屹リツ滿ツ森
森の小径は 細くて長い
ミライへ続く 卵管なのに かの女の中の
腐葉土は 詩篇がほぐれて〈創世記〉の匂いがする
ひと雨ごとに深くしずんで 祈りの形でまるまって
(もう一度…)
リリスの香水くゆらせて
鏡の中からあるいてきたのは
もう一人の(詩人の僕だ…
なつに羽化する(二卵双生…
サナギの記憶をたぐり寄せると
複眼系の脈が光った
(あのとき君は
しあわせでは なかったの?
せりあがる かの女の水位!
あぁ又なのか!)逃げおくれて 逆巻いて
押し流された 沼のほとりは
ドクダミが原・・・
黄色い乳首の 屹リツ滿ツ森
感じやすくて 垂直で
コモレビだけで 揮発してくる
〈リリス〉のアセトアルデヒドが
僕の詩層をチリチリ燃やして
もうこれ以上はコトバをうめない
鏡の君へ あるいてゆけない
辛うじて
痣(あざ)にまみれたスペード葉と
白い十字で 沼に浮いてる
君の茎 僕の血管(ベセル)…
*
写真提供:Takao Hisano
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