星になる予定だったもの

わたしは精神疾患があり、
数年前から障がい者手帳を持っている。
心に、身体に、その症状が毎日現れるがなんとか付き合えている。
障がい者雇用の枠で就労しており、プライベートではいろいろな福祉サービスを受けながら暮らしている。  

わたしには6歳の姪がいる。
昨年のクリスマスにはサンタクロースから「アクアビーズ」というおもちゃをもらったらしい。
遊び方はいたって簡単かつ安全で、型紙の上に凹凸のある透明の台を置き、型紙に沿ってビーズを並べていく。
そこにスプレーで水を吹きかけると、ビーズ同士がくっついて固まるのだ。  

姪に「なんの形にしたい?」と聞かれ、星の型紙を選んだ。
外側に水色、紫、そして真ん中にピンクのビーズを置いていく。
その時に手が滑って外側の水色、つまり星のツノの部分が崩れてしまった。
これはこれでいいねということになり、姪と一緒に水をスプレーでかけて固めた。  

これがその時に出来た「星になる予定だったもの」である。

自分のようだと思った。  

10代の頃、思い描いていた人生があった。
好きなことを仕事にする。
たくさんのお金を稼ぐ。
思いどおりの暮らしをする。  

19歳のときに持病を発症して、思い描いていた人生からどんどん遠く離れていった。
日々の生活もままならなかった。
布団にこもり、トイレに行くだけで精一杯の時期もあった。
仕事も辞めてしまった。
ストレスや副作用の影響で毎晩のように食べきれない量を食べ、食べ終わるなりトイレに駆け込んだりもした。
1ヶ月で10キロ痩せたり、1ヶ月で10キロ太ったりもした。
思いどおりにいく事なんて、何もなかった。

けれど、それが一生続くわけではなかったこと。
それは私にとって予想外だった。

自責の念で毎日消えてしまいたかった日々のなかに少しずつ変化があったのである。
休んでいていいんだ、と安心した瞬間があった。
生きていていいんだと、認められた瞬間があった。
働けるかもしれない、と前向きになった瞬間があった。
時間をかけて、一段のぼる瞬間をひとつひとつ重ねて、私は今を過ごしている。  

星の形になりたかった。
星の形になれなかった。
でも、星の形にならなくてもいいのだと。
自分が楽しいと、生きていてよかったと、そう思える瞬間があるのならそれでいいのだと。  

私は今の生活を愛している。
私は私に生まれてきて良かったのだ。

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