屈曲型腰痛の評価から治療〜脊柱編〜
こんにちは!こじろう(@reha_spine)です。
今回で5回目の投稿になります!
1回目
「腰痛の原因を突き止めるために必要な知識」
腰痛を引き起こす原因や腰痛に関する基礎知識について解説しています。
2回目
「屈曲型腰痛の基礎知識と疾患別特徴」
屈曲型腰痛についての基礎知識として体幹屈曲時の運動学や解剖学を基に疼痛の原因を解説しています。
3回目
「屈曲型腰痛に対する評価①〜腰椎骨盤リズムを中心に〜」
腰椎骨盤リズムとは何か?ということを各関節の運動学を含めて解説しました。そして正常、正常から逸脱した体幹屈曲時の腰椎骨盤リズムについて逸脱する要因も含めて説明しています。
4回目
「屈曲型腰痛に対する評価②〜腰椎骨盤リズムから紐解く各関節の評価法〜」
腰椎骨盤リズムの評価から得られた情報を基に、各関節へと評価を進め、より治療ターゲットを絞り込めるよう評価内容を①股関節②骨盤③脊柱の3つに分け評価方法を解説しました。
そして今回の5回目では今までの知識や評価を基に治療の紹介をしていきたいと思います。
今回の内容は以下のような方にオススメな内容になっています。
・屈曲型腰痛の基礎から治療まで学びたい方
・屈曲型腰痛の評価から治療の流れを知りたい方
第2回〜4回まで『屈曲型腰痛』についての知識や評価についてまとめているため、治療の前に少しだけ復習をしておきましょう!
▶︎屈曲型腰痛のおさらい(知識編)
『屈曲型腰痛』はスポーツ分野では自転車競技にて多い腰痛パターンです。その他、ボート競技や屈曲姿勢を維持したり、腰を落とした構え姿勢が不良であった場合などにも多く生じます。
屈曲型腰痛の主な要因として、
『腰椎への局所的なhyper mobility(過可動性)』
とお伝えしました。
そしてhyper mobilityになる要因としては、
①胸腰椎の屈曲制限
②股関節の屈曲制限
③骨盤前傾不足
などが挙げられます。
これら①〜③によって以下の組織に負荷がかかります。
・椎間板性
・筋・筋膜性
・仙腸関節
・椎間関節
これらの組織へ負荷が増大することで屈曲時に疼痛が誘発されます。
次に運動学についてですが、前屈時の腰椎と股関節の屈曲可動域において健常成人が最大に前屈した位置では股関節屈曲70°、腰椎屈曲40°可動するとお伝えしました。1)
更に屈曲時の腰椎骨盤リズムが遂行されるには
第5腰椎-仙椎間で75%
第4腰椎-第5腰椎間で20-25%
第1-第4腰椎間の各椎間において5-10%
の割合で可動性が求められます。2)
また、体幹屈曲動作時の屈曲初期50°までは腰椎の動きが大きいという特徴もあります。
50°以降では骨盤・股関節・胸椎の動きが主体となってきます。3)
ここまでが今までの記事での基礎的な内容のまとめです。
そして、次に評価に移ります。
▶︎屈曲型腰痛の復習(評価編)
体幹を前方へ倒していく際に疼痛や可動域制限がある場合、「股関節の屈曲制限」と「脊椎の屈曲制限」かをまず大きく見分けます。
屈曲制限の見分け方を下の写真の様に分類していきます。
脊柱・股関節の屈曲可動性低下に対する評価方法はそれぞれ「屈曲型腰痛に対する評価②」の記事にてたっぷりと紹介しています!
更に多裂筋、広背筋、大殿筋、ハムストリングスに対する評価を詳細に記載していますのでそちらもご参照ください😊
▶︎腰部多裂筋の評価方法
今回は「脊柱の屈曲可動性低下」と判断された場合の評価・治療について紹介していきたいと思います。
脊柱(胸腰椎)の屈曲制限として筋性由来で考えられる原因としては、
✔︎脊柱起立筋
✔︎多裂筋
✔︎広背筋
の短縮や過緊張状態などが考えられます。
写真の様に腰椎のフラット化がみられる場合には多裂筋の問題が考えられます。
多裂筋を疑った場合に更に評価を進めます。
腰椎の屈曲可動域制限(後弯制限)を確認するための評価を2つ紹介します。
多裂筋が過緊張状態な場合にはこのテストや可動域に制限が生じます。
①PLFテスト(前回の記事でも詳細に書いていますので簡潔に解説します。)
【開始姿勢】測定する下肢を上にした側臥位。両側股関節屈曲45°。
【方法】開始姿勢から下の写真の様に股関節をまっすぐに屈曲していきます。
【判定】胸に膝がつかない場合を陽性とし、「腰椎の屈曲(後弯)制限」となります。4)
②股関節の屈曲可動域
:教科書に載っているいわゆる股関節屈曲角度を測定します。多裂筋の拘縮があり腰椎の屈曲が不十分であったり、骨盤の可動性が低下しても可動域制限が生じます。写真では参考可動域の125°まで屈曲しておらず可動域制限が認められます。
教科書的な股関節屈曲可動域には「股関節+骨盤の動き(腰椎屈曲)」が含まれますので多裂筋を治療し効果が出た場合には股関節の屈曲可動域の改善がみられます。
※逆に多裂筋を治療できたにも関わらず股関節の屈曲可動域制限が残存する場合は股関節単独の制限が考えられますので股関節単独の屈曲可動域のテストや治療に移ることになります。
評価によって腰椎の屈曲制限が示唆された場合に、多裂筋の問題を疑います。そこで次に多裂筋の触診について説明します。
以前のLeeさんの投稿でも多裂筋の触診について説明がありますのでそちらもご参照ください。
特に今回では第4,5腰椎から起始する多裂筋を治療ターゲットとするため、そこの触診について紹介します。
なぜL4,5からの多裂筋なのかというと、L4,5から仙骨に付着する多裂筋の過緊張状態を和らげることで骨盤が動きやすくなるからです。それによって股関節屈曲時の腰椎屈曲可動性も改善されます。
▶︎腰部多裂筋の触診
腰部の多裂筋は中位腰椎レベルでは多裂筋と脊柱起立筋の割合は1:1です。しかし下位腰椎レベルでは多裂筋の割合が80%にもなります。下位腰椎では非常に発達している筋になります。
腰部多裂筋は以下の6つの走行形態をしています。5)
①各棘突起とその2つ下位の乳様突起ならびに椎間関節をつなぐ線維
②L1棘突起とPSISの周囲をつなぐ線維
③L2棘突起と上部背側仙腸靭帯をつなぐ線維
④L3棘突起と下部背側仙腸靭帯をつなぐ線維
⑤L4棘突起と仙骨下部背面の外側をつなぐ線維
⑥L5棘突起と正中仙骨綾をつなぐ線維
今回特に着目するのは⑤,⑥のL4,5棘突起に付着する多裂筋です。
冒頭でもお話した様に、屈曲時の腰椎骨盤リズムが遂行されるには
第5腰椎-仙椎間で75%
第4腰椎-第5腰椎間で20-25%
第1-第4腰椎間の各椎間において5-10%
の割合で可動性が求められます。
そのため、L4-5,L5-S1間の可動性は体幹屈曲時の腰椎の動きの大半を占めているため、L 4,5に付着する多裂筋が拘縮してしまうと腰椎の屈曲が不十分となり腰椎骨盤リズムの乱れが生じます。
更に他の腰椎部への負荷が増大したり、筋・筋膜、椎間関節、椎間板への負荷増大、隣接関節である仙腸関節へ過剰な可動性が求められることが疼痛発生の原因とも考えられます。
では実際にL4,5棘突起に付着する多裂筋の触診についてご紹介していきます。
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