2024.10.27 2024-25LaLiga第11節 レアル・マドリーvsバルセロナ
・はじめに
ツイートするタイミングを失ったのでnoteにする。
以下、スタメン。
マドリーは、内転筋損傷で離脱中のクルトワに代わってルニンがゴールマウスを守る。
前節セルタ戦では3バックを採用していたり、世間はミリトンRSB配置計画で盛り上がってみたりしたが、蓋を開けてみれば予想に易いメンツで組む4バック。
中盤はチュアメニとバルベルデが中央を固め、左にカマヴィンガ、そして最近試運転を数回重ねたベリンガムの右サイド起用をチョイス。
ロドリゴが欠けた最前線はヴィニシウスとエンバペがコンビを組む。
一方のバルセロナもカピタンで正GKのテアが不在という状況。
直近のバイエルン戦でハットトリックを記録したハフィーニャが不気味。
・試合内容
・両チームの基本スタンスの話
序盤からお互い様子見する気はあまり無さそうで、両者共にこの試合に向けて持ち込んできたスタンスが色濃くピッチ上に映りながら試合の幕が開ける。
マドリーは4-4-2の形を維持しつつ、自分の対面となる選手に対して前向きに陣形をプッシュアップしていく積極的なハイプレスを敢行。
1stプレス隊になるマドリー2トップの挙動は、相手ピボーテを背中で消すことよりも、サイドへ追い込んでいく守り方を重視しているように見えた。
なんだかんだでこの快足ハイプレスが案外悪くなかったのが序盤の興味深いポイント。
バルセロナの2CBに対してタイミング良く圧力をかけることができた際には、定期的に相手のビルドアップからミスを誘発。
相手のGKはテアではなく、ペーニャ。
被プレス下でやり直しの受け皿にするには少々不安定に見えた。
ヴィニシウスは途中でペーニャの足元が怪しいことに気付いたっぽくて、時間が経つにつれてあからさまにペーニャに対するプレスの出力を上げてカモにしようとする魂胆が透けて面白かった。
しかし、そんなポジティブな誤算と同時にこの試合に潜む危険性も顕在化。
マドリー2トップが「相手2CBにも勢いよく出ていく+連続したプレスは得意ではない」ため、やはり2トップと中盤の間に広大なスペースが生まれる。
その結果、ボール循環を担うカサド&ペドリの管理が杜撰になってしまっているシーンもかなり多く見られた。
守備で微細なポジショニングは期待できないが、異次元の脚力なら持ち合わせているマドリーの2トップ。
自ずと守備のやり方がこうなるのは理解できるのと、ここからのブレイクスルーが欲しいなとも。守備してないとは言わないけど、上手いとも流石に言いたくない。
ドブレ・ピボーテで上述のスペースを活用することでマドリーのハイプレスに対抗するバルセロナ。
ペドリやカサドが上手かった点は、毎度マドリーのゴール方向、即ち“前向きで”ボールを握ろうとしていたこと。
2トップ-中盤間の広がるマドリーの守備につけ込むだとか、お互いがボールを受ける位置を固定化せず柔軟に選べていたことだとか、単純なターンの技術だとか、あらゆる手を使って前を向いてくる。
これが強度に秀でたマドリーの中盤の足を止める。
迂闊にマドリーの中盤ラインが飛び込めなくなり、体の向きだけで相手に時間を作られるはめに。
このようにバルセロナが中盤で起点を作れることに加えて、裏抜け列落ち自由自在なスリートップの捕まえづらさも鬱陶しい。
ハイプレスで窒息しかけた際には、最悪クバルシあたりがレヴァンドフスキあたりを狙ったロングボールで緊急脱出できる算段をつけていたことも鬱陶しい。
マドリーの保持局面で特に見られたパターンは大きく分けて2つ。
「①後方から最前線へのロングボール」と「②低い位置でのSBへの展開」。
「①後方から最前線へのロングボール」に関しては、裏のスペースに落とすことができれば対ハイラインバルセロナに対して有用であり、前線のスピードとCBのフィードという自分達の武器を活かす意味でも、分かりやすく狙っていたパターンのはず。
スペースを奪われて中盤の選手が前向きに起点を作れない状況(皮肉にもバルセロナとは対照的)や、深さを取った際ののマドリー2CBに対する監視がそこまで厳しくなかったことが、リュディガーやミリトンが後方発射台として立ち回ることをいつも以上に後押しした。
前半3分のリュディガーからヴィニシウスへのフィードや、6分にエンバペがロングボールを収めたシーンなど、後ろからの大きな配球は攻撃のスイッチとしての役割を果たした。
実際29分にエンバペがチップキックでゴールネットを揺らした先制点未遂もミリトンtoバスケスのフィードから生まれている。
一方でピンと来なかったのが「②低い位置でのSBへの展開」から組み立てようとするパターン。
中盤にスペースがないことはスカウティング済みで安全地帯をSBに設定したと考察するが、そのせいで外回りのボール循環が増える。
その結果、スルーパスやクロス等、繋いで進んでいった後のボールの出所がサイドに限定されがちになってしまっていた。
出所がサイドになると、エンバペは裏へ走り出す際の身体の向きが外向きになり、相手の最終ラインとなるCBを視野内に捉えづらそう。
これもオフサイドにかけられまくる要因だったのでは。
今季のマドリーはSBの使い方があまり上手くないとずっと個人的に感じている。
マドリーは歪な構造を律するためにSBをバランサーとして使うが、加えてそれがフィニッシュ局面により影響を与えるようなポジティブな方向に振れている時が1番強い。
ビルドアップが上手くいかない、左右差配に四苦八苦。
そんな状況の中、今季はSBの使い方が弱点を隠すことに追われ続けるようなネガティブな方向に振れているように思う。
バルセロナのハイラインに関して。
正直大絶賛するほど洗練されたものではなく、植え付けられた共通認識と気合いと勇気で上げ続けるピーキーなやり方だと感じたのが正直なところ。
再三オフサイドに引っかかり続けたエンバペに対して多くの視聴者が「もっとやりようはあっただろ」と憤っていたのが一つの証左、付け入る隙は十分にあったはず。
寧ろ走り勝てない分を割り切って、高速アタッカーと対峙した時に命取りになる意思決定にかかる心理的負担を消したのが偉いのかなと。
中途半端に考えながらライン管理をしているようでは90分間の身体的なディスアドバンテージを超えられない。
表裏一体、お互いリスクを負いながらチャンスを作り続けるも、肝心の決定力がついてこない。
決めるべきところを決められない試合は今季のマドリーを象徴しており、このようなビッグゲームでは尚更悪目立ちする。
・徐々に飲まれてお粗末な後半になったよという話
後半からバルセロナはフェルミンに替えてフレンキーを投入、ペドリをトップ下の位置へ上げる。
早速フレンキーはDFラインに降りる動きを多用し、バルセロナのビルドアップに変化を作った。
前半に散見されたようなGK+2CBが忙しない時間を過ごすあれを嫌ったのであろう。
他の理由としては、ドブレの片割れを降ろしても中盤には1人置いておけばライン間でも余裕を持って前進できることに手応えを得られたからだと考える。舐められたもんである。
詰まったら最悪ペドリが適宜降りればいい。
徐々にペースを握られる中で、DFラインの集中力が先に切れたのがマドリー。
後半53分にはCBが2枚とも釣り出されたスペースを簡単に利用されたところから1失点。
相手のアンカー位置に入る選手に対する守備が殆ど効かないこと、CBの甘すぎる連携を突かれたこと、SBも含めたライン管理があまりにも雑なこと。
今季のマドリーの守備における悪いところを煮詰めたような失点。
55分にはサイドからバルデが上げたクロスをレヴァンドフスキにヘディングで叩かれ、立て続けに2失点目。
左サイドにカマヴィンガ、右サイドにベリンガムを配置したことはマドリー視点のこの試合1番大きなトピック、だったのかもしれない。
今季のアンチェロッティはビッグゲーム前にちょっとした変化を用意しがち。(それを直近の試合で多少の試運転を行って用意してくるのも面白い。)
左サイドの交通渋滞を避けて右からの攻撃のポイントを作りたいというのがここ数試合のベリンガム右サイド起用の要点だったと記憶するが、守備のバランスが今までと大きく変わるところはどう考えていたのだろうか。
ベリンガムの右サイド起用はバルベルデと比べた時、擬似的な5バックになることを嫌うという変化点が生まれる。
攻撃でも重要な役割を担う必要があるため、あくまでも“中盤の”右に位置取りしたい。
つまり、積極的にポジションを下げさせたくはないのである。
クラシコではバルデに合わせて、右サイドに配置したバルベルデの擬似5バックで潰し切るのが近年のお馴染みとなっていた。
この日ベリンガムは上手くバルデにも対応していたが、この失点シーンのように大きくスペースが開いたところまでは手が届かなかった。
混乱に陥りマークが杜撰になっていたCBは論外。
ミリトンなんかは前半かなりマドリーの守備を支える強さがあっただけに、こういうところで簡単に集中力が切れるのが尚のこと勿体無い。
ちなみに、カマヴィンガへの信頼もこの起用法を後押しした要因であろう。
実際にカマヴィンガは立ち位置で惑わせにくるクンデの対応、ヤマル対面のメンディのサポート、ヴィニシウスの後ろのスペースを管轄、大立ち回りを見せていた。
この日の配役も決して間違いではないと思うが、左サイドにベリンガム、右サイドにバルベルデを置く馴染んだ戦い方で臨んでいたらどうなっていたかは気になってしまう。
2失点を喫したマドリーは、後半61分にはバルベルデが何気ない展開のパスをズラすなど、落ち着きも失っていく。
モドリッチを投入し、再度立て直しを図る。
良くも悪くも今季っぽいお決まりの采配。
すかさずバルセロナもイエローカードを貰っていたカサドを下げ、ダニ・オルモを投入。
モドリッチ投入後、マドリーはその背番号10番を前進させてより前で奪う意識を高めた守備を狙う。
そこに顕著に表れる前後分断、即ちマドリーのライン間及びピボーテ脇をダニ・オルモでズタズタにしにくる理に適った交代。
交代策も一枚上手を取られていた気がする。
終盤にかけて、ヴィニシウスのクロスや、高い位置で奪ったベリンガムからのスルーパスなど、要所でチャンスは作って対抗するも、フィニッシュ精度があまりにも低レベル。
ペーニャの奮闘も見逃せない点ではあった。
こういったチャンスを呆気なく不意にすると逆襲を食らうのは往々にしてあることで、後半76分にはペーニャからのロングボール一発でゴール前まで迫られ、ヤマルに逆足ゴラッソを叩き込まれる。
その後、83分にはイニゴからのロングボールからハフィーニャに抜けられ4失点目。
1人だけ後ろでラインを下げてハフィーニャにフィニッシュまで簡単に許したルーカスは見てらんない。
後半90分にもエンバペが華麗なオフサイドを披露、0-4というショッキングなスコアで試合が終了。
・まとめ
ハイプレスは序盤の勢いを生み、ホームの利を活かした強気の戦いぶりを見せたと思いきや、徐々に流れを引き寄せられながら飄々と躱され続け、自分達以上に強気に出た相手のハイライン守備の術中に勝手に嵌る。
攻守両面で主導権を握られ続けた惨敗である。
悪いところが集約されたような失点シーンもさながら、ワンパターンな攻撃に変化を加えられる選手がヴィニシウスぐらいであったことも虚しい。
終始エンバペに託し続けたのもよく分からない。別にベリンガムやカマヴィンガが抜けていっても、ヴィニシウスが斜めにラインブレイクを狙っても良いのである。
その辺の柔軟性が少し乏しかったようにも思う。
強いマドリーであれば、相手に合わせて戦い方を変容させつつ試合を飲み込んでいくはず。
「オフサイドにならないように助走を持って裏に抜けましょう」なんてその辺のサッカー少年ですら習っているようなことをこのレベルでわざわざ言いたくない。
前半のうちに得た決定機のどれかを決められていたら、というたらればはこのレベルの試合になると命取りになるという至極当たり前なことを改めて痛感させられる試合でもあった。
・おわりに
ホームでかなり手痛い敗北である。
今季の目玉補強となった選手があまりにも不甲斐なく、まんまと相手の策に嵌ってしまった。
点差もさることながらそれ以上にダメージを受ける完敗。
これをまた糧にできればと願うばかり。
にしても高すぎる勉強代。
あまり構成も考えずに作成したレビューにも満たない駄文散文、どうか許してください。
何かあれば質問箱にでも入れといてください、暇な時に頑張って考えて答えます。
※画像はTACTICALista様、レアル・マドリー公式様を使用しております。