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◆モダン|安珍と清姫の物語

花の外には松ばかり
暮れそめて鐘や響くらん

鐘に恨みは数々ござる 初夜の鐘を撞く時は
諸行無常と響くなり


娘道成寺の長唄の一節です。
宝暦3年(1753年)の長唄。長唄の歴史の中でもとても古い一曲だとのこと。

僧侶に恋をした若き娘の悲しく恐ろしい情念の物語。


清姫という1人の娘が、ある日出会った安珍という僧侶に一目惚れするもその恋は裏切られ。怒った清姫は安珍を追ううちに大蛇となって、憎い僧侶の逃げ込んだ道成寺の鐘に巻きつき鐘ごと安珍を焼き殺してしまう。


 *



日本の様々な振付師が集まって作品をつくり選ばれたダンサーたちが踊っていくというステージがかつてあり。
その中のひとつにこの物語をモダン作品にとしたものがありました。


出演者は基本2人。
安珍と清姫。

清姫の日舞の短い一節で始まり、逃げる安珍を追うところからモダンの踊りになる。

モダン部分の振付は、ウェストサイドストーリーの四季日本初演時のアニタを演じられた立川真理さん。



 オリジナルモダン作品
  ザ・娘道成寺


この作品は清姫がストーリーを引っ張ります。


清姫役を踊ることとなった私は初めての日舞のお稽古に通い、メインとなるモダンでは立川さんから身体がギリギリといいそうな厳しいレッスンを浴びた、あれは最高に幸せな稽古期間でした。



着物を脱ぎ捨て蛇の化身となり安珍を追う。
悔しくて悲しくて、でも、心通いあったと信じた一瞬があったことも確かで。


ストリングスの美しいオリジナルの旋律のなかで、立川さんの振付は流れるようで伸びやかで。
足はどこまでも高くふり上げて、安珍と同じだけ飛び上がり、飛びついたと思えば広いステージの端から端までを2人で駆け抜けるように一気にステップですべっていく。どこまでも反りしなやかに回り全身をゴムのように使うようなハードな振付でしたが、怒りと怨念だけでない何か心通う瞬間がありながらも悲しいクライマックスへ向かう、心震える作品でした。


✴︎


和歌山県の道成寺に伝わる安珍清姫伝説。
私の母が若い頃三味線を習っていたそうでこの長唄のレコードを持っており、当時聴きながらイメージをふくらませたことを覚えています。

自分と同じ名前の清姫。
こんな縁もあるのかと取り組んだ踊りであり役でした。


とても残念なことは、この作品の映像も写真の一枚も残っていないこと。

記録はひとつも残っていないけれど
心に残っている大好きな作品の一つです。


✴︎踊っている時代のものは写真がほとんどなくて記憶のみ。なんだかつまんない。もし見つけたらここに追加しよう。

同じ頃の別のステージでの一枚。番組のお姉さん以前。
色々なステージで様々なジャンルのものを踊ることがあった。
これはジャズ。NYのはねっかえり娘みたいな役だった。




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