ラフのほうがいいよ/ラフスケッチを超えられない問題
イラストレーションの仕事において一般的な工程としては、アイディアを考える、ラフを作る、仕上げる、という感じで大まかに分ければ三段階あると思います。この3つの段階の中で、どこの工程が好きかというのは人によってかなり違うようです。仕上げ作業が好きという人は多いのではないでしょうか。
僕の場合は、アイディアを考えるのが一番好きで、次がラフ。仕上げる作業はどちらかというと辛いです。実際に絵を描く作業より、頭の中であれこれ考えているほうが好きという、これって絵描きっぽくない気はしてしまいますが…。
しかし、これは仕事としてのイラストレーションを描くということにおいてでありまして、油彩で自分の絵を描くときは、何故か仕上げ作業が一番好きだったりするので、どういうことなのでしょうか。デジタルとアナログの違いなのか。
まあ、それはいいとして、仕事をしていると、仕上げた絵がラフスケッチを超えていないと感じることがよくあります。ラフを作っているときは、力が入っていないので、良い感じにゆるい絵が描けて、そこにクライアントからオーケーが出ると、もうひと仕事終わったような気になって安心するのですが、いざ仕上げ作業に入ると、自分の性格がそうさせるのか、なんでもきっちり描きすぎてしまいます。
自分でも描きすぎていることは意識しているので、仕上がりが近づくとラフはどんなだったっけと見てみるのですが、そこでラフのほうが全然いいじゃん!どうすんのこれ?と愕然とするのです。
こうなるとラフに戻ってやり直します。非常に時間の無駄です。
僕は、本番の絵とは別にいわゆるラフスケッチというものは作りません。常に本番の絵を描き始めてしまって、その途中段階のところをラフと称してクライアントに送っているだけなのです。というのも、ラフはラフとして別に作り、それをもとに下描きを描いてトレースし、清書するようなことをすると、とにかく絵が硬くなってしまうからです。
そしてトレースという作業がとても嫌いです。もちろん仕事によってはトレースを活用することはよくあるし、全く否定はしません。むしろ自分で撮った写真をトレースするのは全然オーケーなのですが、自分の下絵をトレースするのが嫌なのですよね。
なのでライトテーブルはスライド写真を見る以外には使ったことがありません。油彩を描くときの下絵は、もし自作カーボン紙を使うとしても、あたり程度に適当にやるか、グリッドで描くか、直接筆で描くかです。
しかし、そんなこと言って最初から本番を描いているはずなのに、結局硬くなってるじゃん、ということです。それで何時間も費やした仕上げ作業を無駄にして、また戻れるところまで戻って描きなおしたりするのです。
だから完成作品がラフを超えられないということはよくあるのです。ただし、これはあくまで自分の中で判断していることであって、クライアントから「ラフのほうが良いですね」と言われたことはありませんでした。
ところが一度、それが起こったことがあったので報告します。
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