薩摩のさつまの人
先週末、重い腰を上げて仕事場を整理。区切りをつけたプロジェクトの資料を片づけ、仕掛途中の仕事を進めるべく段取りをつけていたら一日が過ぎていきました。併せて、いただいたままになっているお手紙に返事を書いていて、手を止めて読みふけった冊子の話です。
「薩摩のさつまの人」というタイトルの冊子は、鹿児島県さつま町の地域ブランド「薩摩のさつまブランド推進協議会」発行。同地で行われる地域事業者活性化事業「さつまdeまちゼミ」の皆さんとのご縁から送っていただいたものです。
冊子を開くと、表紙を飾るおばあちゃん、里山の味代表の久徳スミ子さんの郷土料理づくりの記事。対面では「薩摩のさつま」認証商品の一つ、桑青汁のつくり手を紹介。どちらにも取材者がさつま町の魅力を伝えようとする思いが感じられます。さつま町の魅力、それはそこで生きる人であり、彼らがつくりだす商品です。
表紙裏には、卵かけごはんのイラストと「私とさつまおごじょうゆ」というタイトルのエッセイ。筆者は地域おこし協力隊として活動する田口佳那子さん。佳い文章なので、紹介させてください。
「私と薩摩おごじょうゆ」
今回は、農家そばヤマサキの「薩摩おごじょうゆ」にまつわる思い出です。
認証品との出会いは、事業者さんとの出会い。じつは薩摩おごじょうゆを知る前に、明るく相手想いな農家そばヤマサキ当時の店主、高橋由記子さんに出会いました。
髙橋さんがつくる薩摩おごじょうゆは、農家そばヤマサキの特製万能調味料。甘い、けど甘すぎない。めんつゆのようなさっぱりした味わいです。
自宅でも愛用している薩摩おごじょうゆですが、かつてないほど染みたのは由記子さんがつくってくれた朝食のこと。
それは、2024年1月下旬に開催された「鹿児島県まちゼミフォーラム」の会場、きららの楽校に宿泊した翌朝に食べた「卵黄の薩摩おごじょうゆ漬け」でした。その名のとおり、薩摩おごじょうゆに一晩漬けこんだ卵黄を、炊きたてのごはんの上にのせて……。
まずは、お箸で割ってほかほかと立ち上がるおごじょうゆの香りに深呼吸。口に入れた瞬間の、卵黄と薩摩おごじょうゆの甘くとろけるまろやかな味わいに、心も体もほぐれていくような感覚をおぼえました。
鹿児島県の北西に位置するさつま町の冬にぴったりの、凍えたカレダをほぐしてくれる、あの味が今も忘れられません。
こうして紹介させていただいたのは、鹿児島県まちゼミフォーラム翌日のあの日あの朝、私も同じ体験をしたからです。冬の早朝、やや二日酔いの体をあたためてくれた味を私も忘れることができません。
髙橋さんは現在、さつま町商工会にお務めになり、町の活性化のために事業者支援に取り組んでおられるとのこと。晩夏に冊子に添えていただいたお手紙は「慌ただしい毎日ですが、多くの方にご協力いただきながら邁進できる環境をありがたく感じています」と締めくくられていました。
そして昨日届いたのが10月21日から開催される「さつまdeまちゼミ」のチラシでした。そこには鹿児島県まちゼミフォーラムで出会った皆さんの講座が並んでいます。薩摩おごじょうゆもまちゼミから生まれたものでした。
この地にももちろん、人口減少と少子高齢化という日本社会が向き合う課題が色濃くあります。しかし、そこから逃げることなく解決に取り組む人がおり、意思があるかぎり、その価値は損なわれることはありません。そんなことを教えていただいた便りでした。