私はまだ充分ではない
人は言葉を話せるようになるまでは完璧で完全な存在で、他者との間には一切の壁がない。幼児期に言葉を話せるようになり、世界を事実ではなく物語で認識できるようになった頃のどこかで「私はまだ充分ではない」という感覚を持つらしい。
私が充分ではなくなったのはいつだろうか、記憶の淵をたどっていくとレゴ遊びに夢中だった4,5歳ごろのことが頭に浮かんだ。遊び終わると作ったものは元のブロックに戻して片づけていたのだが、友だちが作った車の模型は出来が良かったので、ばらさずに机の上にとっておいた。
夕食時に部屋に僕を呼びに来た父が、机の上の模型を手に取り「誰が作ったの?」「りょうたくん」「上手だね」
「私はまだ充分ではない」この言葉を聴いたとき、なぜかこの出来事を思い出した。
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