音無響子の話
最近、めぞん一刻を読み返した。
これは両親が買いそろえていた漫画で、小学生の時くらいに初めて読んだものだ。正直、小学生が読むもんじゃないだろって思うし、当時は意味わからない表現もたくさんあったけど、なんだかんだ楽しんだ。
以降、数年スパンでたびたび読み返すのだが、わりに新たな発見がある。
今回読み返して思ったのは、「思ってたより序盤から五代くんと響子さんがイチャイチャしている……!!」ということだった。
今回は響子さんについて話す。
正直、これまで散々語りつくされているテーマなので、新鮮味のある文章ではない。まぁそんなことどうでもいい。これは僕の中の言語化作業なので。
めぞん一刻は、高橋留美子が描くラブコメ漫画の金字塔だ。おんぼろアパート一刻館で暮らす浪人生の五代裕作と、そこに管理人として赴任してきた若い未亡人の音無響子がくっつくまでの話である。
この作品の魅力。それは音無響子がめちゃくちゃ可愛いクソ女であるということだ。
と言うかそれがないと成立しない。すべての障害は響子さんと五代くんをイチャイチャさせるために存在している。
彼女は、「自分が寂しいと認めたがらない寂しがりや」だ。高校時代に委員長をやっていて、卒業後すぐに地味めでのんびり屋の男性と結婚してしまったので、「世話焼き気質でしっかり者」という枠に自分を押し込めがちだが、本質的には甘えん坊である。
ただ、1話の響子さんは、「一刻館という掃き溜めに降って湧いた美人」でしかなかった。気立てがよく面倒見は良いが、それくらいだ。そんな彼女が、実は未亡人であったことが明らかになり……というあたりで、五代くんと響子さんの間に劇的な変化をもたらす事件が起こる。
五代くんが酒に酔った勢いで彼女に告白するのだ。告白というか、「私、五代裕作は、音無響子さんが好きであります!」「響子さん好きじゃあああ!」と深夜の住宅街に連呼しながら帰ってきただけなのだが。
序盤も序盤のエピソードだが、それまで「憧れの管理人さん」だった響子さんが、明確に五代くんの存在を意識するようになる。意識するようになるのだ!
このあたりから、響子さんの地金が出てきて、かなり魅力的に見えてきた。このあと、些細な行き違いから、「あの告白は冗談」だと受け取ってしまい、響子さんは泣いて怒るのだが、裏を返せばそれだけあの言葉が嬉しかったということだ。その後、誤解は解け、響子さんは明確に、五代くんからの「自分への好意」を認識するようになる。
で、五代くんが他の女と仲良くしてるだけで、明確にやきもちを焼く。「ろくに手も握らせない男のことで泣くわ喚くわ」とは作中人物の台詞だが、まぁ実際その通りである。五代くんがべたべたしてくると突き放すくせに、いっちょ前にやきもちだけは焼く。
文字に起こすと、「あれ、響子さんってクソ女では?」という疑問が立つのは先人たちも通った道である。インターネット文化が流行り、響子さんについて語ろうとしためぞん一刻世代の先輩諸氏が、「なんだこの面倒臭い女!?」と驚愕しているテキストを、僕は何度も見てきた。
なんだかんだ言って、響子さんが五代くんの好意を憎からず思っていたのは間違いなくて、だからこそ、読者は彼女のやきもちが我がままを許容できていたのかなとは思う。
僕は、「フルメタル・パニック!」のテレサ・テスタロッサにも、響子さんと同じ類の魅力を感じている。テッサと響子さんを比較することで、じゃあどういうところが好きなのか、という解像度を上げていきたい。
まず共通点としてプライドが高い。
テッサは自身の有能さ・可憐さを自覚したうえでのプライドの高さがあり、響子さんも自分の魅力をキッチリ把握している節がある。加えて響子さんは、五代くん(と三鷹さん)からの好意も把握している。
そして次に、それを振りかざさず、取り繕うのが上手い。
テッサも響子さんも、プライドを前に押し出した性格をしていない。どちらかと言えば、清楚でおしとやかなイメージがある。
おそらく、このプライドアーマーで地金を守っている女性キャラが好きなのだと思った。そして、そういうキャラはプライドの高さゆえに、面倒くさい言動――意地を張るを取ることがあり、それが魅力的に見える。
たぶんこういうこと……かな? なにぶん、ヒーローやヴィランに比べてヒロインの解像度というものが低いので、いささか自信がない。
一応、恋愛モノにおいて、ヒロインはヴィランと同じ性質を持ち得るので、その観点からもちょっと触れておくと、響子さんは「変化の不受容」の性質を持っている。
ここは明確にテッサとは違うポイントで、「めぞん一刻」のラスボスとしての音無響子が持つ魅力だと思う。
いろいろ言語化してきたが、正直、すべてを正確に出力できたわけではないと思う。カバーしきれていない範囲はいろいろありそうだ。
だが、「プライドの高い女の子」が好きなのは、たぶん間違いないと思う。あとは、僕が初々しさの無い女キャラが好きなのは、たぶんこの人の影響がかなり大きい気がする。
好きな女性キャラの言語化が一番たいへんな作業なのはわかっていた。このへん、もうちょい今後突き詰められたらいいなと思う。
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