自選30首

新聞掲載歌やNHK短歌大会掲載歌が15首、残りを『未来短歌誌』の自選短歌15首をまとめました。この度、上梓しました歌集『きみの涙はぜんぶ受け止める』の第一章とその他一部ネタバレです。興味を持ってくださった方、BOOTHにて販売しますので、よろしくお願いいたします。

羽の無き我の背きりきりゼンマイを巻いて飛び込め渋谷交差点 「毎日新聞」加藤治郎氏(以下敬称略)

柔軟にかつアルデンテに生きたしと後ろに黒髪キュッと束ねる 「毎日新聞」
2011年6/26加藤治郎選

雪風巻(ゆきしま)きポケットに手を入れる夜過去に繋いだ掌がみな芽吹く 「毎日新聞」2011年3月?加藤治郎選

傍(かたわ)らに「生きているぞ」と鼾かき唸り声まであなたは豊か 「毎日新聞12/4加藤治郎選

こおろぎの交響曲(シンフォニー)に曼珠沙華立ちて喝采墓地は華やぐ 「産経新聞」2009年10/27伊藤一彦氏選(以下敬称略)

咎(とが)ゆえか化粧売り場に座らされ光のTUNAMIに逃げ場を失う 「産経新聞」2010年12/7伊藤一彦選

前屈み防御の姿勢で生きる我 ブラウスにほらラーメンが撥ねる 2010年NHK全国短歌大会 俵万智氏 秀歌

空豆は胎児のごとく熟睡(うまい)せり 茹でられてもああ涙のフォルム NHK全国短歌大会2011年入選

クリスマスネオン点灯する瞬間待ってましたと我も煌めく 「産経新聞」2008年12/21伊藤一彦選

真夜中にキャベツをざんざん刻み込むお前の芯が<今>試される 2012年NHK全国短歌大会入選

霜柱ざくざく殺す足裏をしいんと包む黒革ブーツに 「産経新聞」2013年3/4伊藤一彦選

生きている存在証明消すごとき足音のせぬ靴欲しきなり 「産経新聞」2014年11/24伊藤一彦選

蜻蛉の複眼の一つが映し出す 胸揺らしヒール鳴らしてた母 NHK全国短歌大会2013年 穂村弘氏 題詠秀歌

飛ばされしヒューズの如きこころにて砂浜走れば満月ほろん 「産経新聞」2014年4/6伊藤一彦選

身体なきマネキン夜毎美容師に愛でらているボブの黒髪  「毎日新聞」加藤治郎選 不明

随分、昔の投稿なので、正確な日付が分からぬものは、ご容赦ください。

結社入会以後

わたくしの中の黒点が炙られ出づればゴッホの向日葵の種

星明かりさみしい夢を見過ぎたかやけにポケットのフリスクの鳴る

そ   か   せ   め
 う す い ま ん だ ですか歪んだ想い
  で   け   か
の書簡一行

強すぎる自意識のごとスコールに打たれてるアスファルトの水たまり

「愛してる」のポテンシャルが違うだろスプーンが裂けてフォークのわたし

薄き唇(くち)きりりと結んだ窪んだ眼ああミイラにしたいその貌かたち

この街の難民としてキャリー曳きネオン狂おし夜道を歩く

結婚は君とはできない図書館のポストに本返す顔で 夏至

縁遠い親族(うから)のような姉の居て語尾の尖がって刺さってわたし

眼開け「雪が降ってる」という義父(ちち)の指差す向こうただ夏あるばかり

児を産めぬ身体は雨を弾きたりおんおん泣くなおんなの輪郭

怒りたる時はレタスを剥けと言う母よあなたへみしみし毟る 工藤吉生さん選

傍らに君の寝言はなむなむと神社仏閣ツアーのあかるさ       

さっぱりと泣いたような朝の来て爪先まで干す 紺碧の空

             











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