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フィルムカメラで歩いた黒部

いろいろな顔がある黒部

 みなさんは黒部と聞いて何を思い浮かべるだろうか。雪の壁に挟まれながら走るバスやトロッコ電車。耳の奥で中島みゆきが流れ出した方もおられるかもしれない。ただ、富山にいる者にとって黒部はどこにでもあるごく普通の田舎町である。

 2015年に新幹線が開通し、富山は東京から2時間で行けるようになった。その時に富山の有力企業がとった行動が面白い。「こんなに近いんだから、別に東京だけでよくね?」と不二越は富山と東京に分かれていた本社機能を東京へ集約した。一方YKKは、「こんなに近いんだから、別に東京じゃなくてもいいよね」と、本社機能の一部を黒部に移した。果たしてどちらが正解なのだろうか。

 YKKは本社機能移転とともにパッシブタウンという新しい時代の街を作った。タイトルに置いた写真は冬に訪れた際の写真で、人通りがまるで無くちょっとさすがに意識が高すぎたかと心配したが、暖かくなってからもう一度来てみるとイベントで賑わっていて、幸せそうな街になっていた。

OLYMPUS XA ZUIKO35mmF2.8

 その一方で、駅前にはこんな世界も取り残されている。少し歩くだけで現在過去未来が現れる街を迷い道してみるのはいかがだろうか。

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330円で買える温もり

 そんな黒部に来たのは一つ目的があって、実はハンバーガーを食べに来たのだ。ご当地バーガーの有名店とかそういうものではない。自動販売機である。昔はドライブインやゲームセンターなんかに行くと必ずうどんやハンバーガーの自動販売機が置いてあった。そんなどこにでもあると思っていたものは、今やどこにもないのである。黒部の「かって屋」という所でそんな自販機を復活させて、時々動かしているらしい。今日はその販売日なのだ。

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 この佇まい、実に懐かしい。が、考えてみると現役時代に買ってみたことは無かった。だからどんなものが出てくるのか分からない。SUICAが使えないのはもちろん、500円玉でさえ使えないのだ(お店で両替してくれます)。それ以上のコストが掛かっているのは間違いないが、昔のままの330円を投入し、チーズバーガーのボタンを押せば、ウルトラマンのカラータイマーのようなものが点滅し調理が始まる。そしてしばらく待つとゴトリと四角い箱が落ちてくる、このレトロな未来感がたまらない。味なんて不味くても文句は言わないが、チェーン店のハンバーガーより愛情を感じる結構おいしいハンバーガーだった。どうも地元のパン屋さんがこのプロジェクトの為に用意しているらしい。

令和レトロ

 かつて市役所があった場所は、図書館を含む素敵な交流施設になっている。たまにしか使わない役所よりはこういうものが近くにあった方がありがたいだろうな。最近の建物は公共施設であっても上手にデザインされていておしゃれだ。ただ、おしゃれなモノって、意外と早く古臭くなったりするものだ。まぁそういうものも更に古くなると逆にかっこよくなる場合もあるので、やはり少し個性的な方がいいだろう。そのうち令和レトロなんて言われる時代も来るのだろうか。

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