くるりのこと|つらいことばかり、のその先で
30歳を過ぎた頃から、より一層くるりの音楽が心に沁みるようになった。
その理由はこの歌詞に表れていると思っていて
それなりにいろんなことがあった30年の、その先の人生で聴くくるりの音楽は、大変味わい深いのである。
昨年行ったライブのMCで「かっこいい曲もかっこよくない曲もやります」と岸田さんが言っていたが、かっこよくなさを惜しみなく見せてくれる、それがくるりだ。かっこいい。
彼らの音楽性や楽曲の素晴らしさについてはいちいち私みたいな者が言及するまでもないので、超・個人的なくるりの魅力を語ってみようと思う。
東から西に向かう時
人生には、くるりを聴きたくなるタイミングがある。
その1つが、新幹線で東京から西の方へ帰る車内だ。
なぜ唐突にこんな記事を書き始めたかというと、まさに今、東京出張を終えて新神戸まで帰る新幹線の車内にいるからである。
夜、下りの東海道新幹線にしかない空気ってあると思う。
私の心がそうなっているからそう感じるだけかもしれないが、ゆるく、ゆるやかに、ゆるめる時間の空気だ。
シートの角度、飲み物、スマホの充電、脱靴、スタンバイ完了!そしたら決まってSpotifyの『This isくるり』のプレイリストを流し、あとはしばらくぼんやりする。
東京に行くたび、どこかでずっと緊張していて、私はやっぱり西の人間なのだと思い知らされる。
身体はくたくたに疲れていて、枯渇した心は西の匂いを求めている。
そんな時、くるりが良い塩梅の安心と脱力をもたらしてくれる。
くるりの音楽には、どの曲にも「ゆるい西の成分」が配合されている気がするのだ。
ちなみにデビュー曲のタイトルは『東京』であるが、これは東京にいながらずっと西のことばっかり考えてる曲だ。
やたら旅に出る
くるりの歌詞には、やたらと旅にまつわる表現が登場する。
これらの旅は、観光地を順番に巡るような忙しない旅ではなくて、鈍行列車に乗ったり国道をひたすら走ってみたり、きっとそんな旅だ。
旅好き、または何かにつけて人生を旅で喩えたがる人間がむずむずするストライクゾーンを攻めてくる。
はんなり京都弁
くるりのライブでは、超骨太なバンドサウンドの後、何事もなかったかのように「どうもーくるりですー」というコテコテの京都弁のはんなりMCが始まる。
岸田さんや佐藤さんの扱う言語は、関西弁ではなく完全に「京都弁」なのである。
ドヴォルザークがチェコという土地と強く紐付いているように、くるりの音楽は京都という土地と、色濃く繋がっている。
野球鉄歓喜
岸田さんが野球と鉄道マニア、いわゆる「野球鉄」ということで、同種の趣味を持つ我々の心をくすぐるネタをぶち込んでくれる。
以前、くるりのオールナイトニッポンで、くるりの楽曲で打線を組んで広島東洋カープと対戦するという狂おしい企画が放送され、腹がちぎれるほど笑った。
世界の盗塁王・福本豊さんとくるりの対談もたまらなかった。
京急品川駅や、香川のことでん瓦町駅に行くと、くるりが手掛けた電車の発車音が聴けて幸せである。
さらに西へ
来月は、くるりのライブハウスツアー@岡山へ行く。
関西どころか、くるりを求めて、さらにさらに西へ。楽しみだ。
そんなことを考えてたら、新幹線は京都へ到着。
ただいま〜。