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使っているカメラについて語ってしまおう(ピッカリコニカC35EF)

偶然我が家にやってきたカメラ

 家族がカメラを新しくしたいというので、あれこれ検討してみた結果、キヤノンのG7X MarkⅡ辺りを買おうという事になった。カメラを買うときにいらないカメラを持っていくと少し値引きしてくれることがあるので、ハードオフの青いコンテナから適当な300円のジャンクカメラを1台サルベージしておいた。そして、いざキヤノンを買うときに出してみると、「50円引きます」と言われた。

 そんな訳で手元に残ってしまったカメラは、ピッカリコニカC35EFというカメラだ。モルトはボロボロで粉が散っているし、巻上は3回巻き上げないとチャージしないし、レンズの奥の方にカビがあるような状態である。電池が入っていないのでメーターも動かないが、なぜか電池が無くてもシャッターは切れる。どうやら機械式シャッターを電気で制御する仕組みのようだ。つまりハイブリッドシャッターだ(こう言うとなんかかっこいいな)。とは言うものの、メーターが生きてなかったら絞りは開放になってしまうので実用上は使えないだろう。

動くのか?

 見た感じとても駄目っぽいが、一応電池を入れてみるか。このカメラ、一見単三電池で動くように見えるが、これはフラッシュ用の電池で、カメラ側はMR44という水銀電池を入れることになっている。でもこれはもう手に入らないので、電圧は違うがLR44を入れてみる。すると何事もなかったようにメーターが動き出した。試しにシャッターを切ってみると、絞りもちゃんと動いている。精度はわからないが、ネガフィルムならいけるだろう。ええと、電源をオフにするには・・・。無いんだなこれが。レンズキャップを被せておけばそれ程電池も減らないだろうという方式らしい。コストダウンじゃないぞ。失敗を招くややこしい操作は一つでも減らそうという設計者の思いやりである(きっと)。ついでに単三電池も入れてみれば、ちゃんとピッカリするじゃないか。そして、ガチャガチャといじっているうちに、3回巻き上げ病も治ってしまった。こうなったら、モルトも直すしかない。早速100均でフェルトを買ってきて貼り直す。残るはレンズのカビだが、これはオールドの味として割り切ろう。

KONICA C35EF HEXANON38mmF2.8

ちゃんとピッカリした。このムダなドキュメンタリー感が素敵だ。

増山たづ子さんのカメラ

 このカメラを使っていた方として有名なのは増山たづ子さんである。ある時増山さんが住んでいた徳山村がダムに沈むことになった。戦争に行ったままのご主人が帰ってきた時に村が無くなっていたら悲しむだろうと、村の生活や風景を写真に撮り、素晴らしいスナップを残した。その時使っていたのがこのカメラである。そんなカメラが偶然家に来たというのは、同じスナップを撮るものとしてとても幸運である。いつの日かこのカメラを持って、徳山村へ行ってみたいと思っている。

ゾーンフォーカスって知ってる?

 このC35にはいろいろなバリエーションがあって、最初のモデルは金属ボディーのレンジファインダーだった。小さくて使いやすそうだし、ピントが合わせられるのはいいな。そして後半のモデルはオートフォーカスが付く。ジャスピンコニカってやつだ。精度はともかく、原始的なオートフォーカスも興味がある。そして我がC35EFはゾーンフォーカス。いわゆる目測である。大丈夫か。いや、スナップと言えば目測じゃないか。あのローライ35だって目測である。レンジファインダーのカメラでピントを外すと残念な感じがするが、ゾーンフォーカスで多少ボケても味として評価できる(気がする)。

KONICA C35EF HEXANON38mmF2.8

これは目測でもなんとかピントが来たかな。

ゾーンフォーカスはスナップ最強

 普段カメラを首から下げている時はなるべく3mに戻しておくようにする。すると撮りたいものが2~5mくらいにある場合は、そのままシャッターを切れる。これはミラーレスよりもi-phoneよりも圧倒的に速い(ま、彼らはその代わり正確にピントを合わせてくれるけど)。遠景ならピントリングを端まで回してレリーズ。近い時だけはちょっと丁寧に。

 現代のデジカメは高性能だが、実は気にすることがとても多い。絞りは?シャッタースピードは?露出補正は?感度は?連写速度は?ピクチャースタイルは?測距点は?保存形式は?手振れ補正モードは?・・・もちろんこれらはボンクラな自分に代わってカメラがいい感じに調整してくれるわけだけど、それじゃつまらないので、自分好みにいろいろいじくって撮っているのである。だから常に「前の撮影で感度を変えてなかったっけ?」とかノイズの設定を戻し忘れてないかとかが、頭をよぎってしまう。だからこのコニカの選択肢の少なさは実に清々しい。撮影結果がすぐに見られないのも、人を斬った後に後ろを振り返らない武士のようで潔いよね(違う?)。

KONICA C35EF HEXANON38mmF2.8

通りすがりに辻斬りの如くシャッターを切った写真。コニカじゃなかったら絶対間に合っていないだろう。

怠惰な日常がドラマチックになる(かもしれない)カメラ

 複雑な風が吹いているビルに囲まれた広場に、どこからか紫の風船が迷い込んできてぐるぐると回り始めた。子犬のように人懐っこい風船で、人のいるところばかりかすめていく。早速高校生がスマホで挑んだが、あまりの速さに断念したようだ。ここはコニカの出番である。風船はこっちに目掛けて真っすぐ向かって来る。ぶつかる、と見せかけて空へと舞い上がった。その瞬間深いシャッターを目いっぱい押し込む・・・。果たして写っているのか。
 こんな時デジカメならすぐに結果が見られるが、上手く撮れていてもそれっきりだろう。むしろ連写がいくらでもできるデジカメだったら、ありきたり過ぎて撮りもしなかったかもしれない。マンネリとの戦いになりつつあるスナップ撮影をエキサイティングに変えてくれる、本当に楽しいカメラだ。

KONICA C35EF HEXANON38mmF2.8

さてこの風船との勝負、ビルと空と人を入れたかったので、2勝1敗といったところか。

デジタルカメラとの意外な共通点

 このカメラには一つ心配の種がある。レンズキャップである。ジャンクのくせにちゃんとコニカ純正のかぶせ式キャップが付いている。これ絶対に落とすヤツだ。フィルター径を見てみると46mm。LUMIXのヤツがピッタリじゃないか。愛用のマイクロフォーサーズ用パンケーキと同じなのである。これはスプリングが固くて滅多に外れない。もっとも外し忘れの方は時々やるかもしれないな。
 フィルター径が同じだと、NDフィルターなんかも共用できるのがいい。このカメラのシャッタースピードは1/60、1/125、1/250の三速のみなので、ISO400のフィルムを入れたりなんかすると、すぐにf16とかになってしまう。かと言って100を入れたら、夕方すぐに撮影終了となってしまう。そこでND4あたりを使えば、400のフィルムを昼間は100として使うことができるわけだ。デジカメのISOオートのようにはいかないものの、これは都合がいい。

コンパクトカメラ・・・なのか?

 分類上は間違いなくフィルムコンパクトカメラという事になろう。でもポケットに入れられるXAに対して、このカメラはやはり首から下げるか、かばんに入れるという使い方になる。そうなるとOMのような小型一眼レフと変わらないと言えば変わらない。「せめてフラッシュが分離できればなぁ」とか、ピッカリコニカの名前を全否定するような事をついつい考えてしまう。でもこの時代のカメラは電装系がガンであり、液漏れにより電池ボックスが死んでいるカメラを多く見かける。C35EFのユーザーの中には、光らないピッカリコニカで撮影を楽しんでいる哲学者のような方もおられるのだ。多少大きいくらいでガタガタ騒いでは罰が当たるだろう。

KONICA C35EF HEXANON38mmF2.8

雪を強調したかったので日中シンクロ。ただISO400だと絞られてしまうので、効果はちょっと弱かった。

懐かしいシャッターボタン

 シャッターボタンは昔ながらのとても簡素なもので、水道の蛇口を外したような形をしている。少年の頃我が家にあったフラッシュフジカもこのタイプであり、沼に足を取られる前の純粋な私は、うちはお金が無いから部品が外れたカメラも直せないのだろうと思っていた。しかも一眼レフとコンパクトの区別もついていなかったので、フジカのレンズを回して「なんで外れないんだろう」などと思っていた(壊さなくて本当良かった)。このタイプのシャッターボタンは色気は無いが、頭にネジ山があるのでケーブルレリーズが付いてしまう。もっとも低速は1/60しかないので、レリーズを使うシチュエーションは思いつかない。しいて言えば・・・付けるとカッコいいというくらいか。ところでこのシャッター、ストロークがものすごく深くて、ボタンが見えなくなるくらいまで押し込まないとシャッターが切れない。おかげでカバンの中で暴発みたいなことは起きないが、タイミングを計るのが難しい。そういう話はあまり聞かないので、うちの個体の問題なのかもしれない。

気になるヘキサノンの写り

 レンズはこのシリーズ定番のヘキサノン38mmF2.8。正直このカメラは撮影本数がまだ少ないので、写りを語れるほど使いこなしたわけではない。でも少し使った印象としては、とても優しい写りをするレンズという事だ。こちらのいい加減なピント合わせや、無頓着な光の選び方などに関わらず、あまり破綻させずに像を作る。コンデジなんかでピントを外すと被写界深度が深いくせにあからさまに後ピンが分かったりするのだが、このカメラは「ま、内容が良かったらいいじゃないですか」と諭すような写りをするのである。このC35シリーズでフィルムを始める若い人が結構多いが、とてもいいセレクトだと思うな。

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