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名雑誌の原点

「これは あなたのお店です
いろいろなものが ここには揃えてある
この中の どれか 一つ二つは
すぐ今日 あなたの暮しに役立ち
せめて どれか もう一つ二つは
すぐには役立たないように見えても
やがて こころの底ふかく沈んで
いつか あなたの暮し方を変えてしまう
そんなふうな
これは あなたのお店です」

実は、この文章、雑誌「暮しの手帖」初代編集長、故・花森安治氏による編集方針を倣ったものです。本来は「お店」が「手帖」、「もの」が「こと」、「揃えてある」が「書きつけてある」となっています。「暮しの手帖」を開くと、今も裏表紙にこの文章の原点が記されています。
 
奇しくも、私が長く編集長を務めた「商業界」と同じ昭和23年に創刊された、消費者の暮らし向上を理念とする雑誌です。消費者と商業者、読者対象は異なりますが、その目指すところを同じくする同誌は、私にとって気になる雑誌の一つでした。
 
「こんどの戦争に、女の人は責任がない。それなのに、ひどい目にあった。ぼくには責任がある。女の人がしあわせで、みんなあったかい家庭があれば、戦争は起こらなかったと思う。だから、君の仕事に、ぼくは協力しよう」
 
これは、花森氏の評伝『花森安治の仕事』(酒井寛著)の一文。「君」とは、NHK朝のドラマ「とと姉ちゃん」のモデルとなった「暮しの手帖」創刊者、大橋鎮子さんのこと。戦前、大政翼賛会宣伝部で戦意高揚のための仕事に携わった花森氏が、大橋さんから創刊の相談を受けたときに、こう語ったと言われています。
 
この強い思いが名雑誌の原点でした。使命感が本物をつくる――どんな仕事も同じですね。

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