未来よしの商い
チラシなど広告の在り方が変わろうとしています。いえ、すでに変わっています。これまでの特売セールを真ん中に据えた価格訴求型の広告やチラシでは、お客さまとの未来につながる“絆”は育めません。
広告やチラシとは本来、お客さまへの店からの約束であり、お客さまへの真心を込めたラブレターであるべきです。単に安さだけを打ち出す広告やチラシでは、安さだけを求めるお客さましか集まりません。そして、そうしたお客さまは、他にもっと安い店があれば、さっさとあなたの店からいなくなります。
あなたは、そうしたお客さまとお付き合いしたいのですか? そうではないはずです。
かつて恵方巻商戦において、店の哲学をチラシに表現、話題を呼んだスーパーマーケット、ヤマダストアーを兵庫・太子町に訪ねたときのことです。
もうやめにしよう――こう大書されたチラシには「売上至上主義、成長しなきゃ企業じゃない。そうかもしれないけれど、何か最近違和感を感じます」と続きます。少し長くなりますが、同社社長、山田和弘さんが記したお客さまへのメッセージを引用します。
〈昨年あちこちで大量に廃棄された恵方巻がSNSで話題になりましたが、そりゃそうです。
のばせのばせ、ふやせふやせの店舗数と恵方巻の大量生産で数は膨れ上がり続けています。
食材を原価だけで考えてるからそんなことになるんやと思う。水も土も海産資源も地球が無料で私たちに与えてくれています。
スーパーの現場で働くと、どんな偉い学者さんじゃなくても分かります。
ヤマダの鮮魚従業員も「海産資源は絶対減ってる」って言ってます。だから大事にしたいんです。
今年も1本1本心を込めて巻きました。ヤマダの巻寿司は殆どお店で巻いています。
魚屋さんで魚を切って、お肉屋さんで焼いて巻きます。
今年はもしかしたら早くに無くなるかもしれないけど、ヤマダはこれ以上成長することよりも今を続けられることを大事にしたいです。
最後の1本まで恵方巻までお客様に愛されますように。
*今年は全店、昨年実績で作ります
売れ行きに応じて数を増やすことを今年は致しませんので、欠品の場合はご容赦くださいませ〉
店主の人柄まで伝わって来るメッセージが、加熱する恵方巻商戦に疑問を持つ多くの顧客の共感を呼びました。その反響と結果については、多くの報道がなされ話題になりましたので、ここでは触れません。しかし、ヤマダストアーでは、単なる短期的な売上げよりも大切なものを顧客の心に残したのです。
買物とは、単なる経済行為ではありません。その本質は、商人の掲げる哲学への信任行為なのです。そして財布の中の紙幣は、より良き商人を支持し、より良き未来を託す投票券なのです。
かつて近江商人はこう遺しました。
店よし
客よし
世間よし
これからの商いには加えてもうひとつの「よし」が大切になります。それは「未来よし」。あなたの商いは、未来を見据えていますか?
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