ラヴズオンリーユーとマルシュロレーヌの矢作芳人厩舎牝馬2頭がブリーダーズカップ制覇
現地時間11月5日と6日に、アメリカ合衆国カリフォルニア州のデルマー競馬場にてブリーダーズカップが行われました。
ブリーダーズカップは、アメリカ競馬の年間の総決算ともいえるビッグイベントで、5日には2歳馬のチャンピオンを決めるG1が、6日には3歳以上の古馬のチャンピオンを決めるG1がそれぞれ各カテゴリーで行われました。
6日に行われた牝馬限定の芝2200mのG1、ブリーダーズカップフィリー&メアターフは、川田将雅騎手騎乗のラヴズオンリーユー(Loves Only You)が、道中4、5番手追走から最後の直線で空いた馬群の隙間を抉じ開け、ゴール前で1/2馬身差を付けて差し切って優勝しました。
勝ちタイムは2:13.87。
ブリーダーズカップ諸競走を日本調教馬、そして日本人騎手が優勝するのは史上初の快挙です。
川田騎手は現在36歳、デビュー18年目で初の海外G1優勝となりました。
これでラヴズオンリーユーは、2019年のG1オークス、今年2021年の香港G1クイーンエリザベス2世カップに続く3度目のG1優勝で、いずれも異なる国で制したことになります。
父のディープインパクトは2019年に死去しており、以後も世界中でディープインパクトの血を引く馬が活躍していることを考慮すれば、繁殖入りの際に強力なアピール材料になるでしょう。
ラヴズオンリーユーの快挙について書いていたところ、今度は牝馬限定のダート1800mのG1、ブリーダーズカップディスタフで、激しい先行争いから道中後方3番手を追走していたオイシン・マーフィー騎手騎乗のマルシュロレーヌ(Marche Lorraine)が早め先頭から後続に詰め寄られながらも、内側を突いたダンバーロードとの大接戦をハナ差で凌いで優勝しました。
日本調教馬が海外のダートG1を優勝したのも史上初です。
現地のオッズでは11頭立ての単勝9番人気というのですから、これは大波乱ですね。
マルシュロレーヌは、父が2011年の牡馬クラシック3冠始め、有馬記念V2等G1で6勝を挙げたオルフェーヴル、祖母が1997年の桜花賞馬のキョウエイマーチという血統。
オールドファンにとってもワクワクするような血統背景を持った馬が海外のG1を優勝するのも、競馬の醍醐味のひとつといえます。
日本で牝馬限定のダート重賞そのものがJRAには存在せず、地方競馬ではG1(Jpn1)がJBCレディスクラシックのみという現状です。
今後の課題としては、牝馬限定のダート重賞がJRAでも新設されるか否かだとわたしは思っています。
そうすれば、ダート適性の高い牝馬のレース選択の幅がもっと広がるでしょう。
ラヴズオンリーユーとマルシュロレーヌを管理する矢作芳人調教師は、リアルスティールのドバイターフ(UAE)、リスグラシューのコックスプレート(オーストラリア)、上述のラヴズオンリーユーのクイーンエリザベス2世カップ(香港)とブリーダーズカップフィリー&メアターフに続き、4か国/地域での海外G1優勝となりました。
矢作師も、森秀行調教師と同様、管理馬を積極的に海外のレースに遠征させることで知られる調教師です。
矢作厩舎にとってまた大きな勲章が加わりました。
ラヴズオンリーユーについて、12月の香港国際競走に既に選出されており、今後の動向が益々注目されます。
わたしにとっても、日本調教馬がブリーダーズカップを優勝するとはまさか夢にも思っていませんでした。
矢作師曰く、西海岸の開催なら日本調教馬にもブリーダーズカップを優勝するチャンスはあると踏んでいたようで、デルマー競馬場の芝コースは路盤が硬く、日本の競馬場に似ているとも言われています。
矢作師の読みが見事に当たった格好となりました。
新型コロナウイルスのパンデミックがまだ収束していない中、帰国後10日間の隔離期間を覚悟で挑戦した関係者には敬服いたします。
さて、来年以降コロナ禍がどうなるかはまだ不明ですが、日本調教馬がブリーダーズカップに参戦を表明する馬が続出といくでしょうか。
来年2022年のブリーダーズカップは、ケンタッキー州のキーンランド競馬場で施行予定です。
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