舞台『CAN』イタリアツアーのレポート①~言葉の壁・通訳の仕事とは~
2024年3月11日に日本を出発し、3月25日に家に帰ってきました。
2023年8月新居浜市で上演した舞台『CAN』の映像をお送りし、ボローニャにあるラ・バラッカが主催する『VISIONI2024』という国際舞台芸術祭に参加させていただくことになりました。
ラ・バラッカ・テストーニ・ラガッツィ (testoniragazzi.it)
このフェスティバルは上演だけでなく、育成にも力を入れています。若手の演劇人を支援・経験・交流の場を与えてくれるのです。私は当時も若手とは言えない30代後半でしたが、2018年に演劇祭に若手演劇人枠みたいのがあり参加させていただきました。取り組み始めていた缶を使ったお芝居の試演をボローニャの幼稚園でさせていただきました。また滞在中に演劇祭で15演目くらいの作品を観劇しました。(観劇料、会場で参加者のみんなでいただけるブッフェ形式食事、さらにホテル代をフェスティバルが負担してくださったのです!すごいですよね)
今回は劇場で公演の機会をいただけるということで、行ってきました。
私は自慢ではありませんが、全くイタリア語は話せません。さらに英語は中学レベルです。そんなやつが海外で芝居なんかするなという声。ごもっともです。
そんな私がなぜ2018年と2024年生きて帰ることが出来たのか?それは通訳・コーディネートを務めてくださったSaya Namikawaさんのお陰です。自身もテアトロ・インプロヴィ―ゾというカンパニーでアーティストとしても活動をされています。
ミラノで開催される世界的に有名なデザインウィークでも日本企業の通訳とコーディネートを担当する売れっ子です。
通訳とは、訳すだけではないんです。
彼女のコーディネーターとして能力の高さといったらもう。
今回は私がイタリアに行かせていただきましたが、彼女はヨーロッパのすぐれた作品を日本の劇場で上演する橋渡しをしているのです。
作品を観る目、日本の劇場でどう観られるか。ツアーに適しているか。もちろん予算。さまざまな条件を考慮して作品を提案してくれます。(幸運なことに私と演劇の好みが合うというのがありがたいのですが)
数多くのコーディネートの実績から、イタリア・フランスなどのアーティストや制作からの信頼が半端ではありません。それは前回も今回も劇場のロビーでの様子を見ていたらわかります。みんなが彼女のもとにやってきます。そして「娘さんがおおきくなったか?」「今日は来ていないのか?」と声を掛けていました。
イタリア人の陽気な社交性だけではない関係性が結ばれていると私には見えました。
そんなSayaが、私に紹介したい人がいると言ってくれました。スイスの劇場の芸術監督ジョアンさん。Sayaのカンパニーが参加したフェスティバルのディレクターを務めているという方。その演劇祭が素晴らしかったというのです。
ジョアンさんはみんなお話したいみたいで、僕もSayaさんがいないとお話できないので、お話させていただく予定でしたが、各国のフェスティバルディレクターがジョアンさんの周りに!
僕も「これはすごいですね、今回はあきらめましょう。またメールででもやり取りさせていただけたらいいですねー。」とランチタイムだったので、ご飯を食べに行くことに。Sayaはそこにとどまり、後で合流することに。
私はのんびりイタリアンを堪能し、宿に帰ろうとしたら、Sayaが「ジョアンさんが今から話したいっていっている」と。電話があったそう。
それはありがたいということで、お会いすることに。
Sayaはこの日、他の移動日で遠方にいかなてくはならないのに、私が英語が話せないがために、残業してくださることに。
しかし、このジョアンさんとの時間が素晴らしく楽しかったのです。
彼の最新作の演劇作品の動画を見せてもらったり、芸術監督としてどんな思いで運営しているか?とても真摯に答えてくださいました。1時間くらいでしょうか。あっという間に時は過ぎ、ジョアンさんが次の予定があるということで解散。
Sayaさんのお陰で有意義な時間を過ごすことができました。
と、ジョアンはこれからフェスティバルで開催されるシンポジウムに参加するという。「English only!」(シンポジウムは英語だけやけどな!!)と言われ、それはそうだろうと笑。Sayaはここでお別れ。残業ありがとうございました。私も時差ボケがまだあり、頭も少しぼーっとしていましたので、宿に帰ろうと。洗濯機がないので、手洗いだから、早く洗わないってのもあって「チャオ!」と言って帰ろうとしたら、ジョアンが「Kiyo!Come on!」(キヨ!来いよ!どうにかなるぜ!)と。
Sayaは「行ったらどうですか?ははは、では私は!」と言って去っていきます。日本でこの感じで2次会誘われたら100%帰る私が、これがイタリアの力か、「いってみるか!?」と行くことに。
行ってみると、アシテジという国際児童青少年舞台芸術協会のシンポジウム。イタリア語がメインで、英語でも訳されています。スマホを出したのですが、距離が遠く、Google翻訳様も機能しない。ま、雰囲気だけでもと思っていたら、ジョアンが隣で翻訳機を使い、日本語を出してくれるのです。「めちゃくちゃかっこええやん、この人!」おかげで8割くらいの内容を理解することができました。本当にありがとう、ジョアンさん。
そのあとも一緒にお酒を飲ませていただいたのです。自分の働く劇場の話や自分の作品のコンセプトや上演時間についても聞かれました。お酒も強くない私はうろ覚えですが、とても楽しかったのです。すべてはジョアンさんのお陰。
と、宿に帰り次の朝、また劇場へ15分ほどの散歩道。ふと疑問が。なぜみんなに大人気の紳士なジョアンさんはこの私なんかにあんなにやさしくしてくれたのだろう?と。
これはすべてSayaさんのお陰なのです。
彼女の信頼度を完全にお借りして、この夢のような時間を過ごしているのです。この後もレポートを書かせていただきますが、どの現場も自分ひとりではなんにもなっていないのです。
通訳とは、言葉を翻訳する仕事ではない。ということを知るのです。
もちろん本人の伝えたい気持ち、知りたい気持ちが第一です。その思いを正確にくみ取り、なんなら、それだったら、この方がいい!とか、この人と結びつけるべきだ!と動いてくださる。最近通訳についていいニュースが日本で流れないのですが、イタリアの地にこんな日本人がいるのです。
情熱大陸さんかプロフェッショナルさん、取材してください。
この場をお借りして、Saya Namikawaさんにお礼を申し上げます。本当にありがとうございます。この機会を次のステップにつなげられるように善処します。