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PFPS(膝蓋大腿疼痛症候群)〜リハビリ〜

みなさん、閲覧ありがとうございます。
BORDERLESSのKiyoです。

これまで、PFPSの病態考察、トリートメントを学んだので、今回は、リハビリについて書いていきたいと思います。



1. リハビリのポイント

まずリハビリについてのポイントですが、年齢や症状の期間の長さは、疼痛緩和に関与していないことがわかっています。

さらに、PFPSのエクササイズ処方ですが、こちらは既に多くのエビデンスが出されていて、PFPSでは最も効果のあるアプローチと言って良いでしょう。
しかし、病態考察でも述べましたが、PFPSの予後は悪く、その原因としては、トリートメントプロトコルの粗悪性が挙げられています。
逆に予後が良いとされるプロトコルは解剖学を十分に理解し、それらを包括的にカバーしたものであるということも同時に報告されています。

Kiyo「クレピタスや下肢のマルアライメントが長期間治らないとしても、患者が痛みを訴えるかは別ということですね!また、膝の痛みの原因を突き止めてそれ沿ったアプローチがPFPSには大切だということです。」

最後にリハビリプロトコルの例を挙げますが、この記事ではいくつかのエクササイズに着目してみていきましょう。

動的外反を直す事に着目したエクササイズを中心にエクササイズが効果的とされ股関節外旋筋群、外転筋群、膝関節伸展筋群へのアプローチの有用性が多く報告されています。
また、各筋へのエクササイズは各関節の近位から始め、遠位へと行う方が、PFPへの効果が高く期待されるそうです。

まずは股関節外転筋群へのアプローチの有用性を見ていきましょう。



2.股関節外転筋群

最近、「膝の問題にはとりあえず中臀筋のトレーニング」みたいな風潮があるなと感じています。

アメリカでは、膝の痛みがあればまずヒップのトレーニングが処方されます。
さてこれはどうなのでしょうか?

その辺も踏まえてみていきましょう。

最新のシステマティックレビュー•メタアナリシスで股関節外転筋群のエクササイズとPFPSの関連性についての報告がされています。

まずは疼痛緩和との関連性です。
PFPSにおける股関節外転外旋筋群のトレーニングの有無で疼痛にどのような変化を及ぼすかみたところ、大きな差は見られないということです。
股関節外転外旋筋群のトレーニングによる疼痛制御の可能性はあるとしているものの、強いエビデンスは示唆されていません。

さらに、膝伸展筋群単独と、それに股関節外転外旋筋群を加えたトレーニングを比べた場合も、同様の結果となっています。

Kiyo「今のところPFPSに対して股関節外転外旋筋群のトレーニングの有用性があまり見られませんね?」

次に下肢の機能について見ていきましょう。
膝伸展筋群単独と、それに股関節外転外旋筋群を加えたトレーニングを比べた場合、下肢の機能改善に相関は見られない(95% CI, −0.01 - 0.92; p = 0.05)ものの、その中から1つの論文を除いてみると、強い相関性(95% CI, 0.25 – 1.14; p = 0.002)が見られることから、この論文では、膝伸展筋群と股関節外転外旋筋群両方のトレーニングを行うことを推奨しています。

下肢の機能評価として、Lower Extremity Functional Scaleが使われることが多いので、参考にしてみてください。

Lower Extremity Functional Scale
(英語版;https://www.rehab.msu.edu/_files/_docs/LEFS.pdf
(日本語版;https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/41/7/41_KJ00009747004/_pdf/-char/ja


しかし、病態考察でもわかった通り、PFP患者では健常者と比べ、最大で67%の股関節伸展筋力の低下、33%の股関節外転筋力の低下、33〜36%の股関節外旋筋力低下が報告されていることから考えると、膝伸展筋に追加して股関節外転外旋筋群を加えたトレーニングの可能性はまだあると思います。

Kiyo「股関節外転・外旋・伸展筋力低下は下肢のマルアライメントを引き起こすことは既にわかっているので、マルアライメントがみられるPFPなら、やる方が良さそうですね。マルアライメントが見られない、股関節筋力の左右差も見られないのであれば股関節の筋力トレーニングに固執するのは少しナンセンスかもしれません。」



3. 大腿四頭筋

病態考察でお話しましたが、PFPでは健測と比較し患側の大腿四頭筋の20〜30%の筋力低下が報告されていますが、機能不全と膝蓋骨の変位への関連性については未だ不透明で、PFPにどのような影響があるかはまだ明確になっていません。
少し分かりにくいですが、膝蓋骨外側偏位と大腿四頭筋の関連性は見られるが、PFPと直接的に関わっているかはまだ不明ということですね。

Kiyo「現代科学ではまだ計測しきれないという可能性もありますね。個人的意見ですが、大腿四頭筋とPFPに何かしらの関連性はあると思います笑」

しかし、外側広筋と内側広筋斜頭(VMO)のアンバランスな筋力発揮において関連性が確認されています。
特に内側広筋斜頭の筋力低下は顕著に挙げられます。

そこで、VMOに注目してみましょう。
VMOのトレーニング+エクササイズ(VMO)と膝蓋骨のテーピング+エクササイズ(Tap)を比較した論文があります。
エクササイズとして、短波ジアテルミー、パテラセッティング、SLR、股関節外転筋トレーニング、ハイシッティングクァッド、ミニスクワット、フォワード・サイドステップアップ、ストレッチ(下腿三頭筋、ハムストリング、腸脛靭帯)が両グループ共通でされています。
1週目、10回3セット、週5日から始めて、2週目20回、3週目以降30回まで負荷を挙げていき、6週目までトレーニングをしています。

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VMOグループでは股関節内転を維持したまま、40°〜60°の間でのウォールスクワットが追加されています。

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Tapグループでは、マコネルテープが使用されました。
こちらも週5日テープが使用され、6週間処方されました。

結果としては、どちらのグループでも疼痛緩和、機能改善が見られました。

また、膝蓋大腿関節のストレスを軽減させるために、膝関節の屈曲角度が非荷重は45°〜90°、荷重下では0°〜45°から始めることが推奨されています。

まず、非荷重でのVMOのトレーニングから始め、大腿四頭筋のトレーニング→荷重下で膝関節屈曲45°以内のトレーニング→全可動域のトレーニングへの移行が膝蓋大腿関節に負荷のかからないビルドアップになっています。


また少し面白い実験では、PFPSにおける大腿四頭筋のトレーニングと後ろ向きのウォーキング(RTW)効果を比較しているものがあります。
大腿四頭筋のトレーニングとして大腿四頭筋のアイソメトリックトレーニング(10秒間)とSLRを10回3セット、RTWは2km/h*でトレッドミル上を15分間後ろ向きで歩くというプロトコルになっています。
どちらも週5日、4週間実施されています。
どちらのグループでも有意な疼痛緩和、機能改善が見られましたが、RTWの方が結果が良く、RTWが推奨されています。

*週によってパラメータを変えています。



4. 体幹筋群

面白いアプローチをしている論文があります。
PFPSへのコアトレーニングによって疼痛緩和、機能改善、バランス機能改善を促すというものです。
使われたエクササイズは以下に書いてあります。

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体幹のエクササイズを加えたプロトコルの方が、疼痛緩和、機能改善、バランス機能において有意に向上しました。
コアトレーニングでコーディネーション能力が向上したことによる結果としています。

Kiyo「これは、こんな変わったのもありますよという面白い切り口の論文ですが、コーディネーション能力改善による下肢アライメントの改善というのも一理ありますね。」


エクササイズ例
ウォームアップ;動的ストレッチ、バイク
トレーニング;大腿四頭筋、VMO、股関節外転外旋筋、SLR、レッグプレス、スクワット、ステップアップ

頻度
毎日、2〜4セット、10回、6週間



5. 薬物療法

初期の消炎鎮痛剤(NSAIDs)への利用はPFPSで疼痛緩和に有効だとされていますが、追加研究が必要としています。

Kiyo「リハビリやアクティビティに疼痛の影響がある場合に、NSAIDsを併用して疼痛のコントロールをしながら、リハビリのアウトカムを高めるといった使い方が良いと思います!」



6. テーピング

PFPSへのマコネルテープは膝蓋骨のマルトラッキング、外側への傾きの修正を行う事から有効性が高いことが報告され、スポーツ中の邪魔にならないので、活用されています。
しかし、最近のシステマティックレビュー•メタアナリシスにおいては中程度のエビデンスしか報告されていません。
マコネルテープの使用によって、6週間での疼痛緩和や機能改善が認められています。
しかし、6週間以降の利用では有用性は見られないません。

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Kiyo「テーピングはあくまで補助的で期間限定的なアプローチということを念頭に置いた方がいいでしょう。」



7. 膝蓋骨サポーター

テーピングのデメリットとして時間経過と共に、効果が薄くなっていくことが挙げられる事から、サポーターの利用が代替療法として挙げられます。
膝蓋骨のサポーターは外側から内側方向へのプレッシャーが加わるため、物理的に膝蓋骨のマルトラッキングを修正することができるとされています。

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写真のサポーター、Patella Proを使用し、6〜12週間でのPFPSが改善されましたが、1年経過後の有用性は見られていません。

Kiyo 「サポーターの使用は短期間の効果はあるけど、長期的な効果は期待できないから、PFPの改善がみられる間に、原因を突き止めて治さなきゃいけませんね!」



8. 足部矯正具

後足部の外反や扁平足は脛骨の内旋につながり、脚のアライメントの破綻に繋がる事が知られているため、インソールや矯正具の使用がPFPを改善することが期待されています。
また、最近のシステマティックレビュー•メタアナリシスによって、矯正具の利用による、膝関節の回旋が修繕され、短期間、PFPの症状改善が報告されています。
また、疼痛緩和へのエビデンスも高く、下肢のキネマティック・筋活動の向上も報告されました。
しかし、他の研究では、これらの結果は見られず、PFP患者にインソールや矯正具の適性があるかどうかを追加研究する必要があるとしています。

Kiyo「テーピング同様、こちらも補助的なアプローチとして捉えた方がいいですね!」



9. まとめ

PFPSにおけるリハビリでは、VMOや大腿四頭筋の筋力回復を行うことが重要になってくるかと思います。
また、下肢アライメント破綻が起きているPFPSや、患側の股関節外転外旋筋群の筋力低下が見られる場合は、アプローチが必要になってきます。

病態考察でも触れましたが、下肢・足部のアライメント、筋力の左右差、筋のタイトネスを包括的に評価し、対象筋・関節にアプローチしてください。

次回はPFPSの予防に注目した記事を書くので、そちらもよろしくお願いします!


また僕個人でもブログをやっているのでぜひお試しください。
こっちでは僕の経験や英語学習を主に書いてます。


https://note.com/kk_eigtbb


Dive into EBM, Beyond the Limits.

BORDERLESS - Kiyo-



参考文献

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Motealleh, A., Mohamadi, M., Moghadam, M. B., Nejati, N., Arjang, N., & Ebrahimi, N. (2019). Effects of Core Neuromuscular Training on Pain, Balance, and Functional Performance in Women With Patellofemoral Pain Syndrome: A Clinical Trial. Journal of Chiropractic Medicine. doi:10.1016/j.jcm.2018.07.006.

Petersen, W., Rembitzki, I., & Liebau, C. (2017). Patellofemoral pain in athletes. Open Access Journal of Sports Medicine, Volume 8, 143-154. doi:10.2147/oajsm.s133406.

Rogan, S., Haehni, M., Luijckx, E., Dealer, J., Reuteler, S., & Taeymans, J. (2019). Effects of Hip Abductor Muscles Exercises on Pain and Function in Patients With Patellofemoral Pain. Journal of Strength and Conditioning Research, 33(11), 3174-3187. doi:10.1519/jsc.0000000000002658.

中丸宏二, 相澤純也, 小山貴之, 新田 收 (2014). 下肢疾患外来患者における日本語版 Lower Extremity Functional Scale の信頼性・妥当性・反応性の検討. 理学療法学, 第 41 巻第 7 号 414 - 420 頁.

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