掌編小説 会社
一番長くいた会社は神田にあった。細長いビルの最上階。
出向先での仕事が多かったが、社内の仕事を手伝ったりもした。
「2本のプログラムを3日で開発してくれって」
「どんなプログラムですか?」
「さあ。行ってみないとわからない」
バブル崩壊後仕事が極端に減っていた。社内で遊んでいるよりは、と、私が行く事になった。
前任者がいた。1ヶ月くらい頑張って、来なくなったそうだ。COBOLの入門書が置かれていた。力尽きたのだろう。何とかなると思って、ならなかった。私は、多少経験があったから、何とかなった。逃げた人はどうなったのだろうか?プログラマーを続けているだろうか。私にも、似た経験があった。克服するまでに5年掛かった。
「まだだめか?」
「うーん。自信が持てないな」
「リーダーなんだろ?」
「途中でしくじるんじゃないかって、考えてしまうんだ」
高校の時からの友人が、親身になって心配してくれた。高校三年の初めに、私は諦めてしまった。二年の時は本当に頑張った。成績も一番になった。しかし、義務感で勉強していたから、疲れてしまった。
「小さな成功体験を積重ねるしかないな」
友人はそう言ってくれた。
あの会社がまだあったら、どんな生活をしているだろうか。