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【短編】住宅デー

「ここ、コンセントあった方が良さそう」
「キッチンはアイランド?それともカウンター?」
「床暖房ってどれくらいかかるかな」
 ずっと貯金してきた頭金をいよいよ使う段になった。なんとか希望に近い条件の土地を見つけ、あまり広くないながらもマイホームを持てる事に。じゃあどんな家がいいかというのを、希望をとりあえず出しまくっているわけで。
「窓枠の所に座って外眺めたりしたいな」
「仕事部屋って作れそう?」
「お洗濯ルームがあると嬉しい」
「自転車置き場大事」
「子供部屋!欲しい!」
「トイレと洗面は二か所?でもなぁお掃除が大変よね。トイレだけ二か所かな」
「収納は沢山」
「吹き抜けって寒いかな、寒がりだから暖かい方がいいなぁ」
 次から次に出てくる希望は止め所を知らない。
 でもこれは一生住む家だと思えば妥協は禁物。ずっと心地よく過ごすためにはまぁもちろん金銭的な問題もあるけど、でも些細な違いなんだったら希望を取り入れていきたい。
「ケティの通り道は?」
 ケティというのは飼い猫の事。うちは珍しく動物オーケーのアパートだったから、猫を飼っている。確かに、ケティのための通り道は必要かもしれない。あと爪とぎにいい場所も。
 棚は作り付けか、それとも市販品を買ってくるのか。ベッドの配置は、テレビの居場所は。
 決める事が無限に出てきてとてもじゃないけど、一週間やそこらじゃ決めきれない。なんたってフローリングの床材や壁紙の色と材質も決めなくちゃ。屋根だって何色がいいとか、外壁もどんな塗料にするかとか、本当に細かくて色々あるんだ。
 でも、それを一つ一つ決めていく行程が、この上なく楽しい。
 希望を出しているみんなの顔は、誰一人としてイヤそうじゃなくて、ウキウキワクワクしている。この調子でリクエストを出していって…もしかしたら100を越えるかも?どれが取り入れられるか、住宅メーカーさんと相談しながら、じっくり決めて行けばいい。
 まだまだ始まったばかりのマイホーム建築計画は、期待と楽しみで一杯だ。


 本日は「住宅デー」だそうです。今日は何の日~毎日が記念日~様より。

 住宅を建てるのはとても大変だと知人から聞いた事があります。それこそ、間取り、壁紙の材質に、コンセントの配置。階段の位置や段数など等々……決める事が無数にあって、もうしんどいよーなんて愚痴をこぼしていたのを思い出します。それでもそう言う彼女の声はどこか弾んでいたなぁなんて。
 建売やマンション売買ではこういった決め事はあまり無いのでしょうから、マイホームをイチから作る方々はそれはもう楽しいんじゃないかな、なんて勝手な推測です。たまにドキュメンタリーとかやってたりしますよね。猫ちゃんの専用トンネルがあったり、掘りごたつが大好きだから、専用の床下穴があったり、狭小住宅のバラエティだったりとか。そんな工夫が、とかああこの間取り楽しそう、とか、我が家はもうあるために、よそのお宅の事情を、わくわくしながら拝見しています。

小説を書く力になります、ありがとうございます!トイ達を気に入ってくださると嬉しいです✨