」がヒーローになる条件だ。
そして、当時一緒に馬鹿をやった友達は、一生モノの友達になったりするんだよ。わかる。わかるよ。
私だって、仕事の場面なら、まだ無茶してるぞ。
それなりに無茶したり、挑戦したりしてる……つもり。
くそう。
心の中で強がっているだけだから、誰も聞いていないにもかかわらず、言いきれない自分がなんだかカッコ悪い。
(取引先の年上女性と共通点をキッカケにおしゃべりできたぞ)顔の新人さんにフワッと笑顔を返しながら、(これからも、馬鹿スピリットを忘れないでね)と何から目線かわからない心の眼を、彼に向ける私であった。
山奥の宿で、「今日はこうなったのね」とほくそ笑む
そんな出来事もあってか、ある日「目的地を決めない旅」をしたくなった。
いつもなら、「この宿に泊まりたい」が旅の始まりで、吟味した宿を予約する。ただし道中は、ノープラン。
今回は、宿も決めないことにした。
「週末どうする?」と聞くパートナーを前に、「適当に車を走らせて、どこかへ泊まろう」と仁王立ちで宣言し、「お、おう」と戸惑う彼を尻目に旅支度だけして床についた。(ノンシリコンシャンプーはしっかり詰めた。笑)
昼前に家を出て、後先考えずに高速道路へ。
サービスエリアでランチをしながら、なんとなく方向性を決め、高速に戻る。どうも我々は、岐阜・長野方面に行くらしい。
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走りだすと方向性は定まっていくものだ。
なんとなく人生に似ている、と言えばこじつけっぽくもあるが、あながち外れてはいない。
走りださないと、自分がどこに向かいたいのかすら、わからない。
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サービスエリアにちょこちょこ泊まりながらお土産をひやかしているうちに、17:00近くになった。そろそろ宿を探さなくてはならない。
決まっていない、これから決められる、というのは案外悪くないが、吟味できないのがネックだ。
かなり狭くなった枠から選ぶ、になる。
プロフィールに「どうせなら、贅沢な旅がしたい」と書いているクセに、投稿2作目からいきなり、「贅沢宿」ではなく「やむを得ない宿」に泊まることになりそうだ。
案の定、一番泊りたかった岐阜県郡上市には、空いている宿がなかった。
豊かな自然と綺麗な水で有名な、岐阜県中央に位置する場所。
名物は『郡上おどり(通称:徹夜おどり)』。
7月中旬から9月上旬の約30夜にわたって続く、日本最長の盆踊りといわれる「郡上おどり」。毎年8月13~16日の4日間は、20時から明け方まで「徹夜で」躍ることから「徹夜おどり」の異名がある。
2022年は3年ぶりに開催するそうで、コロナ禍ということもあり20時から翌1時までとするそうだ。
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「どうせならいい宿思考」で探しているうちに、時刻は17:30。やばい。宿なしになってしまう。ということで、少しエリアを広げて、岐阜県高山市で検索してみた。
長野・富山に隣接する山間エリア。
豊かな自然と農作物、温泉に恵まれた観光地。
探してみると、あったあった、当日でも空いている宿が。さすが観光地。
ホテルはふんだんにある。その日の宿は、ココにした。
大型リゾートホテルなので、部屋数も多く空いていたのだろう。
見晴らしの良い北アルプスビュー16階のデラックスツイン(46平米)。
朝食付きで2万5400円。安い。
どちらかと言えばこじんまりした宿が好きな私は、普段泊まらないタイプだけれど、これがなかなか良かった。とくに、ファミリー層にはおススメ。
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下に置いた茶碗めがけてモリモリッとご飯が出てくる
パートナーも「いいねえ、なんだかこういうのも悪くないねえ」と喜んでいる。
そうだろう、そうだろう。
後先考えない喜びって、あるだろう。
朝の私たちは、夜にはここに泊まっているということは知りもしなかった。
たどり着いてみて、「今日はこうだったのね」と振り返るのだ。
まさに人生と同じだ。
歩いてみたから、できあがる。
小学生の頃描いていた、自分の大人の姿はまったく外れていた。
「想像すらできない」というのが真なり、だろう。
想像できない未来へ行った方が、何倍も面白い。
後先考えないこと、羽目を外すことは、いくつになっても必要だ。
唇の皮をガサガサにして迎える朝に似た、「やっちゃった感」は、人生を面
白い方へ拓いてくれる。
今回、宿が見つからなくて、野宿になったらもっと「やっちゃった」だったかな。そしたら、先述の新入社員さんに話そうかな。
「いや~、この前、無謀に旅に出たら、宿が見つからなくって……」
たぶん私は、ドヤ顔になるだろう。
ゆるキャラ®に、羽目外しを学ぶ
とまあ、あてどない旅をしたよ、っていう話なのだけれど、話は変わって今回何がインパクトあったかって、高山のお土産コーナーである。
中でも、高山名物「さるぼぼ」に度肝抜かれた。大袈裟じゃなくてね。
~さるぼぼとは~
飛騨高山など岐阜県飛騨地方で昔から作られる人形。飛騨弁では、赤ちゃんのことを「ぼぼ」と言い、「さるぼぼ」は「猿の赤ん坊」の意味。近年では、土産として飛騨地方の観光地で多く見られる。このさるぼぼの源流を辿ると、奈良時代に遣唐使が唐(中国)から伝えた「這子(ほうこ)」や「天児(あまがつ)」と呼ばれる形代が原型であると言われている。最初に当時の貴族の間で”産屋のお守り”として正絹で作られたものが流行し、その後家にある余り布などで作られた物が徐々に民間に広がっていく中で「安産」や「良縁」・「子供の成長」・「無病息災」などを願うお守りとされていった。しかし、時代の流れとともに新たな人形が作られたり外国からもたらされたことでこの人形文化が廃れていき、山間部で異文化の影響を受けにくい地域(飛騨地方など)に残ったと言われている。
標準的なさるぼぼのお姿はこんな感じなのだけど。
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お土産品にキャラクターとしても使われることが非常に多く。
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なんでしょう。
ここまでさるぼぼだらけだと、「さるぼぼに背負わせ過ぎだろう……」という気が若干わいてくるものの、ここまで徹底してさるぼぼ推しだと、「とにかく名物」という説得力を感じる。
そういう目でお土産コーナーを観ると、俄然楽しくなってきた。
しかも、見れば見るほど、さるぼぼを使ったお土産品のバリエーションが、なんというかこう、「羽目外し」なのだ。
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なんだろう、この潔いほどの、羽目外し。
もはや元型を留めていないもの多数。「さる」すら超えてますからね。
「いい。いいよ!!!!!さるぼぼ!!!!あなたを見習いたいよ!!」
と興奮しながらスマホでバシバシ写真を撮った私。
それにしても「さるぼぼ」、元祖ゆるキャラと言っていいのでは。……と思って調べると、「ゆるキャラ®」という言葉は、みうらじゅんさんが発案した言葉で、2004年に商標登録されているらしい。
※現在は、ゆるキャラグランプリ実行委員会と株式会社ゆるキャラが管理しているとか(wikipediaより)
ちなみに、みうらじゅんさんが「ゆるキャラ®」のインスピレーションを得たのは、広島の「ブンカッキー」からだという。
もはや元祖はどれだかわからないけれど、地域を潤す「さるぼぼ」、その変幻自在のお姿に人生のお手本を観た旅だった。