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絵を描きたい気持ちだけが先走る人間

僕は特に描きたいものが無いとよく言っています。

こういう人間にとっては、何々を描いてくださいという依頼があるイラストレーターは、職業としてとても合っていると思っています。

しかし、たまには個展もやらなくてはいけないし、仕事以外で個人的な作品も作りたいという思いもあります。そんなとき常にぶつかるのが、絵を描きたいという思いはあるのだけど、何を描いていいのかわからないということです。

もちろん個展のために、なんとかテーマを決めて描くことはできます。その場合、テーマに合わせて構想を練り、資料を集めてサムネールを作り、いろいろ検討を重ねて絵作りをしなくてはいけません。とはいえ、こういうことは普段仕事で散々やっていますので、やろうと思えば問題なくできます。

できますが、そういう面倒なプロセスを飛び越して、描くべき絵の内容が天から降りてきて、それが頭の中に見えていて、あとはイーゼルに置いたキャンバスに近づいてその絵を描くだけだったらどれだけ良いか。見えている絵を完成させるべく、絵の具を混ぜて筆でキャンバスに乗せていく、そのプロセスを純粋に楽しめたら。

これがまさに、絵を描きたい気持ちだけが先走るけど、何を描いていいのかわからない人間の本当の本心です。

天から降りてくるビジュアルを得る方法が一つあって、それは見た夢を描くことです。ただし、これは夢でかなりはっきりと具体的な場面を見る必要があり、あとは忘れないようにすぐスケッチをしておかなくてはなりません。実際、夢はけっこう曖昧なことが多いので、映画のように臨場感のある場面が得られることは稀です。(人によるかもしれませんが)

それ以外の方法としては、静物画のように何か手近な物を見たまま描いたり、植物や花を見たまま描いたり、風景を見たまま、もしくは写真に撮ってそれを見て描いたりすることです。

こういうのは練習としては良いですが、あまり興味が持てません。もっとも目の前にあるオブジェや花を見たまま描く必要はなく、モランディのように独特の静物画として異化させるのもありです。ただし、簡単ではないでしょう。ちなみにモランディは僕が最も好きな画家の一人です。

つづく

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