どうでもいいけどパース
自分が絵を描くときに、パース、つまり遠近法的な正しさを追求するかどうかですが、実際のところある程度は意識します。
ただ僕にとっては、遠近法的には間違っていても、そんなに違和感がなく、なんとなく正しそうに見えればいいというのがゴールなので、水平線を決めて消失点からたくさんの線を描いたりしてチェックすることはほとんどないです。自分の性格上、どちらかというと正しそうな方向に近づけてしまうのですが、むしろ遠近法が滅茶苦茶だったり、あえて違和感を作っていたりする絵のほうが面白いとも思います。
いきもの特急カールという絵本の絵を描いていたときのことです。乗り物にはいろいろあれど、列車というのは細くて長くて、いろいろな意味で描くのが難しいなあと思っていました。特に遠近法的に違和感なく場面としてのシーンに収めるのは難易度が高いと感じていました。
カールを描いているときも、パースの線を引いてチェックしたりはせずに、そこはまあ適当にこなしてました。あまり真面目にやりすぎると、ただでさえキッチリ描きすぎの絵が余計かたくなってしまうし、絵本だし、適当であるくらいがちょうどよかったのは確かです。
ただ、上の絵のように一両の客車を描いたとして、その奥につながる二両目はどのくらいの長さに見えるべきなのだろう?とはよく考えていました。勘で描いてもけっこう違和感なく見えるとは思いますが。
そういうときに僕が実際にやっていたのは、まず上のように客車をコピーし、
左の車両の右奥の線(グリーンの線)と右の車両の左手前の線(グリーンの線)が、だいたい同じ長さになるように、
右の車両をPhotoshopで縮小し、
連結させるというものでした。どうでしょうか。別に違和感ないですよね。でも遠近法的に解くとどうなるのだろうとふと思いました。
そこでやってみました。
茶色の面の上下の辺を延長し、収束した点が消失点(Vanishing Point, VP)です。
VPを通る水平な線を引きます。これは水平線といいますが、実際は自分の目線の高さを表す線なのでEye Level, ELといいます。
いちおうグレーの面に対しても辺を延長してみるとかなり遠くにVPを得ます。
次に奥の二両目が始まるところに点を打ちます(ライトグリーンの点)。車両と車両の間に少しだけ空間を空けてあります。
次にEL上の任意の場所に点を打ちます。これはReference Point, RPで基準点と呼ぶのでしょうか。二両目が始まるところに打った点とVPの間で、EL上であればたぶんどこでもかまわないと思います。
左のVPから延びてきている線を延長します(ライトグリーンの矢印)。
RPから二両目が始まるところに打った点を通る線を延ばしてきます(ブルーの線)。
ブルーの線と1の線が交差する点からVPまで線を引きます(マゼンタの線)。
RPから、マゼンタの線が2の線と交差する点(矢印の点)を通る線を延ばしてきます(二本目のブルーの線)。
1の線と2の線の間にあるマゼンタの線の部分(a')が、遠近法空間での一両目の長さ(a)と同じ長さということになります。
a'を二両目が始まるところに打った点にあてはめてみると、a"になり、これが遠近法空間での二両目の長さです。
つまりこのようになります。
最初にやったPhotoshopで縮小した車両よりだいぶ短く見えることになるようです。
もう少し見下ろした角度でやってみるとこんな感じです。
まあ結局どうでもいいってことではあります。それと、この図を描いていて思ったのですが、本来線や点には面積がないわけですから、描いたパースの線は微妙な太さの違いによって、いくらでも誤差が出ることです。とくに浅い角度で交わる線の交差点がどこなのかと言われると、だいぶ幅があるし、ちょっとズレただけで大幅に結果が違ってくることもありそうです。
今回はこれで全文です。おわり
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