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商いは未来をつくる

「この技を自分の得意技と決めたら、それをとことん極めろ。小細工をせず王道を行け」

こう語るのは、最高段位の一つ手前、七段の心技体を持つ剣士、辻田浩之さん。日ごろ門下生に教えている精神であり、道を示す言葉です。主宰する剣道道場で、小学生から大学生を対象に稽古をつける辻田さんの前職は高校の英語教師。剣道の指導が終わった後は英語、数学、国語、漢字などを指導し、子どもたちに文武両道の道を教えています。

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辻田さんには人生をかけて追究するもう一つの道があり、仕事があります。道とは商人道。仕事とは、大阪府堺市で1902年から続く和風香辛料製造販売店「やまつ辻田」の4代目としてのものです。

そんな辻田さんが自らのアイデンティティとして大切にして、恋焦がれるものがあります。それは、江戸時代の医者であり学者であった平賀源内が、72品種の唐辛子を解説した『蕃椒譜(ばんしょうふ)』で「食するにはこれを第一とすべし」と激賞するほどの品種「鷹の爪」。じつは今、絶滅の危機にあります。

辻田さんが店を構える大阪・堺には、昭和30年代まで、秋には一帯が真っ赤に染まるほど鷹の爪の栽培農家がありました。しかし、熟す時期が不揃いな上に、上向きに一つずつなる実の小ぶりさゆえ、摘み取りに手間がかります。1キログラムの粉をつくるのに6000個ほど必要ですが、10時間摘んでも3キログラムにもなりません。

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他品種のように採算がとれず、外国産には価格で太刀打ちできないことから、多くの生産者が栽培をやめていきました。古来、日本人が愛してきた味が経済効率性の名のもとに消えていこうとしているのです。

そんな鷹の爪を辻田さんがどのように守り、また柚子など七味唐辛子の原料の一つひとつに魂を込めているかは、新著『売れる人がやっているたった四つの繁盛の法則』をぜひご覧ください。ここでは、彼のこのひと言を紹介しましょう。

「七味唐辛子というのはメインの食材ではないし、使う量もそう多くない。そのために、原材料に何が使われているかが見えにくい製品です。しかし大切なのは『未来を担う子どもたちに食べさせられるのか』という感性。だから、私はすべての原材料において、生産者の顔の見える安全で、信頼できる最高のものを選定しています」

商いとは未来を今より良いものとする営み。日々の商い、お客様とのふれあいはそのためにあることを辻田さんは教えてくれます。

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