アルコール依存症者は自分はアルコール依存症だと認めない?

重度アルコール依存症の kiyopi です。

アルコール依存症者は自分がアルコール依存症である事を認めないと解説されることが多いです。
認めない人が多いのは事実です。
ですが、やはり人それぞれです。
診断前から自覚ある人もいます。
最初から認め、受け入れる人もいます。
徐々に認めていく人もいます。
頑として認めず、怒る人もいます。

大事なのは、どうして認めないのか?です。

答えは『認めてしまう事への何かしらの恐怖があるから』です。

アルコール依存症者はプライドが高いと言われますが、プライドが高いから認めないわけではありません。

以前記事にした承認欲求が強く他責思考の強いタイプの人は確かに最初からプライドが高い人が多いです。
裏を返せば、自分が傷付く事に対する恐怖が強いためにプライドが高くなる、自分が傷付く事への恐怖の内容が多い人ほどプライドは高くなります。
プライドは、自分が傷付かないための鎧とか防御壁のようなものです。
という事は、自分が傷付かないように守りたいものがあるために否定しているということです。
社会的立場であったり、人からの評価であったり、責められる恐怖であったり、はたまた自信喪失の恐怖であったり、人それぞれ違います。
大丈夫だという安心感がないから否定に走っているだけです。



あまり参考になりませんが、僕の実例です。
覚えている限りの過去のやり取りです。

入院の4年前、僕はマロリーワイス症候群で大量に血を吐き入院しました。
その頃から職場の同僚から飲酒量を心配され始めました。
ほどなくして、依存症じゃないか?と心配されるようになりましたが、僕は父も依存症ですから自分が依存に陥っている自覚はとっくに持っていましたから「多分ね。ごめんよ、迷惑かけて。仕事はちゃんとこなすから」「いえ、仕事は疑ってませんけど、もし休んだりいなくなられたら変わりできる人いないんで苦情とか変更あったら俺たちじゃ対応できないじゃないですか」
「そっか、またその辺は説明するよ。ただ、ちょっと一人にさせてほしい。何かない限りほっといてくれればいいからさ」といったやり取りが増えていきました。
その頃は、職場の雇い側の人事が変わり、仕事の内容も細かくうるさくなり、改良の始まった時期でした。
家に居れば、両親のお互いに対する愚痴が止まらず、部屋に逃げても部屋に来るので逃げ場がありません。
職場は職場で、周りの不満が膨れ上がり、不平・不満・愚痴・文句・悪口が会話のほとんどとなっており、聞き役やアドバイスが上手だと思われていた僕は自社・雇い会社・派遣の外国人のはけ口になり始めた時期でした。
その頃から、精神的苦痛が強くなり、鬱が自覚できるようになり、精神科に行ってみたいと上司に相談していましたが、もし入院になったら困ると突っぱねられていました。
家にも職場にも精神的に休まる場所がなく、トイレに逃げても携帯が鳴る、心はどんどん疲弊し飲酒量も爆増していきました。

そんな時期を過ごし、入院の2か月前辺りから職場の同僚から上司に僕の酒臭さの苦情が上がるようになりました。
事務所に呼び出されては説教され、「酒は止めます」と言わされる毎日。
とっくの昔から自覚はあります。
精神科に入院したいと何度も上伸してもいました。
ですが、その頃には自分がアルコール依存症である事を相手に認められなくなっていきました。
理由は責められる恐怖です。
「なんで飲むの?」「何度も入院させてほしいと言ってきた通り、精神的にもう限界で夜も寝られないんです」
「誰だって寝れない時はある、俺だって毎日寝不足だし。大体入院って何?お前が抜けた穴を誰が埋めんの?周りに掛かる迷惑考えたことある?大人として」「でも昨日今日寝れないわけじゃなくて、一週間合計で良くても2時間くらいで、身体もキツイし」
「そりゃ辛いだろうな!そんなの眠剤でどうにかしろよ!お前、自分の重要性分かってんの?お前の代わりはどこ探してもいねーの!これだけ認めてやってんのに!」「認めてくれてるのは嬉しいですよ。ありがとうございます。でも本当に限界なんです」
「もう、限界限界うるせーよ!限界なら手伝ってもらえよ!」「手伝ってもらえないんです。逃げられちゃうんで。今まではこっちも随分手伝ってきたつもりなんですけどね。」
「ふーん。自分は手伝ってきても手伝ってもらえないからって酒飲む?普通そんなのありえんだろ、ガキじゃねーんだし」「そうだけという訳じゃないんですけど」
「お前アル中じゃねえの?」「そうですね。間違いなく」
「アル中?」「そうです」
「アル中なんだ?恥ずかしくねーの?」「ありません」

「お前さあ、アル中だって認めろよ。イカレてんの分かってる?明日医者いってきてくださ~い」「そんな元気ありません」
「言い訳すんな!いいからアル中は精神科行って下さ~い。そうでなければもう仕事来ないで下さ~い、嫌なら一生酒飲まないって誓ってくださ~い」
「明日退職願持ってきます」
「いらねーよ!そんなもん!そういう事言ってんじゃねーよ!どーすれば責任取れるかって聞いてんの?」「もう飲みません」
「本当だな?どうやって証明すんの?」「明日から飲まずに出社します」
「信用できると思う?」「してもらうしかないです」
「どうやって?」「わかりません」
「だいたい何で止めれないの?大人だろ?責任感なさすぎじゃね?だいたいその年で結婚してないから責任感ないんじゃね?結婚して守るもの作ってみろよ?なあ!」「無理です」
「無理ですじゃねえよ!じゃあいつになったら良くなるんだよ?止めんだよ?せっかく智慧も貸してやってんのに!」「申し訳ありません。ごめんなさい」涙
「謝らんでいいし。そんな言葉信用しねーし。で?どうやって止めんの?」「もう飲みません」endless

こんな感じの毎日で、誓わされるか帰らされるかでした。
入院直前の2週間は臭いをかぎに来られては追い返されていました。

この結果、あーだこーだ言われることに対する恐怖が強くなって素直に認めるのが恐くなりました。
ただ、僕は最初から認めてしまえるタイプでした。
ですが、アルコール依存症での入院は怖かったです。
上司から何をどんな言い方で厭味ったらしく責めれるか分からない恐怖、止められる自信は微塵もない、方法も分からないのですから、入院したら一生働ける日が来るとは思えませんでした。
せめて通院で済ませたい気持ちに変わっていました。


認めない理由、入院を拒む理由、通院で済ませようとする理由・・・人それぞれです。
そんな心理の複雑さもあるのがアルコール依存症です。
その結果が起きたという事は、それを引き起こす原因があります。
アルコール依存症の解説は、行動の異常性だけがクローズアップされてしまっていますが、その行動に至るには原因があります。
それは本人以外の人からすれば取るに足らない理由かもしれません。
到底理解できない理由かもしれません。
ですが、それが理由であることは本人にとっては揺るぎない事実です。
否定や批判したら「あー言ったらこう言う」状態でどんどん壁を高くしてしまいます。
プライドという壁を高くしてしまいます。
そうなったら真実は闇に消えてしまいます。
これが依存症者がどんどん素直でなくなっていくメカニズムです。


今回は以上です。
参考にして頂けたら幸いです。

あなたが回復に向かえますように

ご家族様の傷や苦しみが癒えていきますように

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