殺めたるたましひ一つ重みとし牛革バッグにオイル塗り込む 冷蔵庫一丁目にあるゆで卵しづかなる死が祝はれてゐる フォーマルの背中【せな】のジッパー引き上げるウルトラCにてみつちりと我 一つづつボタン外して脱ぎきつた吾の展開図しろく床にあり 赤らひく子はをりませぬと言ふとき洞【うろ】持つ樹として雨を観てゐた 人あまた行きかふこの夜この街を誰かが灯す大宮南銀座【ナンギン】通り 生きてゆく希望が稀薄になつてゐる今宵も歯磨きに余念なし 顔パックに一日【ひとひ】のこころ写し終
私たち血の沸点で生きている家族ですからとめどなく 狂 正気とね狂気のあはひにゐるわたし言葉の鉈(なた)でぶんぶんぶん殴る 兄さんの鷲鼻 少し生きづらく壁にぶつけたりしたでせう。好き 姉さんと呼ぶ人は他人のやうでしたいいえ、湘南社協の人よ 亡くなれば燃えるだらうか父の歯のインプラントを案じておりぬ 澱んでる海のなかでの秘密だよゆまりを放つ父さんのマネ サングラス波に奪(とら)れた父さんが「生きてるよ」つて足をぴらぴら 声高に叫ぶではなく声殺し囁く人を母に持ちおり
新聞掲載歌やNHK短歌大会掲載歌が15首、残りを『未来短歌誌』の自選短歌15首をまとめました。10月末に歌集を上梓する運びとなりました。一部ネタバレですが、興味を持って下さったた方、BOOTHに出しますので、よろしくお願い申し上げます。 羽の無き我の背きりきりゼンマイを巻いて飛び込め渋谷交差点 「毎日新聞」加藤治郎氏(以下敬称略) 柔軟にかつアルデンテに生きたしと後ろに黒髪キュッと束ねる 「毎日新聞」 2011年6/26加藤治郎選 雪風巻(ゆきしま)きポケットに手を入れ
新聞掲載歌やNHK短歌大会掲載歌が15首、残りを『未来短歌誌』の自選短歌15首をまとめました。この度、上梓しました歌集『きみの涙はぜんぶ受け止める』の第一章とその他一部ネタバレです。興味を持ってくださった方、BOOTHにて販売しますので、よろしくお願いいたします。 羽の無き我の背きりきりゼンマイを巻いて飛び込め渋谷交差点 「毎日新聞」加藤治郎氏(以下敬称略) 柔軟にかつアルデンテに生きたしと後ろに黒髪キュッと束ねる 「毎日新聞」 2011年6/26加藤治郎選 雪風巻(ゆ