霧の中の風景
[2012年1月25日の日記]
テオ・アンゲロプロスが交通事故で死んだというニュースを目にして言葉を失った。頭が真っ白になった。余りにも突然過ぎて、どうやってこの現実を受け入れればよいのかわからず途方に暮れた。
本当は今日、渋谷ユーロスペースのレイトショー「国境の町」を観に行こうと思っていたのだけど、とてもアンゲロプロス以外の作品を観る気にはなれず、早々と仕事を切り上げて帰宅し、所蔵DVDの中から「霧の中の風景」を鑑賞することにした。
久しぶりに観た「霧の中の風景」について思ったことは沢山ある。恐らくアンゲロプロスが生きていたなら、ああでもないこうでもない、といっぱしの映画批評めいたことを書いていたかもしれない。けれど今日ばかりは、とてもそんな気にはなれない。
僕が映画に入れ込むようになってから、リアルタイムで体験した映画作家の死はこれが初めてではない。ロメールやアントニオーニ、エドワード・ヤンの死もショックだった。まるで大切な友人を失ってしまったかのような喪失感を覚えた。
そしてまた一人、僕にとってとても大切な人の命が失われてしまった。アンゲロプロスは76歳という高齢ではあったものの、まだまだ精力的に活動している映画監督で、まだあと何本かは彼の新作が観れるだろうと当たり前のように思い込んでいた。
今、僕の頭の中では、この「霧の中の風景」のメインテーマの旋律が、まるで鎮魂歌のように流れ続けている。
ご冥福をお祈りいたします。
アンゲロプロスの映画はこの後もずっと、僕の人生に寄り添い続けている。
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