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顧客起点の事業思想
客の心を心とせよ――ダスキンがミスタードーナツを立ち上げたとき、商業界創立者、倉本長治が贈った言葉として知られています。ダスキン創業者・鈴木清一さんは長治から多くを学んだ商人の一人でした。
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この顧客起点の事業思想を、ドラッカーは「事業にとって最重要なのは、顧客にとっての価値である」と言い、長治は「店は客のためにある」と言いました。お客様の心に自分の心を合わせよ、商人はお客さんと友だちとなれ――これが「客の心を心とせよ」という言葉の持つ意味です。
友だちというのは、対峙するのでなく、一緒になって手をつなぐもの。そういう関係性を、商人はお客さんと育むことの大切さを長治は説いています。親しい友だちに対して、損得を第一に考える人間はいません。相手に対して、どうやって喜びを提供するかを第一に考えるものです。
商人とお客さんの関係がそうあるためには、商人はプロでなくてはいけない。それが商人の役割であり、プロとしての使命です。単にお客さんになれなれしくすることが、友だちとなることではありません。自らの知識と技術を高め続ける道を歩むとき、商人ははじめてお客さんと友だちになれるのです。
その道には終わりはありません。だから商人はやりがいがある。そこに喜びがあるのです。