壁があるから恋って燃えるんじゃない!?
ダムダムッ
ザシュッ!!
部員:〇〇ナイッシュー!
〇〇:おうっ!
顧問:じゃあ次は休憩5分入れてから3on3!
部員:はい!!
バスケ部の練習に一区切りが付いてベンチに座って一休みする〇〇。
〇〇:ふぅ、、
??:じーー
視線を感じて隣の女バスのコートを見ると、可愛らしい女の子がこちらをじっと見ている。
〇〇:あれ練習中だよな? あっ、ボールが菅原の方に、
ボゴッ
咲月:痛ーい!
??:ほらー!集中する!
咲月:賀喜さんすいませーん!
振り向いて少しこちらを恨めしそうに見ながら走っていく。
〇〇:いや、ボールに当たったの俺のせいじゃないからな?
今ボールが当たったドジな女の子が女バスの部員で後輩の菅原咲月。そして、1ヶ月前に俺が振った相手でもある。
一体何があったのか1ヶ月前に遡って説明しよう。
ボゴッ 咲月:痛っ!
..,...説明しよう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それは新学期始まって早々のこと。
〇〇:放課後屋上に来てください?
そう書いてある手紙が俺の下駄箱に入っていた。
??:ふーん、放課後屋上に来てくださいねぇ?
〇〇:うわっ、びっくりしたぁ。賀喜、驚かせないでよ。
賀喜:ごめんごめん。おはよ〇〇。それ、告白かな?
〇〇:まあ、多分?
賀喜は女バスのエースで同級生。
そして、実は俺が好きな相手だ。
一応俺は賀喜と仲はいいので、一見付き合える可能性はあるかもしれない。
しかし、、
賀喜:でもうちの部活恋愛禁止だから、どんなにいい子でも告白受けちゃだめだからね。
〇〇:受けないって
賀喜:ならいいけど。じゃあ、教室いくね。
これが問題なのである。
ウチのバスケ部は過去に男女間の問題で大変なことになったことがあるらしく恋愛が禁止になっている。
つまり、俺と賀喜は付き合えない。
さて放課後になって屋上に向かうと、そこにいたのは美人な女の子。
〇〇:えっと俺を呼んだのは君かな?
少し緊張した顔で返事をしてくる女の子。
??:はい! 突然ですけど〇〇先輩!一目惚れしました!私と付き合ってください!
〇〇:...えっと...。まず君の名前は?
咲月:あぁっ、言うの忘れてた!私菅原咲月って言います!
〇〇:新入生?
咲月:そうです!今年からこの乃木高校に入学しました!この前覗いた体育館で〇〇先輩を見て一目惚れしました!
〇〇:そっかありがとう。それで告白の返事だけど、ごめんなさい。俺君のこと知らないし、それに部活のルールで恋愛禁止だから。
咲月:えっ! 先輩って確かバスケ部ですよね?
そんなルールあったんだ...
〇〇:新入生だから知らないのか。まあ、そういうわけだから君とは付き合えないから。
咲月: でも、諦められないです!隠れてすればいいじゃないですか!
〇〇:いやそういう問題じゃなくて。
咲月:なんでですか!?恋愛禁止だから恋愛したくなるんじゃないんですか!?
〇〇:まぁ、それは確かに。
つい納得してしまった。
じゃあもしかして賀喜に告白したら...。
いや、ないない。賀喜、真面目だしなんなら顧問に告白のことを言われてやめなきゃいけなくなるまである。
〇〇:やっぱないな。
咲月:...今、他の人のこと考えてましたね?
ふいに核心をつかれてドキッとした
〇〇:...べつに?
咲月:もしかして...その人が好きだから付き合えないってことですか!?
この子、ドジっぽいのに意外と鋭い!?
〇〇:そうって言ったら、諦めてくれる?
咲月:やっぱり! いるんですね?誰ですか?
もう、平穏に話を終わらせることは無理だと悟った〇〇は、
〇〇:もう部活始まるから!それじゃ!
無理やり終わらせることを選んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その日の部活中。練習の休憩時間に賀喜が話しかけてきた。
賀喜:ねぇ〇〇。ちょっと相談があるんだけど。
〇〇:ん?何?
賀喜:今年新入部員少なくてさ。勧誘とかした方がいいのかなぁ?
〇〇:んー、まだ1ヶ月も経ってないしまだ大丈夫じゃない?チラシとかは貼っといた方がいいとは思うけど。賀喜絵上手いし作ってみたら。
賀喜:それいいね!そうしよ。
すると、賀喜が体育館のドアの方を見て、
賀喜:ねぇ、あそこから覗いてる可愛い子って知り合い?
と言った。
指を指している方を見るとさっき振った女の子がこっそりこちらを覗いている。
〇〇:...さぁ?知らないな。ちょっと聞いてみる。
ドアの方に歩いて向かうと、こっちに向かって手を振ってくる。
咲月:〇〇先輩!お疲れ様です!
〇〇:えっと、菅原さんだっけ?なんでいるの?
咲月:それはもちろん先輩の勇姿を目に焼き付けるためです!
〇〇:こうやってずっと見られてると付き合ってるって勘違いされちゃうから嫌なんだけど...
咲月:確かに。先輩に迷惑はかけたくないです...。
どうしましょ?
〇〇:さっきも言ったけど付き合う気はないから、諦めてもらっても?
咲月:それは嫌です!
〇〇:えぇ...
咲月:...あと、先輩。もしかしてなんですけど、先輩が好きな人って今話されてた方ですか?
ぎくっ...。やっぱり勘は鋭い。
〇〇:...まぁ、そうだよ。
咲月:やっぱり!そうだと思ったんです!話してる時すごいいい顔してて、すぐに分かりました。
めっちゃきれいな方ですね!
あ..でも〇〇先輩のことは諦めないですからね!
〇〇:なんでそんな諦め悪いんだ?
咲月が返答しようとしていると、
賀喜:〇〇どうしたの?話長くない?
と賀喜が〇〇が困っていると思って入り口の方に来た。
〇〇:あぁ、賀喜。何もないよ...
遥香:ならいいけど。で、この子は?
咲月:初めまして!1年の菅原咲月っていいます!
咲月:女子バスケ部に入部希望です!
〇〇:はぁ!?
賀喜:入部希望者なんだ!なんだ〇〇早く言ってよ!じゃあ部の説明するから、こっち来て!
入部希望者を求めていた遥香はるんるんで行ってしまった。
咲月:はい!
そして賀喜についていく咲月。しかし突然立ち止まると、
咲月:私、壁がある方が燃えるので!〇〇先輩のこと諦めないですから!
そう言ってまた遥香の方に向かって行った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ということがあったのである。
あれから2ヶ月。菅原とよくしゃべる程度には仲良くなったが、別に何か変化があったわけでもない。
ふと女バスのコートをのぞくと、菅原がフリーのレイアップを外していた。バスケ経験はなく運動神経も別によくないのに、女バスに入った菅原はとても苦労している。
別にバスケ部に入らなくてもいいんじゃないとも思ったのだが、
菅原いわく、「賀喜さんと同じ部活の状況で勝たないと意味ないので!」らしい。
その日の部活も終わり、帰り道。居残って練習していた〇〇に一緒に帰る相手はいない。
一人で悲しく駅まで歩いていると、後ろから足音が聞こえる。
咲月:〇〇先輩〜!
〇〇:おぉ菅原。 あっ.そこ石、、
どてん!!
咲月:痛た...
〇〇:大丈夫か?
咲月:はい...。
立ち上がって膝についた汚れを払いながら、
咲月:前に先輩が見えたので走ったらこけちゃいました、えへへ。
〇〇:気をつけろよ?運動した後なんだし。
咲月:以後気をつけます...。
しゅんとしながら言う菅原を少しだけ、ほんの少しだけ可愛いと思った。
駅までの道を二人で話しながら歩く。
〇〇:それにしても菅原帰るの遅くない?女バスの練習、ウチとおんなじくらいの時間に終わってたと思うんだけど。
咲月:一回帰ったんですけど、忘れ物しちゃって。戻ってもっかい帰ろうとしたら〇〇先輩がいました。今日の運勢は大吉かもです。えへへ...
笑いながら言う咲月。
〇〇:ボールが頭にあたったり、こけたりしてるけどな。
咲月:ちょっと〜、それは言わないお約束です!
そんな他愛のない話をしていると、
咲月:先輩にお願いがあるんですけど、今週の日曜日って時間ありますか?
〇〇:まあ、練習もないし暇だけど。どうかした?
咲月:実は私まだバッシュもってなくて。買いに行きたいんですけど、どうすればいいかわかんなくて、先輩に教えてもらおうかなって。
〇〇:賀喜とかに頼めばよかったんじゃない?
咲月:賀喜さんは日曜予定があるらしくて、お願いします!
〇〇:誰かに見られて付き合ってって思われたら面倒だしなぁ。
咲月:そこをなんとか!
〇〇:えぇ...
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〇〇:結局、きてしまった。
日曜日。〇〇はスポーツ用品店も入っている少し遠くのショッピングモールに来ていた。
〇〇:少し遠くのショッピングモールだったらバレないですから!って粘られてつい。俺はなぜ断らないんだ。
そんなことを考えていると、
咲月:〇〇先輩〜、おはようございます!
〇〇:...お、おぉ、菅原。おはよう、その服かわいいな。
いつもの制服と違いかわいらしい服装で現れた菅原に、少しドキドキしてしまった。
咲月:本当ですか!?よかった、この服着てきて。初めて先輩にかわいいってもらえました。
俺は恥ずかしさを隠したくて、
〇〇:ほら、買いに行くぞ!
と菅原をおいて先を歩いた。
咲月:あっ、はい!
スポーツ用品店に着き、
咲月:へぇ、こんなに種類あるんですね。
〇〇:合う、合わないあると思うし、店員さんに聞いて、試し履きしてみた方がいいと思うよ。
咲月:分かりました!
すみません、店員さん!・・・
咲月がバッシュを探している間、〇〇も自分が興味ある所を眺めている。
〇〇:へぇ...。これいいな。かっこいいし、機能性も良さそう。
店員さんを呼んで試し履きをしてみても
〇〇:これめっちゃ合うな。
とはいっても今日は買うつもりもなかったので棚に箱をもどした。
咲月:先輩、バッシュ買い終わりましたー。
どうやら店内を回っている内に買い物が終わったらしい。
〇〇:どう?いいの見つかった?
咲月:はい!ばっちしです。
〇〇:よかった。じゃあ昼食べるか。
咲月:先輩は何も買わなくていいんですか?
〇〇:今日は買う予定なかったし、いいよ。
咲月:ふ〜ん。このバッシュとか先輩に合うと思うんですけど。
そう言ってとったのは〇〇もかっこいいと思っていたバッシュ。
〇〇:.......。やっぱ気変わった。このバッシュ買うわ。
棚から箱を取り出してレジにならぶ〇〇。
咲月:えっ?試し履きとかしなくていいんですか?
〇〇:俺もさっきこれいいなって思って試し履き一回したから。菅原もいいって言うなら買おうかなって。
すると菅原が少しにやけだして、
咲月:えへ...〇〇先輩と好みが似てる...。これはもはや運命といっても。
〇〇:やっぱ買うのやめよっかな?
咲月:あぁ、嘘です!嘘です!買いましょ!
そんなちょっとしたけんかをしていると、お店の外から声を掛けられた。
賀喜:あれ〇〇?咲月ちゃん?何二人でいちゃついてるの?
〇〇・菅原:あっ...
見つめ合いながら固まる二人。
〇〇:よ、よう賀喜。咲月:こんにちは...賀喜さん。
賀喜:おはよう。何?二人でデート?
〇〇:いや菅原がバッシュ買いたいって頼んできたから。
菅原:賀喜さんに日曜日暇ですか?って聞いたじゃないですか!本当は賀喜さんに頼もうとしてたんです!
遥香:なるほどあれね!よかったー、二人が付き合ってるのかと思った。
〇〇:そんなことない。ぜんっぜん付き合ってないから。 それより賀喜は何してるの?
遥香:友達と遊ぶ予定だったんだけど、寝坊しちゃったみたいで。一人で回ってた。
それより二人、暇なら一緒にご飯食べない?
〇〇:いいじゃん。食べよ!菅原もいいよな?
咲月:はい。
会計を済ませて、ショッピングモールの中にあるフードコートで思い思いの物を注文し食べる3人。
〇〇:それ何?
遥香:これ?うどんについてきたとり天。
〇〇:うまそー
遥香:なら一口いる?はい、あーん。
〇〇:モグモグ。うまっ!
遥香:私もそのお肉ほしい!頂戴!
〇〇:じゃあ一切れ。これあげる。あーん
遥香:はふ、、モグモグ。おいしい!
咲月:せ、先輩!私も一口欲しいです!
〇〇:えぇー。やだなー。
咲月:なんで私はダメなんですか!
〇〇:ふふっ、冗談だって。ほらあーん
そう言って菅原の口の中に肉を放り込む。
咲月:ほっほふ、、あふい。でもおいひいです。
〇〇:それはよかった。
そういえば賀喜。昨日のアニメ見た?
賀喜:え、まだ見てない!ネタバレしないで!
〇〇:早めに見た方がいいよ!めっちゃ面白かった。
咲月:むぅ...
ご飯も食べ終わってからも近くの椅子に座りながら〇〇と賀喜はアニメの話をしている。
〇〇:で、あのシーンがもうめっちゃかっこいいよな!
賀喜:わかる!あそこに居たら私絶対惚れてる。
賀喜:あっ、友達来たみたい。じゃね!
〇〇:じゃね
賀喜は去って行った。
〇〇:じゃあ菅原こっからどうする?ゲーセンでも行くか?
咲月:ずるいです...。
〇〇:え?
咲月:ずるいです先輩は。デートに誘ったらOKするし、可愛いっていってくれるし、ちょっと運命感じちゃうようなことを言うのに。先輩は賀喜さんのことが好きで...。悲しいです。
〇〇:それは、ごめん...
咲月:今日はもう帰ります...
そういって菅原は帰って行った。
どこかに一人で行く気も起きず、ショッピングモールから帰りながら〇〇は思う。
〇〇:俺はなんて最低なことを...
菅原にああ言われて初めて気づいた。俺はずっと菅原のことを弄んでいたんだ。
ふと菅原の言葉を思い出す
咲月:“私、壁がある方が燃えるので!”
〇〇:菅原は壁を越えようとしてたんだな...
なのに俺は恋愛禁止というたった1枚の壁すらも破ろうとしていない。菅原はこんなに気持ちを伝えてくれているのに。
菅原の顔が頭に浮かんでくる。
かわいくていじりがいのある後輩。......
そして〇〇は腹を括った。
〇〇:告白しよう
〇〇は賀喜に連絡をした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
次の日の放課後、〇〇は屋上にいた。
〇〇:ふぅ...
告白する側は初めてなので緊張する。
ガチャ...。屋上のドアが開く音がする。音が鳴った方を向き一言。
〇〇:来てくれてよかった。
菅原。
咲月:どうしたんですか?先輩。屋上に呼び出して。
〇〇:菅原に話したいことがあるんだ。
屋上の手すりに手をかけながら話す。
〇〇:俺好きな人がいるんだ。
咲月:賀喜さん...ですよね。
〇〇:その人はさ、女バスに入ってて、かわいくて、ちょっぴりドジなんだ。
咲月:賀喜さんってちょっとドジですもんね...
〇〇:その人が俺に大切なことを教えてくれたんだ。だからそれ聞いて俺も気持ち伝えようと思った。
咲月:賀喜さんに告白するんですね...
そして大きく息をはいて一言。
〇〇:菅原、好きだ!俺と付き合ってください!
咲月:えっ、 えぇー!!なんで!賀喜さんじゃないんですか?
〇〇:昨日菅原に言われてずっと考えてた。それで気づいたんだ。菅原と一緒にいると素でいられるし、誰といる時よりも笑ってる。
何回でも言う。俺菅原のことが好きだ。付き合ってほしい!
咲月は泣きそうになりながら、
咲月:はい!こんな私ですが、お願いします!
そう言って勢いよく抱きついてくる
咲月:先輩ずるいです!完全に振られると思ったじゃないですか!
〇〇:ごめんって。
咲月:一緒にいてくれなきゃ、許さないですから!
話すたびにどんどん好きが溢れてきて、菅原の華奢な体をより強く抱きしめる。
そして時間が経ち、
咲月:そういえば先輩。恋愛禁止のルールってどうするんですか?
〇〇:ああ、それならそのルール無くそうと思ってる。
咲月:えっ?
〇〇:昨日賀喜に連絡したんだ。菅原のことが好きだから、恋愛禁止のルールなくすのに協力してほしいって。すぐOKしてくれたから、頑張って無くすよ。
咲月:はい!
その時の菅原の笑顔は何よりも美しかった。
それから1ヶ月がたち。恋愛禁止のルールは顧問も時代錯誤な規則だと思っていたらしく、案外簡単になくなった。
なので俺と菅原、、、いや咲月は大っぴらにきちんと付き合っている。
ザシュッ!
咲月:ナイッシュー!!先輩かっこいいー!
〇〇:咲月は練習に集中しろー!!
部員:お熱いですねぇ
〇〇:うるさ
部員:羨ましいなぁ。俺も賀喜さんに告ろっかな?
〇〇:お前には無理だ。
いじられるようになってはしまったが、俺は今幸せな生活を送っている。
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