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2023.05.22 LaLiga第35節 バレンシアvsレアル・マドリー

・はじめに

おはようございます。こんにちは。こんばんは。
シティとのCL準決勝に敗れ、失意の中で臨むアウェーバレンシア戦。
この試合も含めリーガは残り4試合。
優勝の可能性は潰えたものの、何か掴んで来シーズンに繋げられるか。

以下、スタメン。

両チームのスターティングメンバー

前節から中盤3枚の構成は変わらず。
最前線にヴィンゼマを揃え、好調のアセンシオがこの日もスタメンの座を守る。
ヘタフェ戦では前半45分で交代となったメンディがどれくらいコンディションを戻して来れるのかといった点にも注目。
対するバレンシアは4-2-3-1のシステム。
最前線にはカバーニ、左SHには前回対戦時と異なりクライファートが先発。
右SHにはマドリーとバルセロナのカンテラを渡り歩いた経験のある2002年生まれのディエゴ・ロペスが入る。

・試合内容

・継続の中に見えたヴィニシウスの新たなる挑戦

前節から同様この日も両WGを内寄りのエリアでプレーさせるシステムを採用。

マドリーの保持局面概略図

前節左WGで先発し、同じメカニズムの一端を担ったアザールに関しては、現状外レーンでのバリューをあまり出せないからというどちらかと言うとネガティブな理由。
しかし、この日先発復帰したヴィニシウスはそうではない。
事実これまで左WGとして大外レーンで破壊的なプレーを魅せてきた選手。
その選手をあえて内側に持ってきたことは、来季に向けてプレーの幅を広げつつ効力を発揮できるエリアも増やしておきたいというポジティブな理由に感じた。
大外をダイナミックなランニングで駆け上がるプレーに持ち味がある左SBフラン・ガルシアの獲得がほぼ確定となっており、対面の右SBに“ヴィニシウス対策“的に屈強でドリブラーに対して強さのあるSBを置かれるケースも増えてきた。
そんな中でヴィニシウスに内側でのプレーを求めたこの試合の中に来季に向けたアンチェロッティの期待とヴィニシウスの挑戦が見えた。

両WGを内側レーンでプレーさせ、大外をメンディとバスケスに任せるタスク管理も継続。
マドリーのスカッドにおいて、右WGは内側レーンでプレーすることが得意な選手ばかりであるため、大外レーンを上下動できる右SBバスケスの価値が上がって重宝されてきているのもここ最近の面白いポイント。
中盤も同じセットであり、明確な司令塔を決めないユニット構築。
強いて言うならこの中で1番動的なのがセバージョスであり、彼のポジショニングが与える影響が大きいかなというここ2試合の印象。

差異を挙げるとするとこの日はCFを務めるベンゼマのゲームメイク志向がいつもより強め。
サイドやハーフレーンへ流れるいつものムーブに加え、中盤の低めの位置まで降りてボール関与するプレーも目立った。
中盤3枚が引いて受けることで離れがちな前線との間を繋ぐ役目を意識的に果たそうというプレー選択だと推察。

これらを踏まえて改めてこの日のメカニズムを考えると、やはり“最大火力を出せるヴィニシウスへ届ける“という部分に難しさがあったところでピリッとしない前半になったのではないかという見解になる。
カマヴィンガが引いて受けていざ前線へボールをつけようとしてもレーンが被って通しにくい。
また、大外という明確な目的地(狙い所)があったミリトンのフィード先という視点からも、内側に的が動いただけでより微細なコントロールといつもの空間把握にズレを生むことも副次的な難しさだったのではないかと感じた。

前半22分にはヴィニシウスが自陣中央付近へ降りてきてボールを受け、得意の股下スルーから一気に前進するというプレーを魅せるといった新しい可能性を切り開くポジティブなシーンも勿論あった。
結局1試合だけで判断するものでもないのは明らかなので、来季に向けたエースの挑戦を好意的に受け止め、期待も込めて本稿に彼の軌跡を残しておこう。


・親の顔より見た失点

最近怪我から復帰したメンディ。
この試合で喫した失点は「メンディが帰ってきたな〜(涙)」というような失点であった。悪い意味で。

前半32分、ディエゴ・ロペスに決められたシーン。

バレンシア1点目のシーン

クライファートがサイドで対角フィードを受けたところから左サイドの三角形でボールを保持。
ガヤが大外でボールを持ったタイミングでアルメイダが斜めのフリーラン→アセンシオの守備位置をずらす。
その動きで空いたパスコースからペナルティエリア内に潜り込んだクライファートへボールが渡る。
クライファートのグラウンダークロスはファーまで流れ、ボールウォッチャーになっていたメンディの背中側から飛び込んだディエゴ・ロペスが得点。

今季のマドリーの失点パターンが凝縮されたような失点である。
①サイドのユニットで保持された時の1stDFが決まらず後手に回る雑な守備対応
②HS〜ポケットの管理の甘さ
③右サイドから送られてくるクロスに対するメンディの認知能力

これらの要素を全て兼ね備えていたもはや芸術的な一発。

この日喫した失点のように、ポケット攻略やフリーランでのパスコース創出といった安定して効果を発揮できる打開スキームに関しては、現代サッカーにおいて強豪とされるチーム以外でも標準装備しておくという流れ自体進んできている。
それに対する守備を整備できていないのはやはり時代にチューニングが合っていないというか、個の能力に依拠した安定感のない結果につながってしまっている一端を担っているのだろうと個人的には思ってしまう。
あと単純にメンディのこの悪癖はいつ直るのだろうか。


・後半の修正の鍵はレーン問題の解消とオープンゲーム

前半の課題点はライン間を上手く使えないこととレーン交換が難しいこと。
両IHが外レーンで単騎打開できるタイプではないため、両WGが内を取るこの日の構図ではSB一辺倒となってしまう。
前半3枚の中盤構成であるとどうしても後方でのボール保持に傾倒してしまい、どちらかと言うと時間がかかるクローズドな展開になりがちになってしまう。
そこでカマヴィンガを下げてロドリゴを入れ、課題点に対応。
セバージョスを得意の左サイド側に持っていく意図も勿論あったと思う。

早速後半48分のヴィニシウスが自陣から運んでゴール前まで持っていったシーンに代表されるように、オープンな展開の中でスピーディーなカウンターを打ち込むのは1つの狙い。
サイドもヴィニシウス、ロドリゴ、アセンシオ、ベンゼマといった前線の面子でレーンを交換しつつ利用。
単純に前線の駒が1枚増えるため、攻撃に厚みを産むことができていた。
後半50分には降りて受けたベンゼマに呼応するようにヴィニシウス、ロドリゴ、アセンシオの3枚が一斉に裏へスプリントをかけるなど、明確に数とスピードでゴールに迫ってやろうという意識が見えた
更に言うと、序盤でも述べたベンゼマの降りる意識とゲームメイクがここに組み込まれていることも、この試合の文脈からもブレていなかった。

ライン間を繋ぐ選手が少なかった中で、現スカッドにおいて1番その能力に長けるロドリゴを入れて改善を図り、一定の効力は得ることができたが、肝心の得点を産むことはできなかった。

後半65分にはモドリッチとクロースを投入し、攻勢をかけるなどもう一歩ゴールへ歩み寄る姿勢を見せるも結果は0-1で終了。
アウェーで敗北を喫する。

・まとめ

前節をなぞった文脈の中に挑戦と期待を込めた試行錯誤の試合。
ヴィニシウスの内側プレーはまだまだ彼自身と周りの選手たち、チーム全体で更に整備していく必要はあるとは感じた。
しかし、来季想定されるスカッドと現代の潮流を踏まえた中でこの試合のようなトライに舵を切ることは自然で理に適ったものに思える。

また中盤に明確な司令塔を決めない3センターに関しては、現状良い点も悪い点もある。
個人的にはチュアメニにはもっと裁量を与えてみても良いと思っているし、できるポテンシャルも勿論あると信じている。
(なぜあんなに評価低いんだろう...。)

個人的にフラン・ガルシアとベリンガムがいるマドリーを想定した試合だと勝手に感じていたし、現に彼らがいたら上手くいく点も出てきそうな試合だったと思う。
来季が非常に楽しみである。(後者はまだまだ分からないけど)

結果的には0-1を跳ね返すことができなかったのは事実。
残り3試合最後まで走り抜けましょう。

・おわりに

言葉を選ばず言うと消化試合に近い4試合の始まり。
その中で新しい試みがあったのは良かったが、結果としては0-1での敗北。
試行錯誤の過程もファンとしてしっかりと見守っていきたい。

稚拙な文章、お読みいただき誠にありがとうございます。
よければ拡散等していただけますと幸いです。今のところLaLiga全試合レビューするつもりではいます。多分。

それでは!

※画像はTACTICALista様、レアル・マドリー公式様を使用しております。

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