デザインリサーチ?ゲームUIデザインに活かせる?
はじめに
こんにちは、CyberAgentのゲーム事業部(SGE)に所属し、現在はApplibotでUIデザイナーをしている清田です。
UIUX Lab Advent Calendar 2024、13日目の記事を担当させていただくことになりました。
今回はデザインリサーチについてお話ししようと思います。
といってもデザインリサーチという言葉に聞きなれない方もいるかもしれません。私もその1人で、数年前に本屋さんで『デザインリサーチの教科書』という本を見つけてその存在を知りました。
本記事では、デザインリサーチについて『デザインリサーチの教科書』を参考に概要を紹介し、ゲームUIデザイナーとしてどういうところで実践できそうかも併せてご紹介させていただこうと思います。
以降、デザインリサーチに関する内容は全て『デザインリサーチの教科書』から引用させていただきます。
デザインリサーチとは
まず、デザインリサーチとは何かをご紹介します。
この言葉が指す範囲は広く、さまざまな意味で使われることが多いとのことですが、本書では「人々や社会などプロダクトが置かれている状況を理解するためのリサーチ」と記載されています。
下記にどういうことかを詳しく説明させていただきます。
社会の変化が早く今までのやり方だけではその変化に追いつけないこの時代にプロダクトを作っていかなければならない。
そのために、人々がどのような生活をしているか、人々がどのようなニーズや願望を持っているか、社会がどのような課題を抱えているか、多岐にわたる情報を収集し、その後も、プロジェクトは正しい方向へ向かっているか、ユーザーに受け入れられるだろうか、などさまざまな事項についてリサーチを重ねていく必要がある。
デザインリサーチは、人々を理解し、人々からインスピレーションを得ることを大切にし上記リサーチを進めていく。
人々は非常に複雑で一人として同じ人は存在しない。このような多種多様な人々を幅広くリサーチの対象とすることで思いもよらぬインサイトが発見でき、新しいイノベーションやプロダクトが生まれる源泉となる。
とのことです。
リサーチと聞くとなんとなく、定量的なデータを収集して統計分析をして、、、みたいなイメージがありましたが、デザインリサーチではより多種多様な人々にフォーカスして定性的にアプローチしていくのか、、、どうやるんだ、、、と思っちゃいました。
本書では、マーケティングリサーチとデザインリサーチの違いが細かく説明されていたり、実際に開発の各フェーズでデザインリサーチャーがどう動いていくのかわかりやすく綴られていたりととても面白い内容だったので興味が湧いた方はぜひ読んでみてください。
ここから、実際にゲームUIデザイナーとしてどう活かせるのかについてお話ししていこうと思います。
ゲームUIデザインで活かせる?
多種多様なプレイヤーを理解する
デザインリサーチでは、多種多様な人々によりフォーカスするという内容がありましたが、この精神はゲーム開発でもとても重要で真っ先に活かせるポイントかなと思いました。
多種多様な人々を運用中のゲームに当てはめてみると、月額の課金額、1日あたりのプレイ時間、プレイスタイル(ガチ勢かエンジョイ勢か)、プレイモチベ(いい成績を出したい、ビジュアルがいいアイテムを集めたい)などが挙げられると思います。
UIデザイナーとしてこれらの解像度を高めることで、課題を解決するクリティカルな設計が期待できます。どうしても自分のプレイ感覚がデフォルトで備わってしまいますがゲームの楽しみ方は十人十色。いかに視野広く多様なユーザー感覚を身につけるかが設計をする上で重要です。
ということで多種多様な人々を理解するためにどうしたらいいのか。
『デザインリサーチの教科書』の内容をもとに、私が意識してやっていることをご紹介させていただきます。
方法1. インタビューしまくる
聞かないことには何もわかりません。積極的に色んなプレイヤーにインタビューしましょう。ここで無闇矢鱈に聞くのではなく上質なインタビューになるよう下記3点を意識したいです。
インタビュー相手がどの層のプレイヤーか把握する
雑談ベースで話す
自分のゲーム理解を深める
まず、インタビュー相手がどんな層のプレイヤーなのかを把握する必要があります。毎月どのくらい課金をしているのか、無課金なのか、一日どのくらいプレイをしているのか、いつ始めたのかなどなど。どのような層に位置するのか整理した上でインタビューすることで、得られた情報から納得度の高い仮説を立てることができます。
インタビューというお固めな言葉を用いましたが、できるだけ雑談のような雰囲気にすることも重要です。例えば、上位層に位置するプレイヤーにインタビューをする際、上位層であるというプライドで回答に見栄を張りたくな
る気持ちがもしかしたらあるかもしれません。
👤「この前の高難易度のステージどこまで進みましたか?」
😎「もちろん最後までクリアしましたよっエッヘン」
(実は最後のステージやってなかったんだよなぁ、、、)
と、回答されては適切に情報を得ることができません。
できるだけプレイヤー同士の雑談というテイを意識するとバイアスや誇張のない素直な回答を得られる可能性が高くなります。
👤「あのステージめっちゃ難しくなかったですか!僕、この装備育ててなかったから全然攻略できなかったんですよね、、、〇〇さんどうでした??」
😎「実は俺もそうなんだよ!わかる〜〜」
インタビューする側にも知識がないと深く掘ることができません。質問したけどその回答から発展して次の質問を出せなくなっては得られる情報量に限界が来てしまいます。
👤「このアイテム貴重ですけどどれくらい温存してます?」
😎「最近はそこまで温存してないかな〜」
👤「そうなんですね!、、、、、、、、、、、今日天気いいッスネ」
なかなかきつい無の時間生まれちゃいますね。
こうならないために自分の知識を蓄えた状態でインタビューをすると、会話ベースでより深い情報を得ることができます。
👤「このアイテム貴重ですけどどれくらい温存してます?」
😎「最近はそこまで温存してないかな〜」
👤「そうなんですね!でもこのアイテムってこのクエストから平均でも5個くらいしかゲットできないじゃないですか?けど装備強化するのに結構な頻度で要求されるから使用する場面ちゃんと考えないとすぐ枯渇しません?」
😎「ついこの間まではそうだったんだけど、新しいクエストが出たおかげで供給量増えたし、アイテム交換でもゲットできるようになったから最近はそこまで考えなくても良くなった気がする」
方法2. 実際にプレイを観察させてもらう
話すだけでなく、実際にプレイ画面を見せてもらうことも重要です。そこには予想だにしていなかった画面がある可能性が高いです。
例えば、「この装備見せてください」と聞いた時に、装備一覧の並び順が自分とは全然違うことがあります。
自分はレアリティ順で並べるのが当たり前だと思っていても、
その人は入手順に並べているかもしれません
装備を間違えて売らないためのロック機能を駆使して、頻繁に使う装備だけにロックをかけてそれを優先して表示されているかもしれません
アイテムの断捨離を定期的に行って洗練されたアイテムボックスになってるかもしれません
実際に特定の装備を見つけてもらうときでも、
ソート機能を使って探すかもしれません
よく使う装備だから装備一覧のどこに何があるか大体覚えているという人もいるかもしれません
そもそも装備一覧から探さずパーティ編成に行って装備された状態のものから探すかもしれません
その日初めてのログイン時のルーティンを見せてもらうのも面白い気づきがあったりします。
デイリーミッションを最短でコンプリートするフローが確立されているかもしれません
あ、意外とここのミッションは無視するんだ〜というのもあるかもしれません
その日の運試しで無料ガチャを朝イチで回すという面白い人がいるかもしれません
同じゲームで同じ機能使ってるんだから大体一緒でしょとはいきませんし、話すだけでは意外とこういう情報は得られません。積極的にゲーム画面を見せてもらいましょう。
また、驚きポイントがあった場合は「なんでこうしてるの?」と毎回聞きましょう。
「一見わかりづらいけどこういうシチュエーションの時はこの並び順が一番検索しやすいんだよ〜」という新たな気づきを与えてくれます。
そこから、もしかしたらこういう機能に需要があるんじゃないか!?と思いもよらぬアイデアにつながるかもしれません。まさにデザインリサーチの、人々を理解し、人々からインスピレーションを得ることを体現していると言えます。
方法3. SNSをチェックする
世の声を集めたいならSNSが一番です。XやYouTubeなどでプレイヤーの率直な意見を収集しましょう。
ここでも無闇矢鱈に収集するのではなく、設計時の狙いがちゃんとワークしていたかを意識して収集するといいです。
情報設計時では、使いやすくなるように、良いゲーム体験になるように、プレイを想像しながら設計しています。
この画面にこの情報がないと混乱しちゃうのでは?
この画面の階層をもう一個浅くした方が体験がスムーズになるのでは?
この想像が実際に的を得ていたかの検算をSNSをチェックして行いましょう。自分の想像力の精度を確認することができますし、視野が広がる瞬間も多々あります。
辛辣な意見も目に入るかもしれませんがそれも含めて貴重な情報なので、SNSをうまく活用して情報収集に努めましょう。
さいごに
いかがだったでしょうか。
デザインリサーチの考え方、手法をゲームUIデザインにどう活かせるかについて綴らせていただきました。
「面白い!」って思っていただいた方もいれば、「ん、普段からこれやってるわ」という方もいらっしゃると思います。
私自身も一冊の本を読んだ程度の知見でまだまだ実践できていないことがたくさんあるペーペー状態なので、引き続き精進していきたいと思っています。
本記事の内容が皆様の何かしらの役に立ったら幸いです。