Nas Dailyのナスさん、ユダヤ人団体の賞を授与される
私がずっとフォローして、楽しくコンテンツを楽しませてもらっている、Nas Daily(ナス・デイリー)のナスさんが、最近、反ユダヤ主義を始めとする憎悪に対して戦っている団体である、ADL(反中傷同盟)から、ダニエル・パール賞を授与されました。
ナス・デイリーについては、こちらの日本語記事に紹介が書かれています。
「イスラエル系アラブ人」という背景
イスラエル国籍を持ち、出自はパレスチナ人というユニーク、いや複雑な環境の中で生まれ育っています。イスラエルに住んでいる方々からすれば、あまりにも当たり前、身近な存在です。なぜなら、イスラエル国籍保持者の約二割もが、民族はアラブ人ですから。(参考記事:「独立宣言から見る「ユダヤ人国家」)
彼はナザレ近郊のアラブ人の町で生まれ育ちました。私も、ナザレを始め、イスラエルにあるいくつかのアラブ人の町に行ったことがあります。パレスチナ自治区の町とは、大きく雰囲気が異なります。人々がもっと心にゆとりがあるというか、生活水準も高いのでしょう。それから、ナザレはキリスト教徒の人口も多いです。それも手伝っているのかもしれません。
こんな私の、わずかな背景知識ですが、そんな思いを持ちながら、彼が時々語る、イスラエルとパレスチナの対立と苦悩を言い表す動画を見させていただきました。パレスチナ系イスラエル人であるナスさんが、とてつもない葛藤を抱きながら生きてきたことを説明する動画があります。彼の中には、いつもユダヤ人とパレスチナ人のどちらもがあります。
平和の道にある勇気と犠牲
以下は、ダニエル・パール賞を受け取った時の彼のスピーチです。
彼は、中東において平和共存を求めることは、勇気の要ることだと語っています。彼はすでに、それを経験しました。10月7日のハマス大虐殺が起こってすぐに、彼は虐殺を非難、イスラエルと共に立つことを動画にしました。実は彼は、ユダヤ人と共に会社を経営しているのです。
(日本語吹き替え)
この動画のために、100万ドル(約1億5千万円)の契約を破棄され、10人の大切な友人を失ったそうです。
中東指導者で暗殺された平和を希求した人々
このスピーチは、「中東の指導者で、歴史上、7人の人が暗殺されたけれども、そのうち6人は、平和のために動いていた人だった」というところからスタートします。
その6人のうちぱっと思い浮かんだのは、エジプトのサダト大統領とイスラエルのラビン首相です。サダト大統領は、ヨム・キプール戦争を勃発させた張本人ですが、戦後すぐにイスラエルに平和条約を誘い、成功。演説中にムスリム同胞団に暗殺されました。ラビン首相は、パレスチナの宿敵テロリスト・アラファト氏と苦渋の握手をしてオスロ合意を結びましたが、極右ユダヤ教徒の青年に暗殺。
ラビン首相の暗殺、最後の演説の映像
それから、ヨルダンの初代国王アブドラ一世は、神殿の丘訪問時に、パレスチナ人テロリストの差し金によって暗殺。それを目の前で見た孫のフセイン国王が、イスラエルとの平和条約をラビン首相と結びました。
平和への呼びかけが、文字通り死の危険を意味するのが中東ですね。バラク首相による、大幅に譲歩した二国家を蹴って、第二次インティファーダを勃発させたアラファト議長も、なぜそうしたか?というと、そこで手を結んだら周囲から殺されるという恐れがあったから、とも言われています。
ナスさんも、その危険を感じていることでしょう、賞を授けたのはユダヤ人団体で、10月7日を非難、イスラエルと共に立ったのですから。
アラブ人として受けた、広島と長崎の衝撃
終盤では、彼が日本を訪れた時、広島と長崎に行ったことを紹介しています。私もずっと前に見ましたが、アラブ人としての我が国の平和への希求は、相当の衝撃を受けたようです。アラブ世界では、Hiroshimaは反米主義と復讐の象徴として語られることが多いからだと思います。
長崎への訪問
広島への訪問
彼が学んだのは、「憎悪から平和は生まれない」ということです。そして日本は平和と繁栄を享受している。だから平和共存を希求するのは、短期的は孤独になるが、長期的には勝利するのだということを語っています。
勇気は恐れないことを意味しない、犠牲が伴うことを恐れながら行動に移すことだというのは、その通りだと思います。私は、キリスト者とユダヤ人の平和のために立場を表明してから、ある国家機関の報道局のSNSに、何度となく吊るし上げられています。(危険は全く感じていませんが、いい気分はしませんね。むしろ、その国へ嫌悪感を抱かないように、心の中を見張っています。)
それぞれの国にある戦い
話を戻しますと、ナスさんは、日本をすべて絶賛しているわけではありません。大半がとっても好意的なものですが、的確に、日本内部にある問題を説明している動画もあげています。
日本の自殺の森
(日本語吹き替え)
日本の平和とは、こうした犠牲も伴っているものなのだと感じます。イスラエルとパレスチナの間にある紛争の死者よりも、毎年、何の戦いもテロもしていないのに、はるかに超える死者を出しているのですから。日本は平和で賢く、中東は愚かだなどと高ぶることは全くできません!
全く、同じ戦いをしているのだと思います。サタンのすることは、殺すこと、滅ぼすことだと、主イエスは言われました。違った形での戦いがそれぞれの場であるのだと思います。
個人にある平和への戦い
そしてナスさんは、長年付き合っていた婚約者との破棄も経験し、相手といっしょに登場する動画も挙げています。
(日本語吹き替え)
イスラエルとパレスチナの平和共存は、口で言うのはたやすいですが、男女が一生、結ばれて暮らすことのように大きなチャレンジ、事業です。いや、男女の場合は、別れて距離を取ることができます。しかし、ユダヤ人とアラブ人は隣り合わせの土地、いや入り組んで同じところに住んでいますから、もっともっと、難しいことだと思います。
「エルサレムへの平和のために祈れ」という、命令が、人にできることではなく、神ご自身が成し遂げられることだということを思い出し、これからも祈っていきたいと思います。