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読書メモ「英語で日本語を考える」(片岡義男著)

海外のスタートアップや、日本在住の海外生まれの起業家や会社員の方々と仕事をする僕にとって、なんだかんだ言っても英語は一番重要なスキルです。だから、上手になればなるほど恩恵を得られるのは確かです。「通訳や翻訳家のように英語の専門性をベースに稼いでいる訳ではではないから」と、自分の英語の拙さを正当化しても何も始まりません。英語話者を前にして、セールスやプロジェクトマネジメント、問題解決や、人間関係構築といった状況で、自分が言いたいことをどのように英語で表現するか?がその後の展開に大きく影響する、と日々実感しています。
大学時代はフランス語を勉強し、英語を本格的に仕事で使うようになったのは、45歳の時なので、お察しの通り、僕の英語はたかが知れています。サバイバル英語で仕事をしていましたが矯正しようと思い、数年前に英検1級をとりました。でも取得した後、気づいたのは、英語の勉強の山の頂上ははるか上でその道は険しい、ということでした。だから、今でも、毎日、2、3時間は英語を勉強をしています。最近は、音読と独り言英語をつぶやく勉強を中心にしているのですが、そんな中、先日、私が今取り組んでいる英語の勉強に大変役立つ書籍を見つけました。

片岡義男氏の「英語で日本語を考える」(ちくま文庫)です。

高校生の頃、氏の小説をよく読みました。それから彼の訳によるビートルズ詩集も繰り返し読みました。そんな訳で、この文庫本を見つけた時には、迷わず購入してしまいました。

この著作は、簡単に言えば、普段日本人が使う表現を、英語を母語とする人たちがほぼ同じような意味で理解してもらうためには、その表現をどのように分解し、定義し直した上で、英語社会の常識や価値観を背景にして、英語に転換していく思考プロセスを丁寧に解説しています。

こんなふうに始まります。

「彼の言い分も聞いてみないといけないわね」

「言い分」という日本語が難しい。しかし、これまで何度か繰り返してきたとおり、この日本語的な言いかたを細かく砕き、意味の核心だけを指先につまむと、「言い分」とは「言い」でしかないことが、視覚的にですらすぐにわかる。

片岡義男「英語で日本語を考える」(ちくま文庫)

この文章の後にも、分析が続き、最後に、氏は、この日本語を以下のような英語に表現します。

He might have something to say about that.

同上

こんな事例が多数載っていて、純粋に読み物としても、十分楽しめました。
自分の言いたいことを、自分が覚えている英語例文を使って表現したり、検索して、近いことを表現している英文をみつけてそれを利用する、というのは基本動作だと思いますが、もう少し、自分が言いたいことの本当の意図にこだわって、それが正確につたわるための英語の表現を考えるというのは、かなり手間暇がかかり、一見無駄な作業のように見えますが、それを続けていくと、自分が話す英語がだんだんと変わっていくように思えます。そして、それが、新しい窓を開いてくれて、人生を豊かにしてくれるように思います。そんなことを改めて気付かされた著書でした。


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