川の中の階段を下り、気合を入れて頭の先まで水に浸かる【Rishikesh→Uttarkashi】
2024/06/15
不快な夜だった。
夜中の3時頃に人の声で目が覚めた。
安宿の扉や壁は薄く、屋外の物音がそのままの音量で部屋に入ってくる。
どうやら、私の部屋のすぐ外で会話をしている人がいるようだった。
私の経験上、TPOに合わせて声のボリュームを調整するインド人は存在しない。
真夜中だというのに、外の人も普通の大きさの声で会話しているのだった。
不快な気持ちで寝返りをうった瞬間、私は人の話し声以上に不快なことが身に起こっているのに気がついた。
全身が汗でびっしょりなのだ。
寝る時につけていたはずの天井のファンが止まっている。
どうやら停電が発生しているらしい。
私は状況を理解した。
蒸し風呂状態の室内に耐えられなくなった他の宿泊客が、少しでも涼を求めて部屋の外に飛び出しているのだ。
結局、夜が明けるまで停電は復旧せず、再び眠りにつくことができなかった。
昨日着いたばかりなので何とも言えないが、どうも私とリシケシは相性が良くないようだ。
リシケシには2泊する予定だったが、予定を変更して、早朝のバスで次の目的地へ行くことにした。
明るくなるのを待って、ゲストハウスをチェックアウトする。
バスターミナルに行き、次の目的地であるウッタルカシ(Uttarkashi)行きのバスを探す。
チケットカウンターで金網に500ルピー札をねじこみながら、「ウッタルカシ、ワンチケット!」と他のインド人に負けないように叫ぶ。
何とかウッタルカシ行きのチケットを入手。
午前7時半に出発したバスは少しずつ標高を上げていく。
2車線分が確保された車道は狭くはないが、すぐそこまで山が迫っている。
S字カーブが連発する山道をバスは猛スピードで走る。
午後2時過ぎ、休憩時間も含めて7時間弱で到着。
7時間も山道を走った先にあることを考えると、意外と規模の大きい町だ。
標高は1,158m。
気温は30度くらいはありそうだが、山から吹き下ろす風が涼しくて心地よい。
ウッタルカシという町名は、「北の(Uttar)」と「バラナシ(Kashi)」が合わさってできているらしい。
バラナシ同様、ガンガー沿いに町が形成され、ヒンドゥーの信仰が深く根付いた場所だ。
そして、バラナシにあるのと同名の寺院が町の中心にある。
ヴィシュワナート寺院(Vishwanath Temple)。
バラナシの寺院と比べるととても小さいが、活気がある。
また、バラナシのヴィシュワナート寺院が異教徒に排他的なのに対して、こちらは外国人の私でも気軽に立ち入れるようなのどかさがある。
寺院に立ち寄った後、ガンガーのガートへ。
バラナシ、プラヤーグラージ、ハリドワール、リシケシとガンガー沿いの聖地を点々と訪れてきたが、体調を崩すのが怖くて全身の沐浴は行わなかった。
しかし、ここウッタルカシはガンガーの源流に近い町。
水は泥砂で濁っているが、水質はどこよりも良い。
いよいよ全身沐浴を行う時が来た。
シャツとズボンを脱いで、パンツ一丁で川に入る。
すんんんんんんごく冷たい。
川の中の階段を下り、気合を入れて頭の先まで水に浸かる。
冷たすぎて、1秒と耐えることができない。
すぐに川から上がってシャツを着る。
幸いにも気温は30度くらいはあるので、川から上がってしまえばもう寒くない。
なかなか良い経験ができたと思う。
ここのガートでもアールティが行われるらしく、川沿いのベンチに腰掛けて日が暮れるのを待つ。
敷物が敷かれたアールティ会場に、ばらばらと地元住民が集まる。
観光客は少なく、町内会の集まりのような呑気な雰囲気だ。
バラナシやリシケシなどの商業的なアールティとは異なり、地元住人が地元住人のために執り行っているようなのどかさを感じる。
そもそもアールティとは、このようなものであるはずだ。たぶん。
マントラを唱えたり、歌を歌ったり、「今日は〇〇さんが来てくれました、みんな拍手!」みたいなことを1時間ほどやって、最後に煙と火の儀式。
リシケシから逃げるようにしてやってきたウッタルカシ。
快適な気候と優しい人々、豊かな自然。
とてもリラックスできる場所だ。