掌編小説 在宅勤務
「取り敢えず、一ヶ月、家で仕事をしてください」
在宅勤務がスタートした。どこで仕事をしても、事務所内と同等の仕事が出来るように、ソフトをインストールした。
20年前、ラップトップパソコンが出た頃、土日に家で仕事をしたことがあった。単に、仕事を持ち帰っただけで、残業にはならなかった。ラップトップパソコンも5キロくらいあり、結構重かった。その時、家で仕事できたらいいなあ、と思った。
今回はコロナ禍で在宅勤務になった。無理矢理在宅勤務を推し進める為のコロナ禍じゃないかと、少し疑った。
メールにチャットにチームズ。これで十分だ。
「人参買って来て!」
「何言っているんだよ。仕事しているんだぞ」
「そうなの? パソコンで遊んでいるだけじゃないの?
仕事は汗水流しててやるものだ。と家族は思っているようだ。プログラマーは仕事を理解してもらえない。
「毎日、何やっているの? 本当に仕事しているの?」
スーパーへの買い物と食事後の皿洗いとゴミ出し。それが私の仕事になってしまった。通勤時間が無くなったから、なんとか出来ている。往復4時間かけていたからな。電車内での読書。マクドナルドでの勉強。これが無くなった。
極端に運動不足になったので、散歩するようにした。渡良瀬川の土手まで15分。見える景色は河川敷のゴルフコース。マクドナルドも歩いて15分。コーヒーを飲みながらスマホのKindleを読む。
夜中に仕事で気になることがあり、調べてメールした。そしたら、深夜に仕事をした理由を問われた。在宅勤務も社内のルールが適応された。
取り敢えずの一ヶ月が5年目になった。みんな家でちゃんと仕事している。仕事中の居眠りも無くなった。コーヒー飲んだり洗濯物を干したり。気分を変えるものが沢山ある。
明日はチームズでの会議がある。