ひっつき虫
街はクリスマス、今年はホワイトクリスマスらしい。そんな12月24日、そんな日までの話
5月某日、ここ数年は、温暖化の影響か既にもう連日夏日を記録している。
ただ、冬に畑を放置したことで、今ツケが回ってきたかのように雑草が伸び放題になっている。その畑の野菜や果物を、定期的にお裾分けしてもらってるお返しに、毎年草刈りをしてるわけだが....
僕:何でよりによってこの、クソ暑い日に草刈
りだよ。休憩休憩。なぁ増本
増:そうっすね○○さん。休憩休憩
幸:○○さん、ちゃんとしてください。終わら
ないですよ、それに綺良ちゃんまで、、し
ばくよ
僕・増:怖っ
一瞬にして場が凍る
僕:(あっ、ひっつき虫あんじゃん)くらえっ
振り返った彼女に、無言でつねられる、目は何人殺してきたんだろうというくらい、人殺しの目をしている。
もう、これが最終通告だと言わんばかりに...
僕:すみません...真剣にやります。。
増:やりすぎですよ○○さん。私でもあそこま
で怒らせたことないですよ、、私知りませ
んから。いくら、まりののことが好きと
はいえ
そう、この手伝いも全ては俺が去年から、増本にお願いして幸阪さんと同じ部署にしてもらったのだ
ただ、早速僕の悪い部分が出てしまったのであった
僕:(いっつもこうやって距離の詰め方でミス
るんよなぁ)
幸:手、止まってますよ。
僕:ふぇ!
ビビり散らかしていた僕は、幸阪に突然声掛けられ変な声を出してしまった。
幸:ふふふ..
僕:あれ「今あのマリノ様が笑った?いやいや
あのドS鉄の女のマリノ様がまさかな」
そこからは、黙々と草刈りに取り組む3人、時々増本が幸阪にちょっかいをかけウザがられている。
増:ねぇまりのん〜(木の枝持って)鹿!
増:ほらほら〜まりのんもやってよ〜
幸:蹴り飛ばしていい?
僕:クスクス、思わず笑ってしまう。
幸:あなたまで、、
畑オーナー:あーご苦労ご苦労、お昼にしない
かみんな
増・僕:賛成〜
幸:もう少しやらないと、、、ぐぅ〜....(照)
増:まりのんお腹の虫まで鳴ってる〜
幸:そうですね、お言葉に甘えましょうか
若干照れる彼女をみて思わず僕もニヤけてしまう
増:「顔、出てますよ」
その言葉を聞いてハッと我に返る
畑オーナー:さぁ、車へどうぞ
増・僕・幸:ありがとうございます!
増:あら?あはは、まりのん足にめちゃくちゃ
ひっつき虫付いてる〜
幸:また付けたんですか?〇〇さん
僕:いや、僕が付けたのはあの一回限りです。
増:そう思えばまりのん夢中になりすぎてひ
っつき虫ゾーンに行ってたよね。
幸:それ先に言ってよ!もう、めちゃくちゃ
付いてるやんかこれ、綺良ちゃん、〇〇さ
ん外すの手伝って。
増:はい、かしこまりました。
僕:え?僕も?
幸:早く取ってよ
僕:は、、はい
去年から一緒にいる時間は増えたが、触れる事は一度も無かった。何度か増本にチャンスを貰っていたものの緊張から、ボケてしまい台無しにしてきた...
でも、今は違うマリノ様からのお願いだ、歯向かうものなら殺される。
僕:では、失礼します。
一呼吸おいてから、手を伸ばす。あからさまに手が震えているのが分かる。
増:えへへへ!めっちゃ震えるやん〇〇笑
僕:邪念捨てよ...かぼちゃ、かぼちゃ
あっ....
幸:、、、、、
僕:、、、、す、すみません。
遂にやってしまった、思いっきりお尻に触れてしまった。
幸:いや、大丈夫。これは事故
とはいえ、好きな人に初めて触れたのがお尻
とは何とも気まずい
増:あわわわわ!これは事故!事故!
その後も車内で何度も平謝りし続けた
僕:ほんとにごめんなさい...
幸:もう大丈夫だから
畑:まあまあ美味しいご飯食べて気分転換して
よ
増:わぁ楽しみ〜もうお腹ぺこぺこです。
僕・幸:ほんと増本(綺良ちゃん)は〜
偶然ハモってしまった、お互いさっきまでの顔が少し綻ぶ。
畑:ふふっ、仲ええんやね〜それやのにムスっ
としとる顔は向いてへんで
増:せやせや〜お二人さん怖すぎて、金剛力士
像かと思ったで〜
僕・幸:誰が、金剛力士像や!
一同:あははははは
増:(もう、安心やねこれで...がんばれ2人)
その後、午後の草刈りを終え
僕・増・幸:お疲れ様でした〜
畑:3人ともありがとうね、おかげで今年も野
菜にフルーツ作れそうだよ🍓
増:メロン食べたいなぁ〜チラッ
幸:食い意地張りすぎなんだよ
増:えへへ、いいじゃんか〜
僕:あははは
畑:またできたら連絡するから。取りにおいで
ね〜
増・僕・幸:ありがとうございます。それでは
増:メロン!メロン!収穫メロン!
幸:楽しそうだな綺良ちゃん...
僕:そうですね。ってか何でそんなしんみりし
てるんですか?
幸:私って根暗じゃん、、だから気持ち伝える
のが下手で知ってる通り、辛辣キャラみ
たいになってるけどホントは、素直に人を
好きになってみたいんだよね...
僕:それじゃ、僕で試してみません?
自分でも凄いことを言っていると思っていただが、素直になろうとしている彼女に対して自分も素直な気持ちでぶつかりたかった。
幸:え...それ本気ですか?
僕:手助けができるなら僕は....
増:おーい2人でなに話してんのー早くしない
と電車行っちゃうよー
幸・僕:(ヤバいそうだった)待ってーーーー
そこから3人で収穫、料理会と月2回ペースぐらいで会うようになった
僕:増本と幸阪さんのマジックホンマおもろい
よな
増:ホンマに〜嬉しいわ〜なあ、まりのん
幸:そうやなぁ。褒められるのはなれへんけど
悪い気はせんよなぁ。
増:そう思えばもう少しでクリスマスですよ!
何します?畑のおじさん、いちごにメロン
作ってあるよって言ってましたし、今年は
手作りに挑戦してみませんか?
僕:作った経験無いけど、そんな簡単にできる
もんなんか?
増:困った時は夏鈴ちゃんに全振りします!
幸:他力本願じゃねぇか
僕:あはははは、僕も少し練習してみるよ
増:よっ!料理男子!カッコいい〜
幸:うん、、カッコ良さそう....
増:あとクリスマスだしみんな仮装しようよ〜
僕:仮装かぁ〜やったことないなぁ
増:まりのん得意だし、教えてもらいなよ〇〇
幸:えっ...
僕:幸阪さん仮装するイメージ湧かんねんけど
も、、、それなら増本の方が
幸:いや、私についてきなさい。仮装のいろは
から教えてあげる。
増:じゃ、決定だね!それじゃクリスマス会
楽しみにしよ〜っと
幸:じゃ来週の土曜に〇〇駅集合で
僕:それじゃ、おねがいします。
仮装グッズ選びという名のデートを組んでしまった。土曜が近づくにつれ、何だか心が落ち着かない。
これが、恋だと改めて気づいた。
そして土曜日を迎える。
僕:まだ来てないな、、緊張からかいつもより
早くついてしまった。
そして草刈り後の答えを聞きそびれた、今日返答するにはもってこいの日だった。
幸:お待たせしました。では行きましょうか。
(私もあの時は自信満々言ったがまさかこ
うなるとは...)
いつもは増本との3人だが今日は違う、妙な緊張感と沈黙が続く
僕:おねがいします。「しかし、可愛い」
幸:こちらこそ「いつもよりカッコよく見える
うん、間違いない」
両者とも思わず心の声が漏れそうになる。
そんなこんなで無言が続きながらド〇キに着く
僕:色々あるなぁ〜うわ...こんなの着れねぇわ
幸:わぁ〜
さっきまでの無言の宇宙から、人が変わったかのような目で仮装グッズを見つめる幸阪
緊張からかこわばっていた僕も少し肩を下ろす。
幸:〇〇さん。これどうでしょう?いや、こっ
ちの〇〇さんも捨てがたいなぁ
でもこれかな〜
キラキラした目で選ぶ姿は、まるで子供がお菓子を選ぶかのようだった。
僕:確かに、これウケも良さそうだし良いね〜
幸:でしょ〜
僕:さすが幸阪さん!
これで楽しみだね!クリスマス会
いつのまにか緊張もほぐれ最初のよそよそしい2人はどこかに消え去っていた
僕:ありがとう!お礼といっては...って幸阪さ
ん?
そっと袖が後ろに引っ張られる、引っ張られた先を見ると、照れながら僕を見つめる幸阪さんがいた
幸:...私のも...君に選んで欲しい...
まさかの発言で鼓動が高まった、だが素直になろうとしている彼女を応援したかった。
そう、答えはひとつ
僕:『じゃ、僕も茉里乃の為に選ばないとね』
幸:...ありがとう...
彼女は安心したのか、ゆっくり僕の胸に身を寄せる
その行動に僕の鼓動はさらに早くなる
幸:断られたら.....なんて考えるとずっと言え
なくて...
僕:いきなり大胆だよ笑、でもそういう所も可
愛いよ
幸:ふふっ...めちゃくちゃ緊張してるやろ笑
僕:さぁ!みんなも見てるし恥ずかしいから買
いに行くで〜
今できる最低限の勇気を振り絞り彼女の手を握る
幸:うん!せやな。可愛いの選んでくれな怒る
で!
僕:そのまんまでもめちゃくちゃ可愛いからな
ぁ
幸:ほんま、おだてるのだけは上手いんやから
その後、あーでも無い、こーでも無いと言いながらコスプレを決め帰路に着く
僕・幸:今日はありがとう。
また同じタイミングでハモる。いつも2人は何かあるとハモりがちだった
僕・幸:あはははは
幸:ほんと会った時から似たもの同士やったん
かなぁ
僕:そうかもな〜ビビりまくってたけど
幸:あれは、〇〇が真面目にやらんからやん
これからもふざけてたら怒るで
僕:はーい、気をつけます〜
幸:ふっ..コツン
僕:痛っ...
幸:それじゃクリスマス楽しみにしてるから
そういって手を振る彼女に僕も手を振りかえす
彼女の姿が見えなくなるまで
ただいつもの別れとは違う、切なさと、まだ夢を見ているような感覚だった
だが、これだけは確信して言える、目の前で微笑む彼女は紛れもなく美しかった。
時は過ぎ、クリスマス当日
増:まりのんそのコスプレ可愛い〜
うわぁぁぁ!メロンのケーキ!!!
〇〇くんも似合ってる〜
僕:見様見真似やからケーキは美味しいか分か
らんけども
増:いっただきまーーす
幸:ありがとうってか...全然話聞いてないじゃ
ん笑
増:うま〜二人も食べてみなよ!
僕:いや、それ制作者が言う言葉やから
増:あはは、ええやんか〜ほら美味しいやろ?
幸:美味しい..めっちゃ練習しとったもんな
僕:お、我ながら上出来👏
増:まりのん?めっちゃ練習しとった?
ははーん
そういうことか笑2人は私の知らんとこで
そんなにイチャコラしとったんかー!
この、この〜
幸:しばくぞ
僕:あはははは。2人の掛け合いには負けるわ
増:マリノ様、失礼しました。でもでも2人で
会ってたなら....あー破廉恥笑
徐々に照れる幸阪に僕は笑いが止まらない
僕:あはははは
幸:〇〇までいい加減にしてください
すぐ調子乗るんだから
僕:すみません。
増:でもでも、あの時のひっつき虫がこんな恋
に発展するとは
僕:ほんまやな〜感謝感謝やわひっつき虫には
あの時勇気出してよかった〜
幸:あれ、嫌がらせにも程があるで笑
増:そうや!最後は2人がひっつかないと!
ほらほら!くっついて写真撮るで〜
はい、チーズ パシャ
僕:えっ..
その時頬に彼女の唇が触れる。身体に電撃が走ったかのような衝撃を受ける。
幸:次、〇〇の番やからね
増:(2人ともおめでとう)うぁぁぁぁぁぁ
あの、茉里乃が!!!!
幸:さぁ綺良ちゃん続きしよ!ケーキあーん
増:照れ隠しが鬼ですよまりのん、、グフゥ
僕:あははは
??「溢れ出る思いを閉じ込め蓋をした、これでいいんだ、それがいいんだ」
fin...