「キャラクター絵画」回顧録2
つづき。
(なんか長くなりそうな予感…)
今「キャラクター絵画」というジャンルが仮にあるとして、その背景を考えるには、2010年頃にSNSの整備をきっかけに起こった、オタク文化・イラスト・絵画・アートの領域横断的な活動を振り返る必要がある。
イラスト投稿コミュニティサイト「pixiv」の中で盛り上がったムーブメントは、やがてリアルの世界でも広がりを見せる。
いわゆる「オフ会」として、現実の場で展覧会が開催され、作家同士を結び付けていく。
「カオス*ラウンジ」は、アーティストの藤城嘘氏が主にpixivからピックアップした作家たちを集めてグループ展のような形として始まり、後に美術批評家の黒瀬陽平氏が加入、アートの文脈で編纂が行われていった。
初期のカオスラウンジは正にオフ会的な性質を持っていた。
GEISAI(村上隆によるアートコンペ)で披露された「つかさをつくろう!」は、アニメ「らきすた」のキャラクター「つかさ」を誰のものかわからない無数の落書き、手垢がついた残骸によってコラージュし、辛うじてそのキャラクターの記号性を保つギリギリの状態で、ひとつの作品として集団制作されたものである。
「つかさ」というキャラクターを媒介にして、インターネットを彷徨う人の情念を集め、具現化したものであり、まさに匿名性の渦の中で日々自動的に変化・増殖していくインターネット空間を象徴するかのような正しい作品であったと、いま改めて僕は思う。
時を同じくして関西・京都でも同様の「オフ会」的なグループ展が行われていた。
アートグループ「0000(オーフォー)」は京都を拠点として様々な展覧会を企画し、多くの若い作家たちの交流を生み出した。「2010円展」や、ペインターのob氏がキュレーションした「wassyoi」は、その先駆的な実践であったと記憶している。
注目したいのは、ここでもSNSがそのプラットフォームになっていたという点だ。
SNSでは、距離・年代・性別・学歴・美大生もそうでない人も、カテゴリーを超えて人が繋がることができる。
従来の美大的な美術の権威が人を選ぶのではく、名も無き作品を通じて人々が連帯していく、新たなコミュニティー形成の兆しを僕は感じていた。そして、そこに何か自分が救われるような気持ちが確かにあった。この時に知り合うことのできた人たちとは今も繋がっているし、これからも関係を大事にしていきたいと思う。
そして、この動向に、世界的な現代アーティストの村上隆氏がいち早く強い興味を持ち、彼らと積極的に関わっていたことも、書いておきたいと思う。
様々な形でプロジェクトが行われていたが、最終的には、この一連のムーブメントをアートの世界へ持っていく、アーティストを発掘し育て世界に発信する、というのが大目的であったのかなと思う。
村上氏はpixivと連携して展覧会を多数企画しており、pixivのアナログ絵描きユーザーを集めた展覧会「アナログ部屋」が開催されたり、反対にデジタル絵師をピックアップして彼らに油絵を制作させる、という実験的な試みも行われていた。村上氏自身もpixivにアカウントを開設し、制作の様子をアップするなどしていた。
その光景自体が僕は面白くて、無名オタクの「こなた」の落書きと、村上氏のドクロの煌びやかな絵画が並んでいる様子は、間違いなく多くのユーザー、無数の絵描きに「ART」のユニークさを直接的に脳内に伝播させていたと思う。
さてここまで状況説明をだらだらとしたけれど、細かい部分は正確ではなかったりするかもしれません。しかし当時、渦中にいた人たちには共感するところもあるんじゃないかな。
あれから約10年後の今、彼らがどうなったのか、僕らがどうなったのか、「キャラクター絵画」の未来がどうなったのか、、、、次回、もう少し書いてみたいと思います。
つづくッ!!