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“特別な場所“の紅葉を見に行きたい。そして…行く流れになった話。

本当は、涸沢の紅葉をいつかは見たい、と思っていた。

私を山や自然に誘って(いざなって)くれたのは上高地だと思っている。
そして、上高地の奥にある涸沢の絶景を見ることが最初の大きな目標となり、今まで2回訪れることができた。
(表紙は2021年9月中旬の涸沢の写真)

でも「一生に一度は見るべき」と言われる涸沢の紅葉は、まだ見ることができていない。

躊躇する一番の理由は「大人気」だから。
ヒュッテの予約も激戦、予約できても満室だろうし、テント場もいっぱいだからトイレも行列…そんな混雑がどうしても苦手。
もちろん登山道も混雑して、自分のペースよりも速い・遅い両方のことがあるだろうし、景色を味わいたくて足を止めることも難しいかもしれない。

こっそりフォローしている登山者のInstagramを見ているとき、涸沢より少し遅れてピークを迎える岳沢(だけさわ)の紅葉の写真が目に止まった。

岳沢とは…

ザ・上高地なこの写真(2022年5月)。
岳沢は、穂高の岩稜に囲まれた底部に白く筋のように見える部分


上高地の河童橋からもかすかに見える岳沢小屋は、重太郎新道から前穂高岳へ向かう強者たちが前泊する場所で、自分には縁がないと思っていたが…写真の中での鮮やかな紅葉の景色はとても美しかった。

改めて調べてみると、岳沢小屋までは標高差700mほどの「岳沢トレイル」。日帰りでも行けそうな場所とわかった。

…紅葉はどうも10月中旬あたりが良さそうだ、ということは頭にあっても、コロナ禍の影響もありその後2、3年はそのまま温めていた行程だった。


紅葉の時期に、なぜか山を楽しめないことが多かった。
夏山の目標、そしてその前から続く身体の準備。目標達成して一段落してしまうこともあるし、そのために先送りしていたことに取り掛かっている時期でもある。

そして、最近は…首都圏の低山でも熊さんがいらっしゃる、それがとっても気になる🐻
スズメバチは10月でもまだ元気🐝
低山にどっぷり浸かるのはまだ早いかな…
雪が降る前にもう一度だけ、標高が高い場所に行こう。
そうだ、岳沢にしよう。10月初旬の日程を確保した。

上高地に行く時は、夜行バスで早朝入りし、日中めいいっぱい行動して15時過ぎのバスで帰る、そのパターンである。
スケジュール帳に書いていたにもかかわらず、ぼーっとしていてお昼くらいに高速バスの予約サイトにアクセスしたところ、もう予約は埋まっていて、金曜夜の出発はできなくなった。
翌日、予約開始時刻は勤務先の最寄り駅前のカフェで迎えた。
土曜発の夜行バスを無事予約することができた(ものの、すでに半数以上の席が埋まっていた!)。

その後しばらくそのことは忘れていた。


命の時間が短くなっている叔母を訪問する日を義叔父と相談していた。
急に入院が決まったので、当初の予定から変更となり、岳沢へ行く前に病院へ行くことになってしまった。そのやりとりをしていた時に、「(叔母は)自称晴れ女だから、あやかりに来て」というメッセージをいただいた。

こんな時に遊びに行くなんて、という義叔父じゃなくてよかった…
義叔父はスキーの名手で(それで大怪我をして生死の境を彷徨ったこともあった)、叔母もがんが再発してから山歩きに元気をもらったという人。そんなアウトドアに親しむご一家だということを知っていたから、私も隠さずに「岳沢へ行く」と伝えることもできた。


紅葉が日差しに輝くのを見たい。
でもずっと雨の予報が続いていた。
雨の上高地も悪くない、でも岳沢からの眺望はないなあ、などと思っていたら…

前日確認した天気予報…

日曜午前だけが晴れ。

なんだこれ。
なんだこのスムーズすぎる流れ。。。
金曜夜行バスの予約が取れずに土曜の夜行になったことも含め。
行動時間だけ晴れ予報。
先日の立山縦走の時も思い出した。

これはもう、行く以外の選択肢がない。
どんなに身体が重くても、散策だけになってもいいから行こう。

そして叔母の病床で、こう伝えたい。

「一緒に行きませんか?気持ちの中ででも。。写真送りますね」

…そう想像しただけで、なんだか震えるものを感じた。