藤田菜七子騎手の電撃引退は、相次ぐスマホ持ち込み取り締まりの犠牲者にされたからだ
先日、JRAの永野猛蔵騎手と小林勝太騎手が調整ルームにスマートフォンを預けた一方、もう一台のスマホを使用したとして、裁定委員会の裁定があるまで騎乗停止となりました。
昨年来、騎手の調整ルームへのスマホ持ち込みが重大問題となっており、9月のJRAの定例会見でも、更なる対策強化についてJRAの担当者が回答したばかりでした。
ところが、それどころでは済まされない重大事態が起きてしまいました。
週刊文春で、2023年4月頃まで複数回にわたり調整ルームの居室内にスマートフォンを持ち込み外部と通信していたことが報道された藤田菜七子騎手が10月10日に引退届を提出したと報道されました。
女性騎手が16年間もデビューしていなかったJRAにおいて、藤田菜七子騎手のデビューはそれだけセンセーショナルであり、裏を返せば、日本の競馬界に女性があまりにも少なく、外国と比しても女性騎手の実績にそれだけ乏しかったからなのです。
以後、JRAでも女性騎手が続々デビューするようになりましたが、藤田騎手の活躍が現在への道筋を付けたことまで否定されてはなりません。
それでも非常に不本意な形で引退せざるを得なくなった藤田騎手も、スマホ持ち込みの取り締まりの犠牲者なのです。
藤田騎手の引退にショックを受け、騎手どころか競馬界で働こうと考える女性の激減まで織り込まなければなりません。
競馬ラボの記事では、携帯電話が大衆に普及してきた25年ほど前、騎手会の役員とJRAとの間の取り決めで、携帯電話は騎手の自己管理に委ねられており、持ち込み自体が禁止になっていた訳ではなかったそうです。
海外競馬ではスマホの持ち込みは自由で、関係者との通信手段として有効とされていますが、日本ほど八百長のリスクが高くないからではないかとわたしは考えました。
調整ルームの存在価値についても再考が必要となってきました。
かつてはレース開催前日の午後12時までの入室が必要とされ、後に午後4時、午後6時と繰り下げられ、現在は夜9時までの入室が義務付けられています。
それゆえ、入室時刻ギリギリまで騎手は行動できるようになった訳です。
その時間から、1節間で自身が騎乗する最後のレースまで競馬場に居続ける必要があり、その後管理解除となります。
但し、病気や怪我で騎乗不可能となった場合は除きます。
新型コロナウイルスの流行期においては、トレーニングセンターや競馬場の調整ルームの他、「認定調整ルーム」として自宅やホテルの部屋を代替することもできました。
土日で別の競馬場に騎乗する場合の移動手段の確保や、過去のレース映像閲覧の目的に限り、専用のiPadを使用することはできるそうですが、それでもスマホの持ち込みが禁止されたままの状況との整合性の無さを問題視する者もいるでしょう。
JRAの騎手が地方競馬で騎乗する際、騎乗するレースの発走時刻の数時間前までに到着していれば良いとされています。
そのことから、調整ルームの入室についても、レース当日の早朝までで良いのではないかとわたしは考えるのです。
究極的には、調整ルーム自体の廃止という思い切った決断も必要でしょう!!
また、スマホ持ち込みの制限に加えての強化策として、電波遮蔽装置の使用や、空港のように厳格な金属探知機を使用した手荷物検査の実施の案も出ていますが、いずれにしても早急に決定を下さねばなりません。
また騎手に対するモラル啓蒙のための講習会の実施も必要との声がありますが、これだけでは不十分であることは明白です。
それを頻繁に実施したところで、内容が真に自分に必要とならなければ無意味だからです。
これだけスマホの持ち込みで数多の騎手が騎乗停止になる現状、騎手どころか競馬界全体のイメージダウンに直結しているのは明白です。
それが引き金となり、馬券売り上げの減少による収益の低迷で、レースの賞金や騎手始め厩舎関係者の手当の減額に繋がれば、結局JRAとしても大打撃となります。
そんな状況が続けば、騎手になりたいと思う子供たちは減るばかりです。
現在の日本競馬は極めて危険な分水嶺にいることを厩舎関係者は強く認識しなければならないし、馬券を購入するファンもそれを理解する必要があります。
JRA、そしてNAR(地方競馬全国協会)は日本競馬が子供たちの職業選択の可能性を提供していることを今一度強く認識しなければなりません!!
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