エスカレートする味噌汁
だいぶ前の話であるが、あるときからうちのアトリエでは、糖質制限ダイエットが流行り出した。誰かが何かの本を見て浅知恵を仕入れてきたのだ。
簡単に言うと糖質を制限するということはつまり炭水化物を制限するということだ。もちろん甘いお菓子などは論外である。
僕はもともとコシヒカリのおかずにササニシキというくらい炭水化物が好きだったので、これはかなり思い切った方向転換であった。米、麺類、パンなどとの別れは何か人生の拠り所を失ったようで、このまま生きていけるのかどうか、禁断症状で絵筆を持つ手が震え(実際はタブレットとペンだが)、もう何も描けなくなってしまうのではないかと断腸の思いだったが、慣れてしまえばなんということはなかった。
冷蔵庫に比較的高い頻度でキープしていたものに、納豆と生卵がある。いままでならば当然それらはご飯にかけて食べるというはずのものであったが、あるときからうちのアトリエでは炭水化物であるご飯を食べなくなったため、納豆をかいて(辛子とタレも使用)そこに生卵を混ぜ、それをそのまま飲むという納豆卵ドリンクなるものが登場し始めた。慣れてしまえばこれも病みつきになった。今ではむしろ飲まないと不安だ。
糖質、つまり炭水化物を摂らないようにするとは、つまり肉を多く食べるということでもある。アトリエに電子レンジはあるが、フライパンなど火を使って調理をする設備はないし、それほど肉好きでもない自分にとって、肉料理はなかなか難しい。というわけでもっぱら豆腐やオクラ、トマト、ベーコン、舞茸、たまに鶏肉などをルクエでチンしたものや、インスタント味噌汁を食べていた。
あるとき、納豆卵ドリンクをそのまま飲まずに、味噌汁に入れたら美味いのではないかと考え実行してみたところ、なかなかいけた。そんな日々を過ごすうちに、チンした豆腐や野菜、ベーコン、鶏肉なども全部味噌汁に入れたら美味いのではないかと思うに至り、実行してみるとこれがまたなかなかのヒットであった。こうして味噌汁はどんどんエスカレートして行った。具の種類と量が増えるに従って器の大きさも一回り、二回りと大きくなり、最初は味噌汁用の普通の椀だったものが、今ではラーメンを食べるときに使う大きめのドンブリに成長したのだった。
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