No Rain, No Rainbow⑤
バレンタイン当日のランチは、
予約で満席。
ランチ後もクローズ時間ギリギリまで
カフェ利用の客で満席状態が続いた。
ショコラブリュレは早々に完売し、
ショーケースの中も、冷蔵庫の中も、
気持ち良いくらいスッカラカンになった。
2月に入ってから今日まで、
まるで毎日がフルマラソンのように
激走を続けてきた。
それこそ、
朝から晩まで店のキッチンに缶詰状態で、
スマホをチェックしたり、
余計なことを考える暇がないくらい、
多忙を極めていた。
閉店後、
静寂を取り戻した店内で蓮と二人、
キンキンに冷えたビール片手に、
過酷だったけど
最高に充実していた二週間を
振り返っていた。
「バレンタインの奇跡、だな。
まさかここまで盛り上がるとは
思ってなかった。」
「いやぁ〜、俺も想定外だった。
でも、試作品が出来上がった時点で
“これならいいけるかも”っていう予感は、
あったかもしれないな。」
「確かにスイーツメニューだけだったら、
ここまでは盛り上がらなかったと思う。
カカオニブを使ったバレンタインランチ、
あれが決め手だったよな。
まさかお前から
あんなアイデアが生まれるとは、
正直、意外だったよ。
この成功は、お前のおかげだな。
・・・で、その後、どうなの?
彼女から連絡は?」
「えっ?!」
相変わらず、蓮は鋭い。
何もないフリをしても、
必ず見抜かれてしまう。
それか、
単に俺が下手すぎるのか・・・
「何があったかは知らないけど、
その人との出逢いが、
“スパイス”になったんだろ?
・・・ま、結果はどうであれ、
すべては一期一会だ。
あれこれ後悔するより、
出逢えたことを素直に喜び、
出逢えたことにただ感謝する。
そうすりゃ、
道は自ずと開かれていく・・・と
俺は常に思ってる。」
そう言い終えた蓮のスマホが鳴り、
蓮は通話ボタンを押すと
キッチンに入っていった。
確かにあの日から
ずっと後悔ばかりだった。
タラレバばかりで、
彼女との出逢いを喜ぶことも、
感謝することもしていなかった。
でも、今は彼女との出逢いに
心の底から感謝してる。
蓮の言う通り、俺だけじゃ、
スイーツの枠を超えたメニューは
絶対に考えつかなかった。
だから、
“彼女に直接お礼が言えたら、
どんないいだろう”って、
つい思ってしまう。
・・・今頃、
彼女はどうしているだろう?
あの時、話をしていたように
普通の日と変わらない一日を
過ごしているんだろうか?
今頃、誰かと一緒に・・・??
そんなこと、
想像しただけで気分が悪くなるけど、
彼女なら、
むしろ、相手がいて当然だろう。
「虹空、ごめん、
急用が出来たから先に行く。」
何が起こっても冷静な蓮が
珍しく慌てた様子で戻ってきた。
「・・・大丈夫か?」
「うん、・・・多分な。」
そう言うと蓮はコートを掴み、
急いで店を出て行った。
蓮には、詩音さんという彼女がいる。
週末になると必ずと言っていいほど
店に来ていた詩音さんが、
2月に入ってから
一度も来ていないことを、
俺も、店のスタッフも、
実は気にしていた。
(もしかしたら詩音さんに、
何かあったのかもしれない。)
そう思うと胸の辺りが騒ついた。
けど、蓮のことだ。
何があっても大丈夫だろうし、
必要なことがあれば、
連絡してくるに違いない。
そう自分に言い聞かせながら、
飲み終えたビール瓶を片づけるために
立ち上がった。
その時、外で「バタンっ!」と
大きな音がした。
雨と風が吹き付ける音がしているから、
看板が倒れたのかもしれない。
外に出てみると、案の定、
うちの店の看板が倒れていた。
雨の中、看板を拾い上げて、
店の中に片付ける。
心地よい疲労感と
空きっ腹に入れたビールのせいか、
雨風が気持ち良く感じられて、
俺は店内の空気を入れ替えるために
店のドアを全開にした。
(天気予報では夜更けって言ってたのに。
・・・まるで、あの日と同じだな。)
結局、
また彼女のことを考えてしまう。
俺はこれから一生、雨が降るたびに、
彼女に思いを馳せるんだろうか?
彼女ともう一度会えたら・・・と、
あのファミレスに
何度か足を運んでみたけど、
彼女は現れるわけもなく、
時間だけが虚しく過ぎていった。
たった一度の出逢いで、
まさか自分がこんな風になるなんて
思ってもみなかった。
それだけ俺にとって彼女が
“特別な存在”ってことなんだろうか?
例えば、“運命の人”・・・とか?
ずっとバレンタインモードだったから、
頭の中が少しおかしくなっているのかもしない。
ただ・・・もし奇跡が起こって、
もう一度彼女に会うことができたら、
その時は絶対に彼女を離したくない。
(・・・って、なんだ、
このヤンデレ状態は?!)
相変わらず
未練と執着タラタラな自分に呆れながら、
店の外に出て、伸びをした。
(・・・ん?)
さっきは看板に気を取られていて
気付かなかったけど、
向かいのビルの前で
人がしゃがみ込んでいる。
ぼやけて、ハッキリと見えないけど、
服装から女性だってことだけは分かった。
酔っ払いか?
それとも、具合が悪いのか??
場合によっては、
介助が必要かもしれない・・・と、
目を凝らして女性を見つめる俺の心臓が
突然、跳ね上がった。
(・・・まさか、だよな・・・)
気付いた時には俺は雨の中、
しゃがみ込む女性に向かって
歩き出してた。
一歩、また一歩・・・と
女性に近づく毎に、
鼓動が激しさを増していく。
俺は女性のそばにしゃがみ込み、
少し震える手で
彼女の頭にそっと触れた。
「アメリ・・・さん?」
見間違いでも、
幻でも、
妄想でもなかった。
右手からは彼女の温もりが
しっかりと伝わってきて、
彼女は確かに俺の目の前にいた。
まるで雨の中、
道に迷った仔猫みたいな彼女が
濡れた瞳で俺を見上げながら
静かに言った。
「・・・会いたかった。
ずっと、会いたかった。」
彼女の言葉に引き出されるかのように、
俺も心の中に仕舞い続けてきた思いを
考える間もなく伝えていた。
「俺も・・・です。
俺もずっと、会いたかった。」
“一目惚れ”と同じで、“奇跡”もまた、
映画やドラマの世界でだけ
起こるもんだと思っていた。
でも、
この数週間、何度も、何度も、
頭の中で思い描き続けていた笑顔が
今、俺の目の前にある。
“出逢えたことを素直に喜び、
出逢えたことにただ感謝する”
蓮の言葉が蘇ってきて、
俺は彼女を抱き寄せながら、
奇跡的に再会できた喜びを
全身で感じ、全霊で感謝した。
***
「ほんっと、ごめんなさいっ!
書き間違えるなんて、マジ、ないわ・・・。」
IDを書き間違えるという
痛恨のミスを犯したことが発覚し、
俺は自分に絶望した。
この一ヶ月の俺の苦悩は、
すべて俺自身が招いたものだった。
・・・にも関わらず、
手を伸ばせばすぐ届くところに彼女はいて、
必死に忘れようとしてきた無邪気な笑顔が
今、俺に向けられている。
たまたま近くの店で友達と会ってて、
その帰りにたまたま向かいの
ワインバーを見つけて飲んでいた・・・
“たまたま”がここまで重なると、
もはや奇跡としか思えない。
・・・にしても、なぜ、彼女は雨の中、
しゃがみ込むほどに泣いていたのか?
今はまだ聞かない方がいいと思いつつ、
俺を見上げた瞬間の彼女の表情が
どうしても頭から離れず、
失礼を承知で切り出してみた。
「アメリさん、一つ、
聞いてもいいですか?」
「もちろん。」
「さっき、何かあったんですか?
・・・俺じゃ、
何の役にも立たないと思うけど、
もし良かったら聞かせてくれませんか?」
彼女は何をどう伝えようか
頭の中で言葉を丁寧に選びながら、
静かに答えてくれた。
「・・・私、
すぐ顔が真っ赤になるでしょ?
小さい頃から対人緊張と赤面症が酷くて、
それはきっと私が弱いからだって。
だから、強い自分になるために
色々頑張ってきたんだけど、
・・・強くなるどころか、
単に“正しさ”の鎧を纏い続けていただけで、
中身は相変わらず臆病で、
不器用で、弱いままだってことに
気付いちゃったんです。
自分がこれまで
何のために頑張ってきたのか・・・
なんか、
色々なことが分からなくちゃって。」
ファミレスで初めて彼女を見かけた時、
キレイな歩き方をする人だと思った。
その歩き方からは
内側から滲み出るような強さが、
その凛とした表情からは
揺るぎない自信が感じられた。
確かに俺と話しているとき、
顔も、耳も、真っ赤にしていたけど、
まさか彼女の口から
そんな話が出てくるなんてすごく意外で、
返す言葉がすぐに見つからなかった。
「・・・いい年して、
ほんっと、イタいですよね!」
彼女は笑いながらそう言ったけど、
その瞳の奥にある深い悲しみを
俺は見逃さなかった。
「全然、イタくないです。
俺はかえって、アメリさんが臆病で、
不器用で良かったって思います。」
「えっ?」
「そうじゃなかったら、
きっと他の誰かと
幸せになっちゃってたでしょ?
それに鎧を纏ってきたのは、
自分を守るためですよね?
それだけ自分のことを大切に思って、
大切にしてきたってことじゃないですか?」
両手で顔を覆いながら
肩を震わせ始めた彼女に、
“もう大丈夫だ”って、
“もう独りじゃない”って、
言いたかった。
でも、言葉がうまく出てこなくて、
彼女を抱き寄せることしかできなかった。
きっとこれまで流すことのできなかった涙が、
彼女にはいっぱいあるんだろう。
そんな彼女に今、必要なのは
言葉じゃないのかもしれない。
彼女が落ち着くまで、
俺は彼女の頭を優しく撫で続けた。
腕の中で強張っていた彼女の身体が
少しずつ緩んでいって、
肩の震えが落ち着いた頃、
彼女が静かに顔を上げた。
「・・・ありがとう。」
涙で潤んだ瞳、
ピンク色に染まった頬と唇・・・
彼女への愛おしさがこみ上げてきて、
気が付くと、
俺は彼女に顔を寄せていた。
(・・・ちょっと待てっ!これじゃ、
彼女の弱みにつけ込むみたいじゃないかっ!)
いきなり理性が働いて、
俺は彼女の唇まであと僅か…というところで、
あろうことか躊躇してしまった。
“気まずい”と思った次の瞬間、
彼女の唇が俺の唇に触れた。
彼女からそうしてくれたことが
すごく嬉しくて、
彼女の思いに応えるように、
柔らかい彼女の唇に
何度もキスをした。
顔を離した彼女は
耳まで真っ赤になっていて、
その様子があまりにも可愛くて、
俺は思わず、クスッと笑ってしまった。
「・・・ねぇ、知ってる?
アメリさんは嫌かもしれないけど、
俺は真っ赤になったアメリさんの顔も、
耳も、すごい好きだよ・・・」
これ以上ないくらい顔を真っ赤にした彼女は
それ以上俺に見つめられないようにするためか、
再び、唇を重ねてきた。
彼女から伝わってくる心臓の鼓動が
俺のと共振して、
不思議な一体感に包まれる。
「私も・・・好き。
こうくんの・・・真っ赤な耳・・・」
そう言いながら、
彼女は熱を帯びた俺の耳に
そっとキスをした。
恥じらいを見せたかと思うと、
こんな風に大胆に触れてくる・・・
そんな彼女の魅力に身も、心も、
完全に溺れそうになる。
俺はなんとか理性を保ちながら、
喉の奥から声を絞り出した。
「アメリさん・・・
そんなことされたら、俺、
もう止められなくなる・・・」
ここは店だし、ソファの上だし、
まだ会って二度目だし、
さすがに彼女も嫌だろう・・・と思った。
でも、彼女から発せられた次の一言で、
俺の理性も、思考も、
木っ端微塵に吹き飛んだ。
「じゃぁ・・・止めないで・・・」
バレンタインの夜、雨が降る中で、
奇跡的な再会を果たした俺と彼女は、
まるでチョコレートみたいに
互いを溶かし合いながら、
ソファの上で一つになった。
***
微かに漂ってくるコーヒーと、
甘い香りで目が覚めた。
自分の部屋とは異なる景色に
一瞬、戸惑ったけど、
今、自分がどこにいるのか、
すぐに思い出した。
狭いソファの上で眠っていたから、
全身が少し痛む。
でも、身も、心も満たされていて、
自然と笑みが溢れてしまう。
そんな私の脳裏に、
昨夜のことが恥ずかしいくらい
鮮明に蘇ってくる。
“それだけ自分のことを大切に思って、
大切にしてきたってことじゃないですか?”
彼がそう言ってくれた瞬間、
これまで無意識に纏い続けてきた鎧が、
音を立てて剥がれ落ちた気がした。
裸になった私の心を彼が優しく
包み込んでくれているような感覚に
涙が止まらず、
彼から発せられた“好き”という言葉が、
私の耳には
“感じるままに、求めていい”と
言ってくれているように聞こえた。
だから、
私は考えることを一切やめて、
感じるまま彼に触れ、
求めていった。
そんな自分を思い出すと
顔から火が出るくらい恥ずかしいけど、
長い間、私が私らしくあることを
妨げ続けていた“呪縛”みたいなものから
解き放たれたような清々しさが心地良くて、
私はソファの上で思い切り伸びをした。
「あ、起きた?おはよう!」
Tシャツ姿の彼が、
トレーを持って階段を上がってきた。
カジュアルな格好の彼がすごく新鮮で、
胸の奥の方がキュンとする。
「雨璃さん、コーヒーで良かった?」
マグから漂ってくるのコーヒーの香りで、
思考が少しずつクリアになってくる。
「うん。ありがとう。」
「寒くない?」
彼はそう聞きながら、
ブランケットを巻き付けただけの私を
後ろから抱き締めた。
一瞬、恥ずかしさがこみ上げてきたけど、
私を包み込む彼の体温が心地良くて、
彼の胸に背中を預けた。
「大丈夫。こうくんの身体、温かいから。」
「俺、人よりも少し体温高いみたい。
そういう雨璃さんも、温かいよ。
離れたくなくなる。」
12時間前の私は雨の中、独りだった。
これまでずっとそうだったように、
これからもずっとそれが続くと信じてた。
でも、私は今、男の人の腕の中にいて、
人の温もりが
こんなにも優しいものなんだってことを
心と身体の両方で感じてる。
世界はこんなにも簡単に、一瞬で、
変わってしまうものなのかと思うと、
この愛おしい瞬間を大切にしたいと思った。
「ねぇ、さっきからいい匂いしてるよ?」
「うん、朝ごはん♪お腹は、空いてる?」
「そう言われてみると・・・空いてるかも。」
「じゃ、ちょっと待ってて。」
彼は私の首筋に優しくキスをすると、
階下に降りていった。
母以外の誰かに
ご飯を作ってもらうことなんて
初めてのことだから、
私はまるで子供みたいに
ワクワクしながら彼を待った。
「1日遅れだけど、
バレンタインプレゼント♪」
そう言いながら
彼がテーブルに置いたプレートの上には、
綺麗な焼き色がついたホットケーキが
今にも倒れそうなくらい積み重ねられていて、
その周りにはベリー系のフルーツが
可愛く飾られていた。
私は思わず歓声を上げた。
「すごいっ!
”しろくまちゃんのほっとけーき”みたいっ!!」
「でしょ〜!
プレート、近づいて見てみて。」
彼に言われた通りテーブルに近づいて
プレートを覗き込んでみると、
チョコレートで文字が書かれていた。
「“No Rain, No Rainbow”??」
「雨璃さん、俺の名前、
漢字でどう書くか知ってる?」
私は首を横に振った。
「“虹”と“空”で、“こう”。」
「・・・虹?」
「そう。俺も雨璃さんの名前が漢字だって、
さっき知ってビックリした。
俺たち二人で、“雨と虹”。
それってさ、なんか・・・すごくない??」
“No Rain, No Rainbow”
雨が降らなければ、虹は出ない。
雨が降ることの多い人生で、
私にとって雨が“恵み”だったことなんて、
これまで一度もなかった・・・あの日、
彼と出逢うまでは。
昨夜だって雨が降っていなければ、
私はすぐに駅に向かっていたし、
彼と再会することもなかった。
そう考えたら、私と彼の出逢いは
単に偶然が重なっただけじゃなく、
彼が言うように何か“すごい”もの・・・
例えば、“天からの恵み”みたいなもの
なのかもしれない。
「俺ね、もし奇跡が起こって、
もう一度雨璃さんに会えたら、
その時は絶対に離したくないって、
ずっと思ってた。
・・・俺じゃ、ダメ?
俺もまぁまぁの臆病者で、
頭で考えてばかりな割に肝心な時に
痛恨のミスを犯すダメ男だけど、
もし突然雨が降り出した時は
いつだって傘を持って駆けつけるし、
必要な時は
俺がアメリさんの鎧になる。
それに、“虹”がいつも一緒なら、
辛いことがあっても
大丈夫って・・・思えない?」
この人が発する言葉は、
どうしていちいち私の心に
響くんだろう?
・・・それはきっと、
彼が心にある思いを飾ることなく、
感じるまま伝えて、
表現してくれるからだ。
彼にとって大切なのは
正しさよりも思いやりや優しさで、
そんな彼の心の温もりが
私に強さや勇気を与えてくれる。
だから、
私はもう強くなるために頑張る必要も、
正しさで自分を守る必要もなくて、
これからは“ありのままの私”で
ただ在ればいい…と、
心で強く感じた。
「・・・思えるよ、虹空くん。
あなたがいてくれれば大丈夫って、
心の底から思える。」
耳を真っ赤に染めながら
本当に嬉しそうに微笑む彼が
あまりに愛おしくて、尊くて、
私は彼の首に両腕を回して、
彼を思い切り抱き締めた。
彼も私を抱き締めながら、
ピンク色に染まった私の顔や、耳や、身体に、
わざと大きな音を立てながら
キスの雨を降らせていく。
彼の唇が私に触れるたびに、
これまで閉ざしてきた心も、身体も、
彼に向けてどんどん開きたくなってくる。
これまでの私なら、
そんな自分を抑え込み、
真っ赤になった身体を
ブランケットで覆い隠してた。
でも、今の私は
これまで誰にも見せたことのない私を
彼にもっと見て欲しがってる。
これまで誰にも触れさせたことのない私に
もっと触れて欲しがってる。
・・・そんな私を
彼ならきっと受け止めて、
包み込んでくれる。
「雨璃さん、
身体まで真っ赤になってる・・・」
熱を帯びた彼の視線を感じ、
私の内側でも彼を求める気持ちが
堰を切ったように溢れ始める。
(感じるままに、求めていい・・・)
そんな声が頭の中で響いて、
私は身体に巻き付いている
ブランケットを緩めながら、
彼の耳元で囁いた。
「もっと真っ赤に・・・してくれる?」
彼は返事をする代わりに、
熱した唇を重ねてきた。
そして私たちは、
雨上がりの朝日が差し込むソファの上で、
甘いホットケーキの香りと
コーヒーのアロマに包まれながら、
もう一度、愛し合った。
[END]
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