⑧
主はこちらを見据え、答えた。
「木が舟となってしまえば、島の方向も距離も分からなくなることだ。あの島は木の根元から見つけられない位置にある。」
私はしばらく沈黙した。そして
「探せばよい」
と言った。
主は笑って頷いた。
そして我々は再び上昇を開始した。
そして梢にたどり着いた。
主は梢の先端の細くなっているところに取りつき、その体で昇り螺旋をつくった。
そして梢の先端を咥え、何事か唱えた。
次の瞬間、私は船の上に立っていた。
船はガレオン船と呼ばれる形状をしており、甲板の広さは縦大股8歩弱、横最大が大股三歩強、また船室の広さは縦大股四歩弱、横三歩弱であった。
マストは三本で、高さは人の3~4倍、帆が12~15枚。黒くはないが白とはいいがたい色の布が風をはらんでいた。
船倉には葡萄酒とクラッカー、チーズ、缶詰数種があった。
そして枯れた花と死んだ鼠が置かれていた。
私はその二つを両手に持って船首へ向かった。
船首は我が主であった。
「みいつけた」
私は微笑んで両手を振り上げ、二つのものを祝福と共に海へ投げ入れた。
そして、甲板から身を躍らせ、主のもとへと落ちた。
主は私の全体重を受けた。
「つかまえた」
私の言葉に、主は微笑みながらかぶりを振った。
私は操舵室を見に行った。
宰相が舵にとりついていた。
私は窓に望遠鏡の代わりにワイングラスが備え付けてあるのを見て、宰相にそれを示した。
「中に虫が入っていますな」
宰相は言ってグラスの口に目を押し当てた。
「こいつは私が見張っておりますから、舵の方を代わってもらわなくては」
「そうだな。近くに誰かいないか?」
「内大臣は海水の味を確かめに行きましたし 楽師団長は自作の飛行器具をマストの上から試すそうです
大司教は航海日誌にかかりきりで、輔弼大官は釣りに出ました 公爵は奥で羅針盤をくるくる回しては面白がってます。」
「なら公爵か。こっちにこれるか?」
公爵は羅針盤を持ったままやってきた。
「東西南北に4ポイントというのは難しいものですな」
「影が本体に反逆するつもりか?」
「いえいえ、まだ無限の後悔の中突き落とされたくはありませんからな」
そういいながらなにかスポンジのようなものをこちらに示す。
どうも公爵はキノコを食ったらしかった
「どこに生えてたんだそんなもの」
「蔵の隅です」
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