6/18 レーへ帰還
デスキット行きのバスは朝の6時半に出発するということで、5時半に起床。
昨晩のうちに、「朝が早いから朝食はいらない」と宿の主人に伝えていたのだが、6時に分厚いパラタが3枚もやってくる。
そんなに食欲があるわけではなかったが、せっかくいただいたので、頑張ってお腹に収める。
モソモソと3枚目を食べている時に、「もうすぐバスがやってくるから外で待ちなさい」と主人に声をかけられる。
残りのパラタをチャイで無理やり流し込んでから、荷物をまとめて門の外に出る。
5分くらいすると、朝靄の中から、来る時に乗っていたのと同じバスがやってくる。
小雨が降っていて、底冷えする朝だった。
昨日の時点では、本来の目的地だった温泉地のパナミックで途中下車しようかと考えていたが、これだけ寒かったら湯冷めして風邪をひいてしまいそうな気がしたので、断念することにした。
バスの運転手に、「最終的にレーに行きたいのだが、どこで乗り換えればいいか」と尋ねると、「テリス(Terith)で降りなさい」と言う。
昨日と同じ轍を踏まないように、運転手に「テリスに着いたら教えてください」とお願いしておいた。
ヌブラの民は、目元がくっきりしている人が多い。
顔の他のパーツは日本人に似ているので、余計に眼の大きさが際立つ。
1日1往復のバスは、人だけでなく、荷物も運ぶ。
村人から「〇〇村の〇〇さんにお願い」と託された小包を配達しながらバスは進む。
2時間後、乗り換え地点のテリスに到着。
各方面へと伸びる道路が合流するポイントだ。
運転手にどれくらいでバスが来るか尋ねると、「20分後くらいかな」とのこと。
小雨に打たれながら道端でバスを待っていると、そばで同じように佇んでいたおばあちゃんに話しかけられる。
現地語なので何を言っているのかはさっぱり分からなかったが、言葉の中に「レー」という単語が含まれているのに気づいたので、「そうそう、ぼくもレー行きのバスを待ってるの」と返した。
道路を指差しながら、「バスはあっちから来て、こっちの道路に行くんだよね」と確認すると、おばあちゃんは「その通り」と大きく頷いた。
結局バスが来たのは、1時間後のことだった。
車内はぎゅうぎゅうだった。
観光客と地元利用者が半々くらい。
ヌブラ渓谷とレーの間には、大きな峠がある。
道路は山肌に沿って蛇行しながら、次第に高度を上げていく。
車窓からの風景がだんだんと雪景色に変わっていく。
そして、峠のてっぺんに到着。
カルドゥン・ラ(Khardung La)。標高5,359m。
自動車が通行可能な道路としては世界最高地点である、というのがインド側の主張だが、その標高は本当に正しいのか、本当に世界一なのかは疑問が残るところらしい。
完全に雪国の風景で、何ならバスが通過する時、わずかに粉雪が舞っていた。
峠の最高地点にはスペースがあまりないにもかかわらず、たくさんの車が駐停車するものだから、渋滞が起こっていた。
世界で一番標高の高いところで起こる交通渋滞である。
峠を越えると、レーまではあと少し。
クネクネとした道をくだりながら、2,000m近い高度を徐々に下げていく。
ヌブラ渓谷を出発してから約5時間半後、バスはレー市内に到着した。
パンゴン・ツォやヌブラ渓谷に行った後だと、レーですらとてもごちゃごちゃした街のように感じる。
メインバザール近くでゲストハウスを探し、2日ぶりにWiFiを繋ぐ。
パンゴン・ツォを一緒に巡ったインド人たちと、WhatsAppでトークグループができていたので、「レーに帰ってきたよ」とメッセージを送ると、才媛コンビから「私たちもレーにいるから、一緒に夕食を食べよう」と返事が来た。
待ち合わせのため、日暮れ前にメインバザールに行く。
夕方のメインバザールは活気があった。
先週宿泊していたドミトリーはメインバザールから少し離れたところにあったため、日が暮れてからここを訪れるのは初めてだった。
電飾が美しく、まるでクリスマスのヨーロッパのようだ。
才媛コンビと合流し、一緒に夕食を食べながら、今後の予定について話し合う。
ぼくは明日の午後発のバスでカルギル(Kargil)という場所へ行き、そこで1泊した後にスリナガル(Srinagar)という街を訪れる予定だった。
そう説明すると、彼女たちは何と明日の午後発のバスで一気にスリナガルまで行く計画だと打ち明け、一緒に行かないかと誘ってくれた。
カルギルはあくまでも経由地のつもりだったので、もちろんぼくに異論はなかった。
詳細は後日のnote記事で書こうと思っているが、スリナガルは印パにおける国境紛争の最前線で、治安に不安があったため、旅程に組み込もうか最後まで悩んでいた。
しかし、地元カシミール出身の彼女たちが、一緒に行ってくれるのであれば安心である。
というわけで、明日は14時発のバスに乗って、400km以上先にあるスリナガルまで一気に移動する。
バスの到着は、その翌日の早朝らしい。
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