【短編小説】なんもしない日
だらーっと四肢を投げ出して、天井を見上げて、ぼーっとした時間を過ごす。
ベッドの上でごろごろしている様はまさに「なんもしない」だ。
思考も、まぁ、多少こうやって考えてはいるけど、結構ぼんやりしてる。あ、虫がいた。後で外にだしてやろう。窓開いてるから自分で出てってくんねぇかな。
仕事でミスして、落ち込んでる、といえばそうなのかも。
一文字ミスっただけ。でもそのミスが、発注数の間違いに繋がって、大量の誤発注を捌くことになり、結果かなりの損失を招いた。
深夜残業の眠い頭でそんな事やらせてっからだよ、ってのは言い訳になんのかな。駄目なんだろな。
でもさ、まじで眠い状態でパソコン入力なんかしててみ?霞む視界とぼんやりした頭で、なんとなく覚えてるキーを打ち込むとかそんなもん打ち間違いだらけになるだろうよ。
そこをしゃっきり起きろって言われっけど、じゃあお前、毎日家に帰れば0時越え、そっからなんやかんやして寝る頃には2時。からの6時半起きとか明らか睡眠足りてねぇんだわ。
たまの休みだって、気持ちは色々遊びてぇのにさ。実際はこうやってなんもできなくて、疲れ切った身体と頭をぼーっとした状態で休ませて、気が付けば半日終わってる。
はぁーあ。
ただまぁ、こうやってなんもしないでぼーっとしてる時間もキライじゃないんだよな。
なんもせずにまどろむ時間って贅沢じゃね?
別にベッドの上に限ったことじゃなくてさ。
街中で、ベンチに座ってたりカフェで飲み物片手に座ってぼーっとしたりしてさ。
そん時に、あ、あのおねーさんキレイとか、おにーさんお洒落だねとかさ、ちっちゃい子が危ない事してんのに気が付いて止めに入ったりとかさ、色々気が付くじゃん。
自分なんかがここに居ていいのかって思うときがたまにあるけど、たまにそうやって人の役に立つ時があったりさ、ただ見てただけの状態から、落とし物拾っただけ、転んだちびっこを抱え上げただけとかでも、ありがとうって言ってもらえたりすっと、ここにいていいんだなって思えるんだわ。
なんもしてない。
でも、間接的に何かしら役に立ってる、ってこともある。
なんもしてないつもりでも、相手にとってはなんかした事になってんだろね。
ま、ベッドでごろごろだと誰にもなんもしてないけど。
ああでも、自分を休ませてやるってことは、一応仕事をするための身体にもどしてるってことで、つまりは皆の役に立ってんのかも?
そういうことにしといて。
……そろそろ、まぶたが重い。
もっかい寝よ……
本日は「なんもしない日」と「ポンコツの日」だそうです。日本記念日協会様より。
SNSで有名な「レンタルなんもしない人」さんからの記念日だそうですよ。『何かしたから評価されるのではなくて、なんもしないことに価値があると再認識できる日とするのが目的』なんですって。
なんもしない、というのは端からみたら、なにもせずに止まっていて、とか、ただ時間を浪費して、というように見えてしまうかもしれませんが、実際には当人にしか知りえない事情だったり思惑があるんだと思っています。
何かの計画を練っているのかもしれないし、誰かに付き添いを頼まれて一緒にいるのかもしれない。相手がどうしても話したい事があるから聞いてほしい、という場合もありえますね。聞いている本人としてはなんもしてないなと思うかもしれないけれど、相手にとっては話せて、聞いてもらえて、スルーしてもらえて、すっきりできる。
なんもしない日、いいですね。たまには「なんもしない」時間を設けてみてはいかがでしょう。