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2024-25レアル・マドリー選手評論-中間報告-

・はじめに

春を迎える前のこのよく分からないタイミングで、世界で1番サッカーが上手い集団を偉そうに評して論じるというあまりにも烏滸がましく野暮なお遊びをやる。

はじめに予防線を張っておくと、本稿はあくまでもこの約半年間に筆者が抱いてきた感情の近似値を羅列するだけの駄文であり、貴方に全てを伝えられているなんて自惚れた思考は持ち合わせていない。
たかだか数十㎠の液晶から放たれるブルーライトで光合成をする悲しき化け物のお前らはその前提が悉く抜け落ちる。
的なんか得る気もない言葉の刃で背中から刺そうとするその気持ちをなんとか堪えて粗があっても一意見として飲み込んでみてほしい。
建設的な議論なら大歓迎、インターネット上で高尚なレスバをしよう。

例によって取り留めもなく書き連ねているため、非常に読みにくいはず。
目次から好きな選手のところだけ読むとかでもいいよ。
なんなら別にここで閉じてもらってもいいよ。

・各選手評

プレータイムやスタッツは2025年3月1日(土)時点のレアル・マドリー公式サイトを参照。(カンテラ組はTransfermarktを参照。)

⭐︎GK

#1 ティボ・ クルトワ

34試合出場(3,060分)35失点86セーブ

“試合開始”。この言葉を聞いた時、貴方はサッカーにおけるどの瞬間を思い浮かべるだろうか。
選手の入場に心を昂らせる時、それとも眠い目を擦らせながら聴くキックオフの笛が鳴る音。
否、マドリーにおけるそれは開始1〜2分で毎度発生する“COURTOIS WHAT A SAVE!”である。

大怪我で昨季を殆ど棒に振ったが、無事今季は開幕からゴールマウスを守る。
そんな我らが守護神が誇る当代随一のセービング性能は今季も言わずもがな。
圧倒的なセービングエラーの少なさ(エスパニョール戦の失点は除きましょう)、前述の開始早々のピンチやここ一番の被決定機もきっちり抑える抜け目の無さ等、試合の流れを壊さないところも彼がNo.1GKである所以。
パンチングも含めてボールを弾く先といった細かいプレーも妥協無し。
彼の異常性は細部に宿るのである。

彼の利き足である左足を切るようにプレスに出る守備も相手チーム視点では既に常套手段となっており、その効力も日に日に増してくるのを感じる今日この頃、右脚で仕方なく蹴らされるボールもラインを割らないぐらいには上達しているが、届ける先が今季は高さが無いロドリゴになっている(か、そもそも人がいない)のは無情。
ビルドアップでしゃしゃり出てくるGKはもはや現代では珍しくないが、GKの根源的な存在価値を唯只管にシュートを止め続けることで証明する選手はやはり圧倒的に魅力的。華。
クルトワが全部止めればチームは負けない、まだまだ縋らせてください。

#13アンドリー・ルニン

9試合出場(840分)12失点24セーブ

クルトワが離脱している間、緊急補強したケパとの争いに勝って飛躍の年にした昨季とは打って変わり、今季はコパ・デル・レイが主戦場に。
クルトワ負傷時のエマージェンシー起用と合わせて少ない出場機会に留まっている。

出場した試合では無難にやれることをこなせてはいるが、守備に課題のあるチームの煽りを受けて8試合で12失点を喫している事実が重くのしかかる。
特に0-4クラシコや、CLの1-3ミラン戦、コパではセルタ戦・レガネス戦両方で2失点等、重要なゲームも含めて大量失点を重ねる試合に拘ってしまっていることは本人にとっても悔しいはず。
しかし、先日行われたコパ・デル・レイ準決勝ラ・レアル戦では怒涛のセーブでクリーンシートを達成する等、やはり実力に疑いの余地はない。
今季の面白プレーとしては、11月のオサスナ戦でCKをキャッチした流れで放ったパントキックからヴィニシウスの得点をお膳立てしたことであろうか。
ルニンの強みはCKも含めたクロスキャッチにあり、被クロス対応が脆いマドリーでも重宝されるべきスキル。
それがカウンターの嚆矢となりアシストまで記録したという事実は非常に大きな意味を持っていたように思う。

昨季の大活躍、そしてマドリーにおける絶妙な立ち位置から、他クラブからの関心の噂が少なからず聞こえてきたが、9月には2030年までの契約延長を発表
クルトワの控えかつレアル・マドリーの守護神という世界で1番難しい役割を無表情でこなしていく強メンタルは我々も見習うべきである。
そのために、まずはSNSで夫の怪しい与ファール判定を擁護する嫁を見つけて日常から精神を鍛えるところから始めよう。

⭐︎DF

#2 ダニ・ カルバハル

11試合出場(878分)1G0A

バロンドールを手にしてもおかしくはないほど自分史上1番輝きを放った昨季から一転、チームバランスの変容に四苦八苦する序盤戦のチームの中で割を食いながら奮闘していた今季の第二キャプテン。
そんな彼が悲劇に見舞われたのが10月のビジャレアル戦。
最終盤のジェレミー・ピノとの接触プレーで右脚の前十字靭帯、外側側副靭帯、膝窩腱を断裂。文字面がグロすぎる、なんやねんこれ。

マドリーの歪な構造を支え続ける外縁的な選手であるが故に、いなくなってからその代えが効かない希少性と重要性を改めて痛感させられるシーズンにもなっているのも事実。
右サイドの守備力に明確な問題があり、やたらと攻撃の左右差配に言及されることが多い現マドリーにおいて、単純な守備能力を頼りにできてなおかつプレーの幅・インテリジェンスを有する彼の全能性は必要不可欠だったように思う。
むしろ今のチームってカルバハル無しでよく耐えてきた方なのかも。

復帰の照準はこれもまた新フォーマットになった6月のクラブW杯のようだ。
果たしてその頃には、噂されているRSB補強候補にも更なる動きがあったりするのだろうか。
カルバハルと比べてしまうとどんな選手の名前を挙げられてもあんまりピンとこないのは僕だけですか。

#3エデル・ミリトン

17試合出場(1,312分)1G1A

昨季は左脚の前十字靭帯断裂によって長期離脱。
守備の要としての活躍を期待された中で迎えた今季だったが、11月のオサスナ戦にて右足の前十字靭帯の完全断裂と両半月板の損傷に見舞われる。
負傷するまでの今季は圧倒的な身体能力と身軽さを活かした守備で広大なスペースをカバーし、第2節バジャドリー戦のアシストのようにロングフィードの精度も健在。
9月末に行われたアトレティコとのデルビでは、伏兵としてボレーシュートで先制点を記録するなど、今季は充実のシーズンになるかと思われた矢先の負傷であった分、余計に悔しさが募る。

今季面白かったトピックはそんなアトレティコ戦に照準を当てたリュディガーとの左右スイッチ策だろうか。
アンチェロッティ独自の楽観的悲観的CB分類論からすると現陣容唯一の楽観的素養を有したCBらしく、相方とのタスクの棲み分けを考えた上で柔軟に立ち位置を変えられるのは信頼の証であろう。

いつか来るであろうリュディガーやアラバの退団後数年間は彼にDF陣の絶対的な軸になってもらわないと困るので、転んでしまった今シーズンをバネに、また何度でも背中で跳ね起きるようにリベンジを果たしてほしい。

#4 ダビド・アラバ

7試合出場(162分)0G0A

399日ぶりにDFリーダーがピッチに帰ってきた
これでもかなり待った感覚があるが、この前戦列に復帰したPSGのキンペンベは709日ぶりの復帰だったらしい、上には上がいるもんである。

復帰後は勝利がほぼ決まっているリード時に少しずつプレータイムを与えて丁寧に慣らしていくフェーズを消化していたが、2月に再度負傷。
フィジカルコンディションがどれぐらい元の水準に戻っているか、そしてラインコントロールの杜撰さが目立つマドリーをどうやって修正してくれるのかをポイントにしながら彼の巻き返しに注目していきたかったが、またも怪我に悩まされる時間が来てしまった。
長い時間をかけ、昨年ミリトンが復帰した時よりも良い感触で復帰プログラムを完了できたとの話もあったようだが、結局再度速攻で怪我をしたので実態が本当によく分からない。
最近またまた戦列復帰を果たし、ジローナ戦では先発出場の機会も巡ってきたが、やはりこの怪我を最後にしてほしいと願うばかりである。

現陣容だと、左利きのCBというキャラクターは貴重。
FKキッカーとしても重宝されるであろう。

何の不安もなく試合に出場させることが可能になりさえすれば重要な戦力になるはず。
(チーム内でも高い給料を払っている選手という事情もあるため、そんな野暮な視点も相まって意地でも戦力化したいのだが、今後の彼の動向は如何に。)
本note、DF陣書いてる間毎選手怪我の話に触れないといけないの飽きてきました。俺は過密日程を許さない。

#17 ルーカス・バスケス

33試合出場(2,170分)2G4A

モドリッチの出場機会も限られ、同じポジションのカルバハルは長期離脱。
そのおかげで腕章を巻く試合も増えたチームの兄貴分バスケス。

相手ボックス内に侵入すればなぜか相手が足を引っ掛けたくなる切り返しが面白いようにPKを誘う。恐らく相手に中指でも立てながらドリブルを仕掛けているのだろう。
半分(半分か?)イジられてる気がする“Cafucas”なんて渾名で讃えられる好調時には、送るべきクロスのコースが光って見えているのではないかとすら思わせる精度の高い必殺クロスでも魅せる。
しかし、元WGらしい攻撃面での仕事人ぶりが光る反面、稚拙な守備対応が今季の彼の評価に暗い影を落としている。
クラシコのvsハフィーニャ、アタランタ戦のvsルックマン等、明らかに質的優位を取られる対面にてんやわんや。剰えDFラインすら揃えられない。見てらんない。
(最近はもう質的優位とか関係ないぐらいの厳しさも否めないが)

現状ではチームで最も不安視されているポジション及び選手である。
しかし、最後の最後、土壇場でカンテラーノ達を頼りにして勝ち取った昨シーズンの栄光に当てられた分、やはり彼のような選手を心の底で信じていたくなるのは私だけだろうか。
巻き返して見せてください、いやシンプルに層が薄すぎるから切実に。

#18 ヘスス・バジェホ

1試合出場(10分)0G0A

CB陣に負傷が相次ぐ苦しい台所事情にも関わらず、この元背番号5が与えられた今季の出場時間はたった10分間。
さて、いつの試合でしょうか。これに答えられる者のみが彼に石を投げなさい。

今季はコパ・デル・レイミネラ戦前の不思議すぎるタイミングでのサイレント離脱や、CBの枚数が足りない状態にもかかわらずアンチェロッティに起用できる選手の羅列から名前をすっ飛ばされたプレカンファレンス等、チームから全く信頼が得られていないことが明らかであり、マドリーのスカッド内では殆ど居場所が無くなっているのが現状。せめてヴィニシウス主催の食事会ぐらいは行っといた方が良かったと俺は思うな。
そんなこんなで、現在は絶賛転職活動中と思いきや、トルコ方面からのオファーを断ったという報道もあり、転職市場が賑わう現代社会でも上手くいってはいないようだ。
歳下のラ・ファブリカ産CB達が徐々にベンチを飛び出してトップチームデビューを果たしていく中、近くでそれをどう感じているのか。
そういえば今年もCLでマンチェスター・シティと顔を合わせることになり、バジェホ1人だけ堂々とシティの選手の間を歩いている例の擦られすぎ画像をSNS上で何回見られるかと期待していたのですが、たぶん3回ぐらいに留まった気がします。

あ、冒頭のバジェホ今季出場試合は9月のアラベス戦です。
当てられた貴方はバジェホ検定1級です、おめでとう。背番号18番を譲...、プレゼントします。

#20 フラン・ガルシア

31試合出場(1,787分)0G3A

短髪で無骨なルックで仕事人のようにサイドを駆ける硬派な男、と思いきや、一転今季は胡散臭い文化人みたいな垢抜けを図るカンテラーノの星。
見た目の変化に反して、そのプレースタイルは変わらず、愚直に左サイドを上下動する脳筋脚力馬鹿っぷりは今季も健在。

昨季のホセルのような明確なクロスターゲットがいない分、全力疾走後に貰えるご褒美スルーパスを受けてから放つクロスに期待値が持てないのは報われない。
しかし、それでもなお走り続けるのがフラン・ガルシアという選手である。
本当に何をモチベに走ってんのか分からないから怖い。狂気。契約条項にスプリント回数とか入ってるのかな。
そんな訳で脚力で試行回数を増やせる分、時折ゴール前でシュートチャンスが回ってくるのだが、毎度シュートが絶望的に下手なのも愛おしい。
勝敗には関係ない状況でそんなシーンが回ってくるのも何か憎めないズルさを感じる。
快足を飛ばした勢いのまま移行できる守備は得意なものの、いざブロックを組んでから我慢比べになる相手RWGとの対人守備では距離感の掴み方があまり上手くなさそうなのがネック。(ex.vs久保、vsジェグロバ)
これから迎えるであろう相手のレベルが上がる試合では受けて構える時間も増えてくる訳で。

最近はカンテラーノがトップチームに絡む瞬間も増えてきている中で、やはりフランのような存在って大きいだろうなとも思う。
カルバハルやバスケスがベテランの域に入っている今、彼らのように長くマドリーに生き残ることができればそれはそれは素敵な話である。

#22 アントニオ・リュディガー

38試合出場(3,180分)2G0A

12月にはザ・ベスト・FIFAフットボールアウォーズのベストイレブンにも選ばれ、充実のシーズンを送った昨季から引き続き、長期離脱をしない鉄人ぶりでマドリーを支え続けた自他共に認める狂人。
ドイツ代表でも副キャプテンに任命されるなど、日に日に彼なりのチームリーダーとしての役割も求められてくる年齢と立場に。
そういう意味でも今夏加入のエンドリッキはリュディガーによく面倒を見てもらっていたらしく、セルタ戦後のインタビューでリュディガーに対して恩義を感じるクソデカ感情を爆発させていたのも興味深い出来事であった。

昨季からの勤続疲労もあるのか、軽率に食いついてしまう守備からスペースを利用されるシーンが散見されるなど、認知・判断・実行の部分で少し陰りが見えるのが気になるものの、現有戦力の守備陣の中ではやはり欠かせない存在。
CKや試合終盤のパワープレー等の場面における単純な高さが足りない現スカッドにおいても貴重。
なんだかんだでクラッチプレーヤーなところも助かる、非常にマドリーの選手っぽくて。
12月のヘタフェ戦ではCK時に相手のニョムにちょっかいをかけていた結果、まんまとPKを誘う、してやったりなプレーも。
ミドルシュートはこのまま決めずに引退する気がする。あと今季は例の走り方も全然見ないよね。

このnoteを書いている間にリュディガーも負傷離脱を経験することに。
明らかにマンマネジメントに欠陥を抱えていた今季のチームの象徴的な出来事になってしまった。
1番の狂人はアンチェロッティだったというオチか。

#23 フェルランド・メンディ

27試合出場(1,975分)0G0A

この世界最高峰の守備的SBの今季前半戦はやはりエンジンがかかりきっていなかったように感じる
CLドルトムント戦では対面のマレンに1G1Aを喫するなど、彼の最大出力パフォーマンスを頼りにしてきたサポーターを満足させられるような守備の絶対的な存在感がなかなか見られない。
そんな調子もあってか、今季は同ポジションのフランとのプレータイムにそこまで差が無くなってきており、アルフォンソ・デイヴィスを筆頭にライバル補強の噂が絶えない時間も過ごした。
しかし、直近の試合を観ていると徐々に守備も向上してきており、大事な試合が増えてくるシーズン終盤戦にかけて上手く仕上げていっているようにも見える。

気の利いたフリーランも彼の魅力であった筈だが、今季は左サイドで踊りまくる選手が沢山いるため、後方支援か誰もいないタイミングで渋々左サイドの幅を取るぐらいに留まってしまっている。
特段クロスが上手い選手ではないが、ブレスト戦で見せた右足クロスが惜しかったこともあり、右足の方が精度保てるのではないか疑惑も。(関係あるのか知らないが、メンディの利き手は右である)
長らくマドリーの左サイドを死守してきた所以であろう地味にプレス回避が上手いSBであることも、最近はよりありがたみが増してきていますね

これからさらに熾烈な戦いが予想される馬鹿新フォーマットCLにて相手の強敵アタッカーを黙らせるバウンスバックに期待。
実際にマンチェスター・シティ戦では2試合連続でスタメン起用されており、やはりこのような大一番で彼の実力と実績は信頼されているのであろう。
関係ないけど、今季マドリーのユニフォームやアパレル関係のモデルをメンディがやってるのいいよね。長い手足と端正な顔立ちが映えてて素敵。

#31 ハコボ・ラモン

2試合出場(102分)0G0A

夏にはアンダー世代のスペイン代表としてU-19EUROを戦い、大会直後にはマドリーの今季の開幕戦となったスーパーカップアタランタ戦にもすぐさま召集。
PSMも含めて大忙しな夏を過ごすなど、フロントからの期待値は高かったはず。
しかし、そこから怪我に苦しみ1月のCLザルツブルク戦でようやくトップチーム公式戦の出番が回ってきた。
リハビリ中は同じく長期離脱をしていた同ポジションのアラバと良い関係性を築いていたようで、2人でCBコンビを組む瞬間があったのは謎の感動があった。

年明けからカスティージャにも戦列復帰しており、3バックの中央で守備力と配球力を活かして好調のチームを引っ張る立役者の1人となっている。
過去には試合中巻いた腕章がずり落ちていたぐらいには華奢な身体は見ていて不安にもなるが、持てるポテンシャルは出場する試合で随所に伝わってくる限り。
1月のビジャレアルB戦ではヘディングから2得点を記録してチームの敗戦の危機を救うなど、196cmを誇るシンプルな高さも魅力的。

先発フル出場を果たしたコパ・デル・レイのレガネス戦ではハンドでPKを与えてしまうなど苦い思い出になってしまったが、それだけで彼を評価してしまうのは本当にもったいない。
そんな彼はマドリーが今夏逃したレニー・ヨロと同世代同ポジション。
今後数年間のサッカー界、05世代ヒョロ長CB界の王として君臨するのはどちらであろうか。
長い目で見守っていく価値がある選手であることには変わりないのである。

#35 ラウール・アセンシオ

25試合出場(1,649分)0G2G

ミリトンの負傷を受け、オサスナ戦で急遽トップチームデビューを果たした紛うことなき将来の世界最高CB候補
その試合で挨拶がわりのロングフィードからベリンガムのゴールをアシストし、完璧な掴みを見せたと思いきや、その後の試合でもアグレッシブな対人性能、どんな快足アタッカーにも走り勝てる脚力を活かしたスペースカバー、ドンピシャのタイミングでボールを刈り取るスライディング、安定したビルドアップ&ボールキャリーで自らの価値証明を果たして完全にファンから信頼を得た。
何よりも異常なのはそのパーソナリティ。
売られた喧嘩は全部買い、ブチ切れマフェオには投げキッスをプレゼントする優しさも垣間見せる。

今やラウール・アセンシオを使わない試合は舐めプだと断言できるほどのパフォーマンスを見せ続けているが、アンチェロッティの気質を捻じ曲げる程には至っていないように見えた。
しかし、2月のマドリード・ダービーで見せたハイパフォーマンスが1つのきっかけにもなったのか、CLマンチェスター・シティ戦では2試合連続CBとしてスタメンフル出場。
特にリュディガーが帰ってきた2ndLegでもチュアメニを中盤に押し上げながらスタメンの座を射止めたことは大きな意味を持つはず。

身長が同じで、血気盛んなメンタルとそのプレーぶりからレジェンドのセルヒオ・ラモスと重ねられることも増えてきた。
将来背番号4番も着けてそう、コラ画像もちょくちょく流れてくるし。
その前にとりあえず次は髪でも伸ばそうじゃないか。ジョアン・マルティネスと合わせてダブルラモスシステムの夢を見よう。

#39 ロレンソ・アグアド

3試合出場(67分)0G0A

8歳から所属するラ・ファブリカを飛び出し、PSM、そしてコパ・デル・レイでのスタメン出場を得て、ラス・パルマス戦、バジャドリー戦でも少しずつプレータイムを稼いだマドリー古参SB
実を言うと、現在のカスティージャには絶妙に彼がハマりきるポジションがないため、ベンチで少し暇を持て余す時間も多少存在しているのが下部組織での彼の現状である。(年齢的にも彼より年下の選手達がハイレベルな底上げを図ってくれているのもある。)
そのおかげもあって継続的にトップチームにも招集され、薄いRSBの層を補強しながら今季の時間を過ごすことに。

尖った能力はないが、SBとして全体的にバランスの取れたパラメータを持ち、ユースの選手がトップカテゴリーにぶち込まれた時に懸念されるフィジカル面にも比較的不安はない。
機を見た攻撃参加でアクセントを加えに行く感覚は彼の武器で、コパ・デル・レイのミネラ戦でもゴール前で惜しいシーンを作った。
利他的に大外レーンと一つ内側のレーンを上手く選び取りながらポジショニングできる賢さと器用さも持ち合わせていることも証明済み。
上述のミネラ戦でのプレーぶりからも、せっかく呼んでるんだからもう少しトップで出場機会を与えてもよいのではと思ってしまう。
アセンシオに無理矢理やらせるぐらいなら尚更。

年々デビューの年齢が下がってきている昨今のサッカー界では彼は遅咲きの部類に入るのだろうか。
ここに至るまで長きに渡る時間を白いユニフォームを着ながら我慢してきた分、彼のキャリアが報われて幸せになってくれればラ・ファブリカファンからしても本望であろう。

#43 ディエゴ・アグアド

1試合出場(90分)0G0A

緊急招集カンテラーノCBコレクションにて、突如白羽の矢が立ったサプライズ枠が2006年生まれのディエゴ・アグアド。

主戦場はアルベロア率いるフベニールA。
そこでは左利きCBが飽和気味のチーム構成の中で、彼も左利きながら右CBを器用にこなしつつ、アルベロアの保持型サッカーの根幹を支えている。
ボールを持った際の落ち着きと、ハイラインの強気な守備構造の中でも要所を抑え切ることができるクリティカルな守備が魅力。
まだまだ幼く身体の線が細いため、トップカテゴリーで完全な戦力になるには時期尚早感が否めないが、この経験は今後の彼のキャリアにとって大きな助けになるはず。
度々カスティージャにも招集されており、試合終盤の時間など、上のカテゴリーでも少しずつプレータイムを得ることができている。
とりあえず目下の目標はUEFAユースリーグを戦うフベニールAを引っ張っていくことだろうか。(こっちの大会も皆観ようね。次戦のAZ戦は絶対アツい試合になります。)

最近はまた新たに左利きCBのラミニ・ファティがフベニールAに加わったことで、今後もRCBとして器用な立ち回りを求められそう。
左利きCBに異常な執着を見せるPSGルイス・エンリケ監督の目に止まるのも時間の問題かもしれない。
恐らく現時点でもベ◯ルドより良いCBであることは確かだ。

⭐︎MF

#5 ジュード・ベリンガム

36試合出場(2,947分)11G8A

昨季LaLiga MVPの2シーズン目となる今季は前途多難だったように思う。
中盤のバランスを探る中で昨季のような自由が与えられず、右サイド寄りの立ち位置での起用もテスト。
しかし、10月のクラシコでは殆どRSBの位置でプレーを強いられていたことが話題となる等、イマイチ定まりきらなかった。
そんな難しい状況でも徐々に、そして確かに自身の本領を発揮していくのは本物のフットボーラーの証。
同じ2003年生まれのアセンシオによるアシストから11月に今季初ゴールを記録すると、そこからリーガの試合では6戦連発。

彼に追い風となったのが守備負荷が調整され、「ベリンガムに改めて自由を」をテーマに臨んだように見えた12月のCLアタランタ戦。
ここで1つ現状の最適解が固まった印象を受けた。
ヴィニシウスエンバペのポジション問題について、アンチェロッティはわざわざベリンガムの役割を固定したことに触れてそのチューニングの妙に言及したことも今季マドリーを追う上で重要なトピック。
最近のエンバペ爆発の要因がベリンガムにあることは明々白々である。
(結局最近はまたヴィニシウスとエンバペの尻拭いをさせられがちではあるが。)

マドリーの調子が悪く見える試合は大体ベリンガムのコンディションが悪い試合だと思っていい。
それほどに彼がチーム全体へ与えている影響は計り知れない。
彼の疲労をいかに取り除きながらシーズン終盤の大一番で全能性を見せつけられるかは終盤戦の見所である。
コンチネンタルカップのパチューカ戦のような他の選手が適当に流す試合でも一人だけ気合の入れ方が違ったように、メンタリティでもチームに寄与できるリーダー。
そんな大人びた精神は若いチームにとって助かるのだが、SNSで度々UPする顔面アップ自撮り仕草がそういうおじさんみたいですごく嫌なので、そっちの感覚だけはまだ年相応でいてほしい。

#6 エドゥアルド・カマヴィンガ

23試合出場(1,325分)1G0A

個人的に今季終盤戦の鍵を握っている選手に思うのだが、いかんせん中途半端な怪我が多い。
長い手足とそれを操る無理の効く身体操作性を活かした守備力と、中盤の選手として中央の広範囲エリアで信頼できるプレス耐性、機を見た攻撃参加でピッチの縦横のリレーションを繋ぎ続ける唯一無二性。
特にスーペルコパのマジョルカ戦は圧巻で、攻守両面でピッチ全体に好影響を及ぼす姿には観ていて心が躍った。
良い意味で飄々としたプレーはこれから迎えるCL決勝ラウンドやリーガ終盤戦でも重要なピースになるはず。

今季も少しではあるがLSBとしての出場機会も回ってきており、オプションとしてチームの機能性に変化をもたらすパワーも有している。
そんなこんなで置き得な選手であるはずなのだが、直近の試合では少し精彩を欠くというか、不用意なプレーでチームを追い詰めてしまうシーンが目立ってしまっている。
途中出場したCLシティ戦2ndLegでは試合終了間際に無駄すぎるファールで与えたFKから失点し、試合後にはヴィニシウスに叱られる始末。

アンチェロッティも残りシーズンに向けてカマヴィンガのコンディションを取り戻すことを重要なテーマと認識しているようで、ここからの彼の巻き返しに期待大。
セバージョスが怪我をした現状も相まって、より悠長に待っていられない至上命題となっている。
カンピオーネトレインの運転士よろしく、ここからのマドリーを縦横無尽に操縦する姿で見返してほしい。

#8 フェデリコ・バルベルデ

41試合出場(3,475分)8G4A

マドリー提携企業のサニータスから2024年の最も健康的な選手賞(労基に駆け込まずよく我慢してくれたで賞)とかいうよく分からん賞をもらった第四主将。
今季も元気に試合にいっぱい出ていっぱい走っていっぱいボールを蹴っている。

自身のアイドルから8番を受け継ぎ、マドリーの中盤を仕切るという高難度ミッションに挑む今季は彼の更なる飛躍の年になっているように見受けられる。
受け手に爆速で届く高精度フィードは彼らしさが見える大きな武器。
ポジションを落としたことで、より後方のフリーな状況から足を振ることが出来るようになり、加えて直接FKの機会も度々回ってくる今季で重ねたゴールは既に8ゴール。
殆どがボックス外からの強烈なミドルシュートであり、一説には今年のプスカシュ賞ノミネート作品は全部バルベルデのゴラッソになるとかならないとか。
勿論攻守両面、とりわけ守備のトランジションでの理不尽性には毎試合のように救われている。
今季のフェデリコ・バルベルデという選手はマドリディスタ以外の全サッカーファンの間でももっと騒がれるべきである。

怪我人の穴を埋めるため、またはビハインド状況から攻撃的に振る舞うために数シーズンぶりのRSB起用にも期待以上のパフォーマンスで応える。
「バルベルデ負傷RTA Any% バグあり」でもやってるのかと勘ぐってしまうほど酷使され、直近の試合は”小さな問題”で休養中の彼が重ねた今季出場時間も既にダントツの3,475分。
チート級のフィジカルでチームトップを走り続けるファルコンには誰も追いつけない。

#10 ルカ・モドリッチ

40試合出場(1,808分)4G3A

39歳を迎えた今もなお殆どの試合でイニングイーターとして監督の信頼を勝ち取っているマドリー13シーズン目となる現カピタン。

不用意なパスミスやボールロストも散見され、身体的な限界からトランジションでは後手を踏みまくる等、全盛期ほどの圧倒的なパフォーマンスは流石に期待できないかもしれないが、彼にしか見えていないコースを射抜くスルーパスや、苦しい状況で同点弾を生む神通力を見せたバレンシア戦など、ピンポイントで輝くプレーはまだまだ凄みを感じさせる。
Laliga第25節ジローナ戦でのゴラッソは圧巻で、幾つ年を重ねても技術は裏切らないことを証明した。
4G3Aというスタッツ、そしてなんだかんだでこの背番号10番がスイッチとなって生まれているゴールは少なくない。
さて、これから迎えるのは熾烈な戦いが予想されるチャンピオンズリーグである。
そんな舞台でもチームを幾度となく勝利に導いてきたその姿は、元バロンドーラー、そして歴史に名を残すフットボーラーとしての所以。
彼の右足が生み出す奇跡にあと何回頼ることができるのだろうか。

9月には40歳を迎える生ける伝説はもう一年の契約延長を望んでいるようだ。
そのハングリー精神は我々も見習うべきかもしれない。
MCK、トニルカゼ、バミューダトライアングルとして栄華をきわめたそのレガシーを後輩たちにどれだけ残していけるかにも期待がかかる。
びっくりするくらい浸透しなかったバミューダトライアングルって呼称、ほんと何だったんだろうね。

#14 オーレリアン・チュアメニ

35試合出場(2,881分)0G1A

マドリー史上5番目の移籍金でやってきたチュアメニも今季で3シーズン目、そんな今季はMFで17試合、CBで18試合出場。(だいたい半々になるっぽくて驚きました。)
中盤で出場した際にはクロースが抜けた中盤における保持力低下の非難の的にされ、CBで出場すれば低調なパフォーマンスで失点数の多いマドリーのヘイトタンクとなっている。
2-5で敗北したスーペルコパバルセロナ戦直後に迎えたホームでのセルタ戦ではサポーターからブーイングも受けることに。

DFラインの選手があまりにも欠けすぎているチーム状況もあり、CB起用から目を背けることはできなさそうではあったが、直近のマンチェスター・シティ戦2ndLegでは久々の中盤起用で出色の出来を見せた。
中盤で使えば、強度を持った守備とトランジションの芽を摘む感覚は健在。
ゴール前で構えるよりも中盤から守備に+1を加えに行くプレースタイルの方がやはり性に合ってるのであろう。
豪華絢爛なアタッカー陣を揃える伝統の中で、中盤で守備を一手に引き受けられる選手の重要性は歴史が物語ってきており、彼にもそういう選手になってほしい。
トップチームの現有戦力でシンプルな高さを拠り所にできるのはリュディガー(190cm)とチュアメニ(187cm)ぐらいなので、そこでもバリューを生み出せればなお良し。
リュディガーと同じくなかなか決まらないフルパワーミドルシュートもさっさと沈めたい。

昨季の最終決戦となるCLファイナルでは負傷離脱。
名だたる中盤の名手達の14番を背負う今季は最後までピッチに立って笑っていられるだろうか。

#15 アルダ・ギュレル

29試合出場(1,051分)3G3A

昨季は少ない出場機会から数字にも現れる印象的な活躍を見せ、今夏のEURO本大会でも堂々たるプレーで輝いたトルコの至宝。

ホーム開幕戦となった2節バジャドリー戦ではスタメン抜擢を果たし、既に昨年の出場時間(12試合440分)はゆうに超えている今シーズン、成長を感じさせるのが非保持面での貢献。
まずトランジションで後手を踏まなくなった。
引いてブロックを組む際も自身の管轄エリアに穴を開けなくなった。
アンチェロッティからの信頼を掴むために彼なりに考えた1つのアンサーであろう。
それでもまだ指揮官を満足させる水準までは達していないのか、彼以外の選手が優先される現実があるのは歯痒い。

そんな守備でも貢献し、攻撃を活性化させながら1Gも記録したジローナ戦は今季の彼のハイライト。
この得点でも見せたように、基礎技術に自信を持つテクニカルな選手にしてはゴールへ向かうフリーランをさぼらないのが本当に本当に偉い。
チームに少ない左利きかつプレースキッカーを任せられる人材であり、同じポジションを争うロドリゴやブラヒムとも棲み分けできるキャラクターのため、試合展開や相手に合わせたゲームプランに応じて今後もプレータイムを確保していくよう継続して準備していくのが、マドリーでの成功にプライオリティを置く彼が歩む茨の道か。
直近のレアル・ソシエダ戦でスタメンに名を連ねるまで、5試合連続でプレータイムが得られないという苦しい時間も味わった。
しかし、神は一つのドアを閉めても千のドアを開けているとはよく言ったもので、腐らずこれからもマドリーで共に成長しながら絶対的な存在になってほしい。

#19 ダニ・セバージョス

31試合出場(1,518分)0G1A

ボール保持に不安を抱えつつ騙し騙しで突き進んでいたマドリーにおいて突如重要な役割を抱えてチームを活性化させた今季のNo.1サプライズ枠ことセバージョス。

持ち前のプレス耐性は健在で、昨年のボール保持を支えた前任者とはまた違った動的なプレーメーカーとしてピッチのあらゆるところに顔を出しながらチームのリズムを司っている。
左サイドから通す中長距離のスルーパスはお手のもの、そのパスを信頼するフランやヴィニシウスを活き活きとボールと共に走らせる。
CLシティ戦1stLegでエンバペの同点弾をアシストしたパスも彼ならではの閃きから放たれたループパス。
足は遅いが、守備では球際でファイトできるのも彼の良さ。足は遅いが。
自身のウィークポイントとどう向き合い、チームとの折り合いをつけ、シーズン最後まで継続して走り抜けられるか。
後はより効果的なプレーメイカーとしてもう一つ突き抜けてほしい。
ただただボールを循環させているだけではなく、もう一歩決定的な選手として。
こんな風により高いレベルのプレーを要求できるようになったことも嬉しいことですね。

毎シーズン評判が乱高下する選手であるが、今季は自身も認めるほど最高の時間を過ごせている。
先日のレアル・ソシエダ戦で左足の腱を伴う半膜様筋損傷の怪我に見舞われ、約2か月の離脱が予想されているが、隙あらば選手が負傷する今季マドリーのスカッドの中でもセバージョスはなんだかんだで怪我してこなかったのも非常に評価できるポイントであった。
復帰後の最終盤戦もマドリーレベルのプレーで魅せられるか、不遇のプレーメイカーの逆襲に期待がかかる。

#36 チェマ・アンドレス

2試合出場(34分)0G0A

今夏のU-19EUROでは主力としてスペイン代表を優勝に導いた大型ピボーテのチェマ。
今季からカスティージャに昇格し、欠かせない戦力として徐々にそちらでもスタメンにも定着したその活躍とプレースタイルの希少性はトップチームでも惹きとなり、帯同メンバーとして招集の声がかかってくるように。

スペイン人ピボーテらしくピッチ中央でボールを捌きつつ、その高さを活かしてゴール前に突っ込んでみたり、後ろからのフィードの的になってみたり。
アジリティに強みはないが、長い手足を活かした守備も魅力的で、危機察知能力も合わせて相手のボールを絡め取っていく。
試合の中での集中力維持と、キックレンジおよび展開力にはまだまだ向上の余地あり。
ピッチ上で自らを表現する姿を見ているとやはり本人はロドリになりたそうなのかなと。個人的にはブスケツになってほしかったのだが。

そう言えばマンチェスター・シティが冬の移籍市場でニコ・ゴンザレスを獲得しましたね。
チェマが攫われないか密かにヒヤヒヤしていましたが、良かったです。
危なかった。もうちょっとで「狙われる前にシャツは出しとけ」って忠告するところだった。

⭐︎FW

#7 ヴィニシウス・ジュニオール

35試合出場(2,861分)18G7A

背番号7番を背負う紛うことなきマドリーの現エースであり、世界最高のフットボーラー。
今季もその背番号に相応しいプレーでマドリーの攻撃を牽引している。

主戦場の左サイドでボールを持てば次々と対面の選手を置き去りにし、オフザボールでマークを外す動きも既に会得済み。
昨季からの文脈であるプレーエリアの広域化に係るエンバペ(やロドリゴ)とのポジションチェンジも今季マドリーを追う上での面白要素である。
かつての相棒ベンゼマのように、0.5列降りたエリアでボールを引き出す多彩なプレーぶりで相手視点手が付けられないアタッカーに。
そんなエースの守備負荷調整は長い間アンチェロッティの悩みの種になっているが、これも終盤戦に向けたキーファクターと言えるだろう。
現状は密度の高いミドルブロックを維持するために、彼とエンバペの意識を変えることでチューニングしている素振りもうかがえる。
腕章を巻いてプレーした先日のコパ・デル・レイのレアル・ソシエダ戦は今季の特別な瞬間に。
責任感がそうさせるのか、献身的なプレスバックも披露していたのが面白かった。

当確と思われたバロンドールを一歩手前で逃した今季。
本人が一番悔しいタイミングで「必要であれば10倍やる」と宣言できる選手をどうして愛さずにいられようか。
取り敢えず昨季の24G7Aをベースに今季240G70Aを目指そう。
必ず成し遂げられるはずだ。

#9 キリアン・エンバペ

39試合出場(3,191分)28G4A

漸く憧れの白いユニフォームに袖を通し、今季どころかサッカー史にも残るレベルの特大目玉補強となった現世代トップオブトップのプレイヤー。
彼を待ち焦がれている間にCLもリーガも獲ってしまった昨季の攻撃陣も相まって、既存戦力との共存に対する不安の声も少なくはなかった。

序盤戦は数字で見ると然程悪くない成績を残してはいたが、外したチャンスも数知れず。
彼にかかる期待からすればあまりにも微妙なパフォーマンスに終始。
そんな中でCLリヴァプール戦、リーガのアトレティック・ビルバオ戦でPKを立て続けに外してチームの敗北に繋がってしまう等、自身も認めるほどどん底も味わった。
しかし、直後にInstagramで明らかに相応しくないポップ体フォントを用いたストーリーでファンに謝罪してから状況が一変。
相手DFラインを脅す脚力はそのままに、裏へ抜ける、降りてボールを引き出す、その両面でポジショニングが向上。
ボールの真芯を捉える爽快感抜群なミドルシュートはもちろん、オサスナ戦で披露したクロスに合わせるゴール等、得点力とそのパターンの豊富さで違いを見せ始めている。
ループ・相手を滑らせてニア・カットインから左足、CLシティ戦2ndLegで記録したハットトリックは彼のフィニッシャー性能の見本市となった。
あとハットトリック時のゴールセレブレーションがかっこよくて好き。ステフィン・カリーのオマージュらしいね。(他にもちょくちょくやっている。)

ヴィニシウスとエンバペの共存という一大テーマに対する回答の結末やいかに。
なんだかんだでチーム2番目のプレータイムを記録している耐久力も素晴らしい。
有象無象のうさぎにスタートダッシュを決められたところで最後にかめが追い越せばいいだけの話。
まだまだ彼のマドリーでのキャリアは始まったばかりだ。

#11 ロドリゴ・ゴエス

37試合出場(2,454分)13G7A

昨季チーム3番目のプレータイムで充実のチームを支えたブラジルの俊英は、開幕前にはエンバペ加入の煽りを真っ先に受ける選手であると予想されていたかと思いきや、今季も変わらず欠かせない存在でありキーマンとしてピッチに立ち続けている。

ヴィニシウスの逆サイドとなる右サイドに攻撃の起点を作りつつ、機を見たポジション移動で攻撃に厚みを持たせるその器用さは大きな武器であり、マドリーという特異なチームで生き残り続けられる証左。
同胞のエースが欠場した際には代わりにその位置に入って輝くという世界最高峰のリプレイスメント要員も兼ねる。
12月のセビージャ戦や1月のラス・パルマス戦、CLブレスト戦等、ヴィニシウスの不在時にしっかりと活躍してポイントを落とさなかったのは非常にありがたい。
エンバペの加入によって”割を食う”という意味では、守備タスクを負わされる量と責任自体は増したように感じる今季。
時には自陣深くまで下がって守備にも奔走する姿をどうやったら忘れられるだろうか。
スーペルコパクラシコの適当すぎるCKミスと±0直接FKゴールも忘れられないけど。

やたらと”R”がどうたらこうたら言われているが、そんなもんメディアが苦し紛れに吐くビュー稼ぎ。
センセーショナルな見出しで注目を浴びたい軽薄思考回路のライターからしたら彼は格好の餌食となることが多いが、とっくの前に賞味期限切れである。
そんな圧倒的コンテンツ力を誇る頭文字Rは今季もチームを至る所から支えている。

#16 エンドリッキ

25試合出場(475分)6G0A

良くも悪くも空気が読めないのは育ってきた環境が違うからなのか。若気の至りも否めない。
理知的な守備がだめだったり、文脈関係なくぶち込むシュートが好きだったりするのである。

ブラジルからやってきた新世代のストライカー候補は試合終盤のプレータイムを貰いながら今季をトップチームで駆け抜けている。
この選手はやたらと変な得点やプレーが多くて面白い。
ヴィニシウスとエンバペを無視してミドルシュートをぶち込んだCLシュツットガルト戦、相手を引きずりながらPKを奪取したリーガのエスパニョール戦、延長戦で左足を振り抜いたコパラウンド16セルタ戦。
直近のレアル・ソシエダ戦でもベリンガムのお膳立てから見事なゴールでチームを勝利に導いた。
どれも印象的であり、プレーの合理性を重視するタイプの人間をあざ笑うかのように訳の分からない魅力でファンの脳を焼き焦がしている。
反対に守備は絶対に改善するべき。
そこまで出場機会が多くないCLで既にサスペンションリーチがかかっているのが物語るように、相当荒めな脳筋守備はファンの頭を悩ませている。

なんだかんだでプレータイムの割に得点数を伸ばしているところにはやはり弩級の才能の片鱗が表れているとも思う。
特にターンオーバーを含めて取り敢えずサブ組にも出場機会を与える場になるコパ・デル・レイに強く、試合に出ればきっちり仕事をしてくるのは、チームとして非常に助かっているはず。
その才能とプレー選択の不合理性を良い方向に振れさせるためにも、まずは座学から「マドリーとは何たるか」を学んでほしいのだが、そもそも普段からあまりアンチェロッティとは話してないみたいなことを前に言っててびっくりしちゃった。なんだそれ。

#21 ブラヒム・ディアス

35試合出場(1,522分)4G5A

試合の流れを変えるスーパーサブ。
豪華なアタッカー達の欠場に備え、後ろで控えるポリバレントなアタッカー。
そんな難しい役回りをこなしながら、昨年から帰還したマドリーを12番目の選手として支えるモロッコ代表のNo.10。

ピッチの中では持ち前の小回りの利き方を活かしてライン間及びサイドでボールを受けて仕掛けるプレーでアクセントに。
推進力を活かせる広いスペースはもちろんのこと、ブロックを組んで引いてくる相手にもその隙間をこじ開けて攻略を狙うことができるのもブラヒム特有の強み。
クロースがいなくなった今季、そのミクロな動き出しを目ざとく見つけて配球してもらえるように再度味方との練度を高め直すことができれば面白い。(セビージャ戦で記録したゴールで発現したエンバペとの連携は理想だと思う。)
常々WGの守備力が悩みの種になりがちなマドリーにおいて、文句を言わずに守備でもコミットしてくれる貢献もここに書き記しておこう。
ピッチの外に目を移せばチームメイトとの関係性の良さも伺える。
言語面や丁度真ん中あたりの世代になる年齢も含め、その持ち前のキャラクターを活かしてムードメーカーとしても大きな役割を果たしていることはもっと評価されても良い。
チームメイトやサポーターから受ける愛に反して、肝心のゴールからはまあまあ嫌われているのは皮肉。やれやれと言わざるを得ない。

44試合で12G6Aを記録した昨季と比べると今季の数字は現状若干見劣りするかもしれないが、ふいにしたゴールやふいにされたアシストも結構な数存在ため、特に悲観するものでもない気がする。
マンチェスター・シティ戦1stLegで途中出場からすぐぶちかました流れを渡さなかった同点弾等、控えから出場してくる選手として非常にありがたい存在であるのは確か。
古巣へのノーセレブレーションでリスペクトを見せる彼に倣って、我々もStay Humbleな姿勢で接していきましょう。
AFCON普通にダルいな。

#30 ゴンサロ・ガルシア

1試合出場(8分)1G0A

コパ・デル・レイベスト16レガネス戦、92:20に劇的ヘディングゴールを叩き込んで、記憶に残る選手となったカスティージャの大大大エースストライカーがゴンサロ・ガルシアa.k.a GG7またの名を“Gol”zalo。

カスティージャでは現在24試合21G3Aと大爆発中。
今季はマドリーの伝説的ストライカーであったラウール・ゴンザレス監督の下、シャドー、LWG、ワントップ、ツートップの片割れと、シーズンを通してタスクを変容させながら、点取り屋として更なる飛躍の一年を過ごしている。
ポジショニングの良さと、技術・身体能力を活かしてねじ込むヘディング性能は唯一無二。
上述の得点力とボックス内での圧倒的な巧さ、誰と組ませてもうまく立ち回ることができる器用な万能性はどんな役割でも腐ることはないありがたい存在になるはず。
また、最近調子を上げていているカスティージャの良化の一つの要因となっているのは守備(だと思ってます)。
とりわけそれを支える機能的なプレス構造の中で、最前線で広い管轄エリアを献身的に駆け回って貢献しているのもこのストライカー。
守備面でも計算できる選手なのも非常に偉い。大好き。愛してる。私情。
勘のいい奴は気づいているかもしれないが、突如飛来した彼は今のトップチームに欠けている要素を持ち合わせたまさに希望となる選手なのである。

レガネス戦の少ないチャンスをものにして、マドリードダービー、CLシティ戦1stLegと、トップチームに帯同する機会も少しずつ得られるように。むしろ遅すぎるくらいな気がするが。
彼に関してはまた別のnote記事で特集する気がする。
興味がある人はupを待ったり待たなかったりしててください。

#42 ダニエル・ジャネス

出場試合1試合(1分)0G0A

現フベニールAの背番号7、次世代マドリーのエース候補が12月のジローナ戦でトップデビューを果たした。
今季のジャネスはアルベロア監督の下、UEFAユースリーグも戦うチームを牽引しながら定期的にカスティージャでも出場機会を得ている。
その活躍で手繰り寄せたトップチームデビュー後にRMCデビューも記録、という謎順序を踏みながらマドリー各カテゴリーでのプレー機会を重ねている。

一に正対、二に正対、三四が無くて五に正対な雰囲気が蔓延り、口を開けば正対正対。何かとSNS上で物議も醸しがち。
正対のゲシュタルト崩壊を起こしそうな昨今のフットボールヲタクWG観において、そんな潮流も汲める今っぽい選手である。
高水準の技術とアジリティを兼ね備える左利きRWGの彼は自分の得意とするプレー及び仕掛けの型が明瞭であり、そのおかげもあって年代カテゴリーが上がっても調子が狂うことが少ない。
右サイドの大外レーンを主戦場に、周囲の状況やユニット関係に応じて内側でのプレーも飛躍的に向上させており、流れの中で味方を使うプレーも上手。
フベニールAで右サイド縦関係コンビを組む超攻撃的RSBフォルテアとの相性とその破壊力は抜群。
待望の声も上がるフォルテアのトップチームデビューは未だに叶っていないが、フォルテアを使うときにはジャネスも一緒に使うぐらいの方が強い気がする。いや、大真面目に。

同世代の化け物達と対峙したユースリーグリヴァプール戦でも得点を記録し、チームを勝利に導くなど、その勝負強さはエースの素質。
この逸材を上手く育て切ることができれば、今後数年間は覇権RWGを擁するマドリーの航海を見届けられることであろう。

・おわりに

充実の昨季に当代屈指のアタッカーの加入も相まって、期待値が高まる第三次銀河系軍団の初年度となる2024-25シーズンを取り急ぎ論じてみた。
全員に関してもっと深掘って語りたい気持ちも否めないが、これぐらいの量に留めておかないと書き手・読み手共に関わる者全員の気が狂ってしまう。勘弁してくれ。
あとはTwitter(現:X)でも日々似たようなことを呟いているのでそっち見てください。
最後に1つ確かに言えるのは、これ絶対にシーズン終わりにやるべきだった。
お疲れ様でした。

※画像はレアル・マドリー公式様を使用しております。

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