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『Lumière』について

このnoteは『Lumière』脚本の森木が書いています。多分にネタバレを含むどころかネタのネタバレも含みます。小説の後書きが嫌いな人は読まないでください。
劇団青春の庭のうさぎたち第7回定期公演「あなたはだんだん」『Lumière』について。


(1スクロール分、感想を書いてからネタバレします)

感想

夢のような話でした、青うさぎで、加藤さんを巻き込んで、人が死なない話を一緒に書けるなんて。関わってくれた全ての人間に感謝。感謝。
演劇の大好きなところは、2次元を3次元に起こす作業が必要なところです。書いて終わりではなく、書いてはじまりなのが大好き。今回に関しては第11稿まで書き直しをしてしまいまして……役者の皆さんがさすがすぎましたごめんね。
もっと上手くなりたい、舞台をたくさん観て小説をたくさん読んで映画を観て美術館に足を運んで旅をしていろんな景色を見るべきです、ええ。

『Lumière』の原材料

『Lumière』の原材料は階段+光+時間の融和。
現代座という会場で逃れられない階段の昇り降りを通じて、作品の追体験ができたら面白い!
→昇り切った先にあるのが光だったらいいな〜
→部屋ごとに進む時間が違う家があったら面白いな〜1階の時間は共通なんだけど2階の部屋はそれぞれ違う時間が流れてるみたいな→それって生き物の体感では?!

これに加えて、絶対に人を死なせない。こと。
感動を生む際に、死を扱うことがあります。どこかで読んだのですが、SNSが発達した現代において絶対的な別れを描くためには死を扱うしかなくなっている、と。
私は身近な人間の不条理な死を経験したことがないので、感動の手段で死に逃げるのは違うと思った。

『Lumière』は、言わずもがな就活進路の話です。
脚本の大嫌いなところは、書いている時の心理が全て漏れ出してしまうところで、元々就活の話をしたかったわけじゃなかったんだけど、知らぬ間にこんな話になりました。『チーズケーキ』と似てるって言われ続けて反発していましたが、当時の加藤さんと境遇が似ていて納得しました。
ヨハネがいつかの自分自身に重なったなら嬉しいです。

大事にしたかった絶望

Lumièreにはいくつか絶対的な絶望を含んだシーンがあり、それをのらりくらりと躱すことによって暖かな世界観ができています。その中で冷たくあって欲しいシーンが二つだけありました。

ひとつめは答案用紙を盗んだ犯人を巡ってトマスが言った「お前にヨハネの苦しみがわかるのかよ」というセリフ。
トマスとヨハネは、分かり合えません。トマスとヨハネは全くもって違う個体だからです。いいえ、私たちは親友、恋人、例え家族であっても、心情を心の奥底からわかりあうことは難しい。トマスの中には夢の存在が深く根付いていて、夢のない世界を生きたことがない。反対にヨハネは夢なんて見つかっていない、夢のある世界を生きたことがない。トマスとヨハネ(そして忘れちゃいけないさんこいちペトロ)は一緒にたくさんのことを学んで、生活して、助け合ってきたけど、その背景を引き算したところで、違いは絶対的に存在します。
違うことへの絶望とそれでも分かり合える部分があるよね、が大事にしたかった。

ふたつめは最後の夜にヨハネが言った「また会えるよね」というセリフ。
「きっとさ」「ヨハネ、また会おう」気休めです。もう二度と会えないし、会えたとしても記憶にはありません。
鮭になったペトロをまた見るのは夕食の皿の上かもしれないし、カラスになったトマスに生ゴミを漁られてため息を吐くかもしれないけどね。
この意味では、私も死と同じ永遠の別れを感動材料に使ってしまったのかもしれません。訓練が足りない。

「無駄なことがしたいんです」

このセリフ、みんなで考えました。最高です。最後の最後まで森木の仮案が入っていました。ギリギリの稽古で良すぎる案を出してくれたみんな、書き写しながら覚えてくれたちゃまるに大きな大きな拍手を。ありがとう。見に来てくれた先輩友達みんなベタ褒めでした。

この世界で描きたかったこと

それでも、人生は続くんだ、だから明日も生きてみるか〜ってなってくれたならそれ以上嬉しいことはありません。まだ20年くらいしか生きてない若造が、恵まれた環境にいる人間が何を言っているんだっていう話ではある!のは百も承知ですが、私は演劇を通して人間を救うのが直近の夢なのでそういうお話を書きたかった。
この世界の登場人物たちには性別がありません。キャストたちの生物学上の性別は女性ですが、観客の皆さんの目にはどう映っていたんだろう。性別による偏見を外して劇を見て欲しかった。ヨハネを自分自身に重ねて欲しかった。きっと、階段を登り切った先には自分なりの光があるはず。それを信じたい。

つれづれ

賛否賛賛否否否くらいでしたが、自分の脚本に対する評価を変えず、アドバイスを溢れるくらいに吸い込んで、懲りずに書こうと思います。
こんな脚本を書いたのにも関わらず、公演前は公演なんて爆発すればいいんだ!明日なんて来るな!って思ってたけど、やっぱり公演って楽しい。木もれ陽をもう一回やったみたい。個人的にはこめちゃがロスになってたのが嬉しかった。今度は嬉しくて泣こうな。
関わってくれた全ての人に感謝しています。やっぱり青うさぎが大好き。


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