秋の上高地①早朝の岳沢湿原、そして明神池へ
一時期毎年のように訪れていた上高地だが、最近はなぜだか足が遠のいていた。今回は岳沢の紅葉🍁を初めて見に行こうと思いたち、約3年ぶりの訪問となった。
ほぼ眠れなかった夜行バス。いつものことだ。首も痛いし頭痛もする。
(ネックピローを持参するのを忘れてしまったせいだ)
朝5時20分。定刻通りに上高地バスターミナルに到着。本当にアルピコ交通はすごいな〜と思いつつぼーっとしたままバスを降りた時、まだ夜明け前で暗く小雨もパラつく中、たくさんの「山屋」でいっぱいの光景を目にした。
ベンチも満席で、皆いそいそと身支度をしている。おそらく今日中に、涸沢か、槍沢あたりまで行かれる方々だろう。
私はのんびりしたいのに、なんだかそんな忙しない周囲の空気に呑まれそうになる。
トイレでトレッキング用のタイツを履き、水場で水をいただいて、レインウェアは上だけ着用、下はゲイターを着けて…さあ、出発。
すぐに河童橋が見える場所へ出た。3年ぶりとはいえ、何度も見た景色。
わあ✨と心が浮き立つというより、とても懐かしい感覚。
またここに来れたな、という感じ。
梓川の清らかさも変わらずそこにあった。
今回は梓川のそばで温かい朝食を摂りたいと思っていて、お湯を沸かすためのジェットボイルと、(万が一着火しない時のために)水筒のお湯を用意していた。
(以前、11月初めの上高地の朝、手が悴むくらい寒くてジェットボイルが着火しなかったことがあった)
小雨ではあるものの、大したことはない。モンベルの“座布団“を敷いてベンチに座った。持参したお湯で朝食とする。
すぐに雨が上がった。
朝日が稜線を照らし始めた。
雨が上がったこともあり、ジェットボイルで改めてお湯を沸かし、次のカフェタイムのためにサーモボトルに補充しておく。
改めて河童橋の上に立つ。西穂高岳方面に朝日が当たっている。
岳沢は穂高連峰の陰になるので、日が差して紅葉が照らされるのは9時以降とのこと。まずは岳沢湿原から梓川右岸を歩き、明神池へ向かうことにする。
歩き始めてすぐに、森の中を流れる清らかな沢に目がいく。
水は流れているのに、その音はほとんどしない。そんな静寂?の中、多くのハイカーが熊鈴を鳴らしながらせかせかと歩いていく。
(熊情報は多いので、鈴は必要だと思う)
まもなく岳沢湿原が現れる。
草紅葉、そして先ほどまで雨模様だったところにちょうど朝日が当たって、キラキラと光っている。この時間ならではの幻想的な光景だ。
進行方向に目を向け、視線を上げると…
岩稜と、色づいた葉と、絶妙なコントラストが美しい…
以前11月にここを歩いた日は、すでに冠雪していて、真っ白な山に黄葉が映えて別の美しさがあった。
まもなく岳沢湿原の鑑賞スポットがある。
上高地に魅了されたのは、ここを偶然訪れたとき。今から20年以上も前のこと(妊婦だった)。
当時は大正池方面の方がメジャーで、河童橋から先のこの場所に向かう人は少なかった、と思う。自分の息遣いしか聞こえない静寂を存分に味わったのを覚えている。
もうすっかりメジャーになったこの場所には、予想通りたくさんの人が居て、その美しさに歓声を上げていた。
美しいものを見たときに、どんな反応をするかは人それぞれだが、私の場合は静かにじっくりと感覚を開いて、全身で味わいたいと思う。
そういう時に、言葉は出てこない。
感覚器が敏感になっているせいか、人の声はいつも以上にとても気になってしまう。
加えて、先を急ぐ人がかなり多い。
もっと味わいたいのに…という気持ちもありながら、そこにじっと佇むこともなんとなく居心地が悪く、先へ進むことにする。
おっとその前に…病床にいる叔母のLINEに写真を送る。
できるだけリアルタイムに送ろう、と思う。
しばらく歩いて、河原へ出た。
そのまま進むと明神橋から徳沢方面へ向かうが、左に折れて明神池を訪問する。
もちろん、拝観料を払って中に入る。
私の知っている、同じ清らかさがここにはあった。
ずっと座って眺めているのもいいなあ…と思いながらも、岳沢まで登る予定もあり、明神池を後にする。
この付近の河原は広々としている。個人的には好きな場所でもあるのだが、ここでのんびりする人はあまりいない。(よってベンチなどもない)
今回はあえてここでまったりする、と決めていた。
この時、自分の中に複雑な気持ちがあることに気づいていた。
なんだか心の中が落ち着かない。
私の好きな上高地、岳沢湿原、明神池へ再訪し、変わらぬ姿を見せてくれているというのに…
その美しさや感動が、ストレートに私の中に入ってこない。
今までなら感じられていた、「神様の存在」を感じられていない、そんな感覚。
見慣れてしまったのか?前回秋に明神池を訪問した時に、心が震えるほどの感動を覚えたこともあり、どこかに新たな感動を期待する気持ちがあったのかもしれない。
でも、それ以上に…周囲の人の言動が気になるんだ。
撮影の人が並んでいるのでずっとそこに佇んでいるわけにはいかず、場所を譲らなければならない。
私は静寂を味わいたいけれど、嬉しくてはしゃぎたい人もいる。もちろん、それぞれでOKだけど…
はしゃいで動きが大きくなって、ペットボトルを池の中にドボン!してしまったのを目にしてしまい…
もう、なんだか、いたたまれなくなった。。。
知る人ぞ知るみたいな存在の推しがメジャーになってしまって、当初の情熱が薄れてしまっている、そんな感じに近いのかな。。。
今の大正池に対して感じている気持ちに近いのかもしれない。
でも、それらはあくまで私の中のこと。
自然はその時々の姿でそこに在る。
今ここを楽しむんだ、と言い聞かせる。
そんなチグハグな気持ちを抱えながら、来た道を岳沢湿原まで戻ることにする。
人がかなり多くなってきた。。
さあ、ここからは初めての道、【岳沢トレイル】を歩いて行こう。
ここを歩く人はかなり少ないはず。熊鈴をポケットから出した。