掌編小説 北ウィング

久しぶりに第一ターミナルに来た。北ウィングと南ウィング。もう、何十年前になるだろうか。初めての海外旅行。

「荷物、預けますか?」
「バカ。手荷物で大丈夫だろ。預けると、向こうに行って、面倒くさいんだ」

社員旅行で、グアムに行く。社長以外、海外旅行は皆んな初めてだ。毎月積み立てて、今日を迎えた。

「ここが、カラオケに出てくる北ウィングかあ」
「キョロキョロするな。田舎もんに見られるぞ」

ワクワク感がたまらない。社長以外、20代。
仕事は順調ではなかったが。

「仕事のことは一切忘れろ。帰ってから苦しめ。今は、南の島の事だけを考えろ」

私達3人グループは、拳銃を撃つ予定だ。5000円位で撃てる。

「反動ってどうなのかな」
「兄の話だと、銃の大きさでだいぶ違うらしい」
「マグナム44撃てるかな?」

不穏な気配があった。台風が発生している。日本に真っ直ぐに来れば、グアムは関係ないのだが、迷走しているらしい。

「記念写真撮るぞ!」

社長も田舎もん丸出し。そこに親しみがある。

「はいっ。バター」
「寅さんかよ」

楽しい旅になりそうだ。

いいなと思ったら応援しよう!