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定常経済と小商い

『ローカリズム宣言』は年末年始に読んだ本の一つ。フランス文学者であり、武道家である思想家の内田樹さんによるもので、『街場の~』をはじめとする多くの著作を読んできました。〈「成長」から「定常」へ〉というサブタイトルで、次の一文が本書の前提となります。


「インフラはほぼ整備され、開発すべき土地もなく、人口も減り続け、経済活動が活性化する要素は存在しない。これは現代日本社会の「問題」ではなく、「答え」である。資本主義経済と化石燃料文明は到達点を迎え、人類は次なる段階に入ろうとしている」

「ローカリズム」とは、こうした資本主義経済の終焉を受け入れて、自分たちのあり方を考えようという提案であり、今、若者を中心に実際に動き出しつつあるローカル化の流れを指しています。ここでは私のブログらしく、本書第12章「定常経済へ」について紹介しましょう。そのサブタイトルは〈「小商い」で生き延びろ〉です。


このグラフをご覧ください。日本の高度経済成長期から今日までの経済成長率の推移を示したものです。1973年の第一次石油ショックを機に9.1%平均という高度経済成長期は終わり、成長率4.2%平均という時代が1991年のバブル崩壊まで続きます。以来、今日まで成長率は平均0.8%と、「成長」からゼロ成長、つまり「定常」の経済へと移行していることがわかります。

もっとも、ゼロ成長というのは人類史上めずらしいことではありません。日本においても貨幣経済が進展した江戸時代までそうでした。ゼロ成長というのは純投資がない状態をいい、減価償却の範囲内でしか投資を行わないこと。たとえば、乗っている車が壊れてはじめて新車に乗り換えることです。

では、定常経済における企業活動はどうかるでしょうか。著者はこう推測しています。

「とりあえず確実なのは、『小商い』が企業形態としては安定的ということくらいです。商品舎サービスを、地域や風土に合わせてローカライズする。小さくて安定的なマーケット、『顔の見える顧客』を有している企業が生き延びる確率が高い」(本書229ページ)

「小商い」とは、「生産工程のすみずみにまで経営者の目が届き、従業員への待遇が手厚く(だいたいは終身雇用です)、賃金が高く、顧客との関係が『一回こっきり』ではなく、持続的であること。そういう特徴を備えた企業は景気の変化に関わらず企業を活動を展開」(本書229ページ)していけるというのです。

さて、あなたの店は上記の小商いの特徴のうち、いくつが当てはまるでしょうか。生産工程と顧客との関係性の2点を高めていくことが求められます。そうすれば、どんなに小さくても、そこには三方よしの世界が出現するでしょう。

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