道玄坂の商店主が見た渋谷
今日のブログはクイズから始めます。
冒頭のある繁華街を納めた一枚のモノクロ写真、これはどの街の風景でしょうか。撮影されたのは1963年。アジア初の開催となる東京おりんピンクが翌年に迫り、至るところで工事が進んでいたころの一枚です。
答えはこちらの写真にあります。数年後のものですが、そこには「道玄坂商店街」とはっきりと映っています。「世界で最も有名な交差点」と言われる渋谷スクランブル交差点、日本一有名な犬「忠犬ハチ公」の街、渋谷の写真です。
撮影者は、渋谷公園通商店街振興組合の理事である大西陽介さんの父、故・忠保さん。1947年に道玄坂の服飾店「大西屋」の3代目として生まれ、大学時代からカメラクラブに所属し、渋谷を撮り続けた人物です。
いまや日本有数の繁華街としてさらなる再開発が進む渋谷は、大西忠保さんの写真に写る当時の一人ひとりの営みの積み重ねの上にあることを忘れてはいけません。過去があるから現在があり、現在の先にしか未来は存在しないことを、写真は物語っています。
これらの写真が収められた『Shibuya Through the Eyes of Tadayasu Onishi 1962-1983 Archive Catalogue|道玄坂の商店主が見た渋谷 1962-1983 アーカイブカタログ』は、昨年11月に西武渋谷店で開催された1960年代~1990年代の渋谷の街角で撮影した写真を展示した「渋谷アーカイブ写真展」のうち、「道玄坂の商店主が見た渋谷 1962-1983」として公開された200枚を収録。「私の父が若い頃に撮影した約半世紀前の写真から、当時の渋谷の街の営みを感じ取っていただければ」と大西陽介さん。
そして11月16日より、第2弾となる「渋谷アーカイブ写真展2024」渋谷ヒカリエで開催されます。大西忠保さんが撮り溜めていた約3000本のフィルムから、渋谷とその周辺を撮影した写真約2000カットを選び出し、さらに300点を厳選。都電が走る渋谷駅周辺、建設中の東急本店、レオンやMILKが入る原宿セントラルアパート、同潤会アパートの何気ない日常など、今では様変わりした約半世紀前の昭和の渋谷の様子をうかがい知ることができます。
展示されるのは渋谷界隈ですが、そこにあるのは行動経済成長期の日本そのもの。写真からは当時のエネルギーが感じられます。過去を知り、現在を踏まえ、未来を創造する――まち商人にはそうした使命があることを教えてくれる写真展です。